2020年に日本と米国、欧州で承認された主な新薬などを領域別にまとめました。1回目は「がん」「精神・神経」「神経筋疾患」「循環器・腎・代謝」です。(2回目はこちら)
がん
がん領域では、新たなターゲットに対する分子標的薬が複数登場しました。
キナーゼ阻害薬では、類上皮肉腫/濾胞性リンパ腫治療薬のEZH2阻害薬「Tazverik」(米エピザイム)や、胆管がん治療薬のFGFR阻害薬「Pemazyre」(米インサイト)が米国で承認。Tazverikはエーザイが日本で、Pemazyreはインサイトが日本と欧州で申請を済ませていて、今年承認される見通しです。
非小細胞肺がんでは、MET遺伝子やRET遺伝子の変異に対する薬剤が治療に加わりました。MET阻害薬は、「テプミトコ」(独メルク)が日本で、「タブレクタ」(スイス・ノバルティス)が日本と米国で承認。RET阻害薬は、米国で「Retevmo」(米イーライリリー)と「Gavreto」(米ブループリント)が承認されました。RET阻害薬は甲状腺がんの治療にも使われます。
米国で承認されたトリプルネガティブ乳がん治療薬「Trodelvy」(米ギリアド・サイエンシズ)は、抗TROP2抗体薬物複合体(ADC)。同薬は米イミュノメディクスが開発したもので、ギリアドは昨年10月に同社を買収し、固形がんの領域に参入しました。米国と欧州で承認された英グラクソ・スミスクラインの抗BCMA ADC「Blenrep」は、再発・難治性の多発性骨髄腫に対する世界初の抗BCMA療法です。
第一三共の抗HER2 ADC「エンハーツ」は、HER2陽性乳がんとHER2陽性胃がんの治療薬として日米で承認を取得。HER2陽性乳がんでは、米シーゲン(旧シアトルジェネティクス)の経口HER2阻害薬「Tukysa」(米国で承認)や、スイス・ロシュの「パージェタ」「ハーセプチン」の皮下投与配合剤「Phesgo」(米国と欧州で承認)、米マクロジェニクスのFc最適化抗HER2抗体「Margenza」(米国で承認)も登場し、治療の細分化が進んでいます。
精神・神経
CGRPを標的とする片頭痛治療薬が、昨年新たに2つ承認されました。予防を適応とする抗CGRP抗体「Vyepti」(デンマーク・ルンドベック)と、急性期治療薬のCGRP受容体拮抗薬「Nurtec」(米バイオヘブン)で、いずれも米国で販売を開始。CGRPを標的とする片頭痛治療薬は18年から海外で販売されており、VyeptiとNurtecを含めると予防薬4剤と急性期治療薬2剤が販売中。日本でも今年1月に日本イーライリリーの抗CGRP抗体「エムガルディ」が承認を取得し、ほかにもCGRPを標的とする抗体医薬2剤が承認される見通しです。
精神・神経領域ではこのほか、大日本住友製薬の抗精神病薬「ラツーダ」が、米国での承認から10年遅れて日本で承認を取得。不眠症治療薬「デエビゴ」(エーザイ)や小児の不眠症治療薬「メラトベル」(ノーベルファーマ)なども日本で承認されました。
神経筋疾患
デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬「ビルテプソ」は、日本新薬と国立精神・神経医療研究センターが共同開発したアンチセンス核酸医薬。日本で生まれた初の核酸医薬で、日本と米国で承認されました。
ロシュの脊髄性筋萎縮症治療薬「Evrysdi」(米国で承認)は、スプライシングを修飾する低分子化合物で、脊髄性筋萎縮症に対する初の経口薬。日本と米国で承認を取得した視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)治療薬「エンスプリング」は、中外製薬が創製したpH依存的結合性ヒト化抗IL-6レセプターモノクローナル抗体です。
NMOSDでは、米ビエラ・バイオの抗CD19抗体「Uplizna」も米国で承認されました。日本では田辺三菱製薬が申請中です。
循環器・腎・代謝
ノバルティスの慢性心不全治療薬「エンレスト」は、アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬。昨年、米欧での承認から5年遅れで日本でも承認されました。同薬はノバルティス最大の成長ドライバーで、20年の世界売上高は2000億円を突破しそうです。
RNAi核酸医薬を手掛ける米アルナイラムは、原発性高シュウ酸尿症1型治療薬「Oxlumo」(米国と欧州で承認)と急性肝性ポルフィリン症治療薬「Givlaari」(欧州で承認)の承認を取得。Givlaariは米国でも19年に承認されており、日本では昨年、申請を行いました。
ノバルティスの高コレステロール血症治療薬「Leqvio」(欧州で承認)もアルナイラムが創製したRNAi核酸医薬。年2回の投与で済むのが特徴です。高コレステロール血症では、米エスペリオン創製のベムペド酸を含む非スタチン系薬剤「Nexletol/Nilemdo」と、ベムペド酸とエゼチミブの配合剤「Nexlizet/Nustendi」も米国と欧州で承認。欧州では第一三共が販売しています。
デンマーク・ノボ ノルディスクの長時間作用型ヒト成長ホルモン「Sogroya/ソグルーヤ」は昨年、米国で承認を取得し、日本でも今年1月に承認を取得。従来は週6~7回の投与が必要でしたが、週1回の投与で治療できるようになりました。同社の経口GLP-1受容体作動薬「リベルサス」も、19年の米国に続いて日本と欧州で承認されました。
(亀田真由)
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
・エーザイ
・中外製薬
・中外製薬
・武田薬品工業
・大塚ホールディングス(大塚製薬/大鵬薬品工業)
・大日本住友製薬
・田辺三菱製薬
・第一三共