年間1億円以上で個別開示が義務付けられている上場企業の役員報酬。AnswersNewsが各社の有価証券報告書を調べたところ、製薬業界では47人が直近の事業年度に1億円以上の役員報酬を得ていました。最高額は、武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長CEOの18億7400万円。人数では大塚ホールディングスの6人が最多でした。
日本人トップは4.88億円
上場企業には、年間1億円以上の役員報酬を受けた役員の氏名と報酬額を有価証券報告書で開示することが義務付けられています。AnswersNewsでは今回、2020年4月~21年3月に本決算を迎えた製薬企業(OTCメーカー含む)とバイオベンチャー、医薬品卸などの関連産業を対象とし、1億円以上の役員報酬を得た役員を集計しました。
トップは今年も武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長CEOで、報酬額は前年度比1億9900万円減の18億7400万円。武田からの基本報酬は2億4600万円、賞与は2億4700万円で、業績連動型株式報酬(9億円)と譲渡制限付き株式報酬(3億7900万円)が報酬の大半を占めました。ウェバー氏にはこのほか、米国子会社の武田ファーマシューティカルズUSAから給与と賞与をあわせて1億200万円が支払われています。
ウェバー氏に続いて2位、3位となったのは、武田のアンドリュー・プランプ取締役リサーチ&ディベロップメントプレジデント(報酬総額9億1100万円、前年度比1億3500万円減)と、同じく武田のコンスタンティン・サルウコス取締役CFO(6億2600万円、3800万円減)。武田からは、岩崎真人代表取締役日本管掌も2億8900万円で8位に入っています。
武田の3人に続いて4位となったのは、アステラス製薬の安川健司社長CEOで、報酬総額は前年度から4900万円減の4億8800万円。5位は同社の畑中好彦会長(4億3600万円、4100万円減)でした。
開示人数は大塚HDが最多
今回の集計で1億円以上の役員報酬を受けたのは47人で、昨年の集計から1人増加。47人の報酬を合計すると109億円となり、昨年の46人計115億3100万円から6億3100万円減りました。
報酬1億円以上で個別開示の対象となった役員の人数が最も多かったのは、大塚ホールディングス(HD)の6人。昨年は3人だった同社ですが、今回は昨年3月に大塚製薬社長に就任した井上眞取締役や、大塚メディカルデバイス社長の東條紀子取締役らが開示対象に加わりました。
開示人数の2位はエーザイ(5人)、3位は武田(4人)。アステラス、大正製薬HD、ペプチドリーム、そーせいグループが3人で続き、中外製薬や大日本住友製薬など5社は2人が開示対象となりました。
東京商工リサーチの6月30日時点のまとめによると、21年3月期決算の上場企業で役員報酬を個別開示したのは、全業種を通じて251社540人。開示人数は前年を7人上回りました。報酬額のトップは、ソフトバンクグループのサイモン・シガース取締役の18億8200万円。武田のウェバー社長は2位で、3位はソフトバンクグループのマルセロ・クラウレ副社長COO(17億9500万円)でした。
開示人数では、15人の日立製作所がトップ。三菱UFJフィナンシャルグループが11人、三井物産と大和証券グループ本社が9人で続きました。
従業員との「格差」トップは174倍
役員と従業員の「年収格差」が最も大きかったのは、役員報酬額でトップとなった武田のウェバー社長。ウェバー氏の役員報酬18億7400万円を、有価証券報告書で公開されている従業員の平均年収1076万6000円で割ると、その差は174.1倍となりました。ウェバー氏の役員報酬が1億9900万円減少したことで、格差は昨年の190倍からは縮小しました。
報酬額2位のプランプ氏は84.6倍、同3位のサルウコス氏は58.1倍。アステラスの安川氏も46.4倍の差がありました。
従業員との格差が20倍を超えた役員は15人で、昨年の集計から3人減りました。