早いもので2018年も残りわずか。いろいろあった今年の製薬業界を、2回に分けて振り返ります。
「発展途上」の免疫療法 開発は併用が主流に
薬価制度の抜本改革で閉塞感が漂った日本の製薬業界にとって明るい話題となったのが、本庶佑・京都大特別教授のノーベル医学生理学賞受賞。本庶氏は免疫チェックポイント分子「PD-1」を発見し、研究成果を実用化した小野薬品工業の「オプジーボ」に改めて注目が集まりました。
本庶氏が受賞決定後の記者会見で語ったように、がん免疫療法はいまだ発展途上。各社は治療効果をより高めようと、ほかの抗がん剤との併用療法の開発に心血を注いでいます。今年3月には、「キイトルーダ」を持つ米メルクが、抗がん剤「レンビマ」との併用療法の開発に向け、エーザイと最大57.6億ドル(6100億円)の大型提携を結びました。
国内では今年、悪性黒色腫と腎細胞がんを対象に、オプジーボと「ヤーボイ」(ブリストル・マイヤーズスクイブ)の併用療法が承認されました。
オプジーボ 薬価4分の1に
ノーベル賞で脚光を浴びたオプジーボは今年、4月と11月の2度にわたって大幅な薬価引き下げを受けました。11月の引き下げは、オプジーボを念頭に4月の薬価制度改革で新設された「適応拡大などで市場が拡大した医薬品の薬価を、年4回ある新薬の薬価収載にあわせて見直すルール」を初適用。結果、薬価は14年9月の発売時と比べて4分の1まで下がりました。
オプジーボは17年3月期に1039億円を売り上げましたが、18年3月期は901億円、19年3月期は900億円を予想。適応拡大で使用は広がるものの、薬価引き下げの影響で売上高は横ばいが続きます。
「ゾフルーザ」「ゾスパタ」など承認
今年は、日本の製薬各社がグローバルで大型化を期待する製品が数多く欧米で承認を取得しました。
注目度が高かった薬といえば、塩野義製薬の新規抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ」(バロキサビル)でしょう。2月、申請から4カ月という異例のスピードで承認されると、薬価収載も前倒しされ、3月には日本で販売を開始。10月には米国でも承認されました。1回の服用で済むこともあって、大きな話題となっています。
昨年、米国で世界で初めて承認された中外製薬の血友病A治療薬「ヘムライブラ」(エミシズマブ)は、今年、日本と欧州で承認。アイルランド・シャイアーが血友病薬を主力とすることから、武田薬品工業による巨額買収でも注目されました。中外は同薬について、ピーク時に世界で2000億円超の売り上げを想定。「アクテムラ」に続くブロックバスターとして期待をかけています。
協和発酵キリンは、ピーク時に1500億円の売り上げを見込む抗FGF23抗体「クリスヴィータ」(ブロスマブ)が、X染色体遺伝性低リン血症の適応で欧米で承認。海外展開を本格化させました。今年、アステラス製薬が日米で承認を取得した急性骨髄性白血病治療薬のFLT3阻害薬「ゾスパタ」(ギルテリチニブ)もブロックバスター候補です。
バイオシミラー 市場に活性化の兆し
一方、国内では今年、バイオシミラー市場にも大きな動きがありました。協和発酵キリンは8月、子会社を通じて腎性貧血治療薬「ネスプ」のオーソライズド・ジェネリック(AG)の承認を取得。来年7月にも発売される見通しで、薬価と販売動向が注目されます。
今年はこのほかにも、関節リウマチ治療薬「エンブレル」や抗がん剤「リツキサン」「ハーセプチン」といった大型製品にもバイオシミラーが参入。あゆみ製薬が販売(製造販売承認は持田製薬)するエンブレルのバイオシミラーは、処方が想定を超え、医療機関に新規の処方を控えるよう呼びかける事態に。第一三共やファイザーといった新薬大手の参入も含め、バイオシミラー市場の活性化を予感させる1年となりました。
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来年は、平成が終わり、新たな元号がスタートする年となります。日本発のグローバルファーマが誕生するなど、日本の製薬業界にとっても歴史に新たなページを刻む年になりそうです。
(おわり)
製薬業界 回顧2018[1]はこちら
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