国内製薬企業の2018年3月期決算が出そろいました。AnswersNewsが18年3月期を中心に東証1部上場の主要製薬企業42社(製薬が本業でない企業が手がける医薬品事業を含む)の直近の決算を集計したところ、売上高は全体で前期比3.8%増、営業利益は12.0%増となりました。
各社とも海外で主力の新薬が好調で、大手は軒並み前期から売り上げを伸ばしました。一方、国内医療用医薬品の売上高は、薬価改定がなかった年にもかかわらずマイナス成長に。市場環境の変化をあらためて印象付ける決算となりました。
INDEX
【売上高ランキング】エーザイなど2ケタ増収 後発品は沢井が首位に
売上高ランキングでは、1兆7705億円(前年比2.2%増)を売り上げた武田薬品工業がトップ。潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンティビオ」が好調で、同剤の売上高は2000億円を超えました。
2位のアステラス製薬は、前年比0.9%減の1兆3003億円と2年連続の減収。主力の抗がん剤「イクスタンジ」は3000億円規模まで売り上げが拡大したものの、17年4月に一部の長期収載品を売却したことなどが響きました。3位の大塚ホールディングスは抗精神病薬「レキサルティ」「エビリファイメンテナ」、利尿薬「サムスカ」などが伸びました。
2ケタの増収となったのは、エーザイ(5位)や大日本住友製薬(7位)、参天製薬(13位)など。エーザイはがん領域で提携した米メルクからの一時金収入が売上高を押し上げました。大日本住友製薬は北米で展開する抗精神病薬「ラツーダ」が好調を維持。参天製薬は眼科用VEGF阻害薬「アイリーア」が伸びたほか、海外事業も拡大しました。
前年から順位を上げたのは、小野薬品工業や沢井製薬、日本たばこ産業(JT)など。小野薬品は免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」のロイヤリティ収入が拡大し、前期15位から12位にランクアップ。後発品では沢井製薬が日医工を抜いて国内首位に躍り出ました。
営業利益は武田が4年ぶりトップ
営業利益では、55.1%増の2418億円を計上した武田薬品がアステラスを抜き、13年度以来4年ぶりにトップに返り咲きました。試薬大手・和光純薬工業の売却益を計上したほか、痛風治療薬「コルクリス」の販売見通し改善により減損損失の戻入が発生したことなどが要因で、営業利益率も前期9.0%から13.7%まで回復しました。
2位に後退したアステラスは、研究開発費の増加などにより18.2%の営業減益。オプジーボの薬価引き下げが響いた小野薬品や、第一三共、田辺三菱製薬も2ケタの減益となりました。
【研究開発費ランキング】トップ武田は3250億円 第一三共、小野など売上高比20%超
研究開発費ランキングでも武田薬品が3254億円(前年比4.2%増)でトップ。上位は軒並み前年から研究開発費を増やしており、2位の第一三共は2360億円(10.1%増)で売上高に対する比率は24.6%に達しました。
前年から研究開発費が大きく増えたのは、エーザイ(19.1%増)や田辺三菱製薬(22.1%増)、小野薬品(19.7%増)、沢井製薬(100.8%増)、科研製薬(26.4%増)、ペプチドリーム(58.8%増)など。第一三共のほか、エーザイ(23.3%)、小野薬品(26.3%)、JT(31.1%)、生化学工業(27.9%)の5社は売上高に対する割合が20%を超えました。
【海外売上高ランキング】新薬好調で軒並み2ケタ増 ロイヤリティ伸びる塩野義・小野
海外売上高は、1兆1901億円でトップとなった武田薬品をはじめ、多くの企業が2ケタ増収を達成しました。
武田薬品は潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンティビオ」が2014億円(40.6%増)まで伸び、大日本住友は抗精神病薬「ラツーダ」が1剤で日本事業の売上高を上回る1786億円(31.4%増)を稼ぎ出しました。中外製薬は関節リウマチ治療薬「アクテムラ」や抗がん剤「アレセンサ」のスイス・ロシュ向けの輸出が好調です。
小野薬品は、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」の米ブリストル・マイヤーズスクイブからのロイヤリティ収入が398億円(49.1%増)に拡大。塩野義製薬も抗HIV薬のロイヤリティ収入が1000億円を超えました。
買収した米国企業が貢献した日医工は81.7%増。沢井製薬も米国企業の買収により333億円の海外売上高を計上しました。
売上高に対する比率で見ると、トップは67.6%のアステラス。次いで高かったのが武田薬品(67.2%)で、大日本住友(60.3%)、塩野義(51.8%)の4社が売上高の半分以上を海外で稼いでいました。国内市場が振るわない中、各社とも海外売上高比率は上昇しており、海外で稼ぐ傾向は強くなっています。
【国内医療用医薬品売上高ランキング】第一三共が首位守る 改定なしでも減収の企業多く
国内医療用医薬品の売上高では、5400億円(6.6%増)の第一三共が前年に続いてトップとなりました。2位は武田薬品で、初めて4000億円を超えた中外製薬が前年から1つ順位を上げて3位にランクイン。日本イーライリリーの2型糖尿病治療薬「トルリシティ」の共同販促で国内売上高が9年ぶりにプラスに転じた大日本住友製薬は、前年12位から10位に順位を上げました。
前年3位だったアステラス製薬は、ARB「ミカルディス」の特許切れや長期収載品の売却が響き、15.3%の減収で順位も5位に後退。高脂血症治療薬「クレストール」に後発品が参入した塩野義製薬も11.9%の減収でした。
18年度は4.7%減収の見通し
国内医療用医薬品売上高上位15社のうち、増収となったのは7社で、半数を超える8社は減収。全体の売上高は前年から1.0%減少し、薬価改定のない年としては異例のマイナス成長となりました。薬価改定が直撃する18年度は予想を開示した11社で4.7%の減収を見込んでいます。
【次期売上高予想ランキング】アステラスは3位後退 塩野義、小野などがランクアップへ
2018年度は国内の薬価改定が影響するものの、海外事業は引き続き堅調に推移する見通し。武田薬品やアステラス、第一三共などが特許切れの影響もあり減収を予想する一方、大塚HDやエーザイ、中外製薬は増収を見込んでいます。
17年度からの順位変動を見てみると、アステラス製薬が3位に後退し、大塚HDが2位に浮上する見通し。塩野義と小野薬品、沢井、日医工もそれぞれ順位を1つずつ上げる見通しです。
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
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