国内主要製薬会社12社の2020年度の海外売上高比率は、前年度から2ポイント上昇して62.1%となりました。武田薬品工業は80%を超え、アステラス製薬も8割に近づいています。自社創製のグローバル製品が伸びる協和キリンや中外製薬は、この1年で海外売上高が大きく拡大しました。
武田82.5%、アステラス77.7%
AnswersNewsが国内の主要製薬会社12社の業績を集計したところ、2020年度の海外売上高は12社の合計で前年度から2.6%増加しました。12社のうち8社が前年度から海外での売り上げを伸ばし、うち協和キリンと中外製薬の2社が2ケタ増収。売上高に占める海外の比率は、前年度から2ポイント上昇して62.1%に達しました。
海外売上高トップは、2兆6381億円を売り上げた武田薬品工業。為替変動の影響もあり売り上げは前年度から2.2%減少したものの、国内売上高の減少が大きく、海外売上高比率は前年度から0.5ポイント上昇して82.5%となりました。
武田に次いで海外売上高2位となったアステラス製薬は、前立腺がん治療薬「イクスタンジ」が好調で4.3%の増収。海外売上高比率は4.3ポイント上昇して77.7%となりました。21年度は海外売上高が1兆円を超え、海外売上高比率も80%を突破する見込みです。
中外11.5pt増、協和キリン8.6pt増
前年度から海外売上高を大きく伸ばしたのは、中外製薬(51.9%増)と協和キリン(26.8%増)。中外は、関節リウマチ治療薬「アクテムラ」が新型コロナウイルス感染症向けの需要増でスイス・ロシュ向けの輸出を増やしたほか、血友病A治療薬「ヘムライブラ」や視神経脊髄炎スペクトラム障害治療薬「エンスプリング」の輸出も拡大。海外売上高比率は前年度から11.5ポイント上昇しました。協和キリンは低リン血症治療薬「クリースビータ」が好調で、海外売上高比率は8.6ポイント増加しています。
利尿薬「サムスカ/ジンアーク」などの「グローバル4製品」が伸びた大塚ホールディングス(HD)は7.9%の増収。抗PD-1抗体のロイヤリティ収入が拡大した小野薬品工業、抗がん剤「エンハーツ」や抗凝固薬「リクシアナ」が好調な第一三共も7%台の増収となりました。
一方、前年度から海外売上高を減らしたのは、武田、エーザイ(8.1%減)、塩野義製薬(14.4%減)、田辺三菱製薬(1.6%減)。エーザイは、海外での製品販売は堅調だったものの、抗がん剤「レンビマ」に関する米メルクからの販売マイルストンなどが減少。塩野義もロイヤリティ収入の減少が響きました。
エンティビオ4000億円突破 イクスタンジは5000億円へ
各社の海外事業を支えるグローバル製品の販売は、2020年度もおおむね堅調に推移しました。
武田は、最大の主力製品である潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンティビオ」(日本製品名・エンタイビオ)が23.6%増の4293億円と好調。多発性骨髄腫治療薬「ニンラーロ」も2ケタ成長だったほか、遺伝性血管性浮腫治療薬「TAKHZYRO」(日本では承認申請中)や免疫グロブリン製剤も売り上げを大きく伸ばしました。
アステラス製薬はイクスタンジが14.6%増で4500億円を突破し、抗がん剤「ゾスパタ」も欧米での売り上げ拡大で67.2%増。イクスタンジは今年度5500億円を超える売り上げを予想しています。
大塚HDはグローバル4製品がそろって2ケタ成長。抗精神病薬「レキサルティ」は1000億円を突破しました。エーザイはレンビマが19.7%増の1339億円と好調を維持。第一三共は期待の抗体薬物複合体(ADC)「エンハーツ」が301億円(前年度比831.5%増)を売り上げたほか、抗凝固薬エドキサバン(日本製品名・リクシアナ)も7.7%増と堅調でした。大日本住友製薬は抗精神病薬「ラツーダ」が2ケタ成長で2000億円を超えています。
中外は、アクテムラ、ヘムライブラ、抗がん剤「アレセンサ」が好調。スイス・ロシュの決算によると、3製品の20年の世界売上高は、アクテムラが28億5800万スイスフラン(約3258億円、前年比32%増)、ヘムライブラが21億9000万スイスフラン(約2498億円、68%増)アレセンサが11億6000万スイスフラン(約1322億円、40%増)となりました。