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慢性疼痛、伸びる市場…今後10年で60%成長 使用広がるオピオイド、抗うつ薬も使用可能に

更新日

20歳以上の日本人の4.4人に1人が抱えていると言われる「慢性的な痛み」。治療薬の市場も拡大しており、民間会社・富士経済の予測によると、慢性疼痛治療薬の市場は2024年に現在の1.6倍に拡大するといいます。

 

市場拡大を牽引しているのは神経障害性疼痛治療薬「リリカ」で、オピオイドや抗うつ薬の使用も広がっています。今後も新製品の登場が見込まれており、慢性疼痛治療薬市場は一層、活気づいていきそうです。

 

 

市場は2024年に1877億円と予測

多くの人を悩ませる慢性疼痛。ムンディーファーマが2010年に行った「痛み」に関する大規模調査「Pain in Japan 2010」によると、20歳以上の日本人の22.5%、人数にして約2315万人が慢性疼痛を抱えていると推計されています。

 

痛みとひと口に言っても、原因や症状はさまざま。上の調査によれば、腰痛が55.7%で最も多く、四十肩・五十肩・肩こりが27.9%、頭痛・片頭痛が20.7%と続きました。

 

多くの患者がいるだけに、治療薬の市場も動きが活発です。民間調査会社の富士経済が16年11月に発表したレポートによると、16年の慢性疼痛治療薬市場は、前年比9.6%増の1273億円になる見込み。24年には15年比61.7%増の1877億円まで拡大すると予測されています。

 

市場拡大、牽引役は「リリカ」 オピオイドも売上増加

痛みの治療といえば「ロキソニン」「ボルタレン」「モーラス」などが定番ですが、慢性疼痛治療薬市場の拡大を支えているのは、こうした非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)ではありません。

 

市場を牽引しているのは、ファイザーの「リリカ」。神経の過剰な興奮を抑え、神経伝達物質の放出を抑制することにより、神経が障害されることで起こる痛みを緩和する医薬品です。2010年に帯状疱疹後神経痛を対象に発売され、現在は帯状疱疹後神経痛を含む「神経障害性疼痛」と「繊維筋痛症に伴う疼痛」の適応で承認されています。

 

「リリカ」は発売直後から急激に売り上げを伸ばしており、15年度の売上高は前年度比13.9%増の877億6300万円(薬価ベース、IMSジャパン調べ)に達しました。

 

オピオイドの使用も広がっています。オピオイドは従来、主にがん性疼痛の緩和に使われてきましたが、11年以降、がん性疼痛以外の慢性疼痛の適応を持った製品が相次いで登場し、処方を増やしています。

 

11年7月に非がん性慢性疼痛の適応で発売された持田製薬(製造販売元はヤンセンファーマ)の「トラムセット」(非麻薬性合成オピオイド・トラマドールと解熱鎮痛薬アセトアミノフェンの配合剤)は、16年度の売上高が101億円に達する見通し。日本新薬の「トラマール」(トラマドール)も、13年6月に慢性疼痛への適応拡大が承認されて以降、売り上げ拡大に加速がつき、16年度は前年度比60%増となる69億円(徐放製剤「ワントラム」を含む)の売り上げを予想しています。

 

慢性疼痛の適応を持つオピオイド鎮痛薬の売上高推移

 

鎮痛効果の強い「強オピオイド」に分類される「デュロテップMT」「ワンデュロ」(いずれもヤンセンファーマ)や「フェントステープ」(久光製薬)も、10年から14年にかけて慢性疼痛への適応拡大が承認。今年11月には、塩野義製薬が「オキシコンチン」の適応拡大を申請しました。

 

オピオイドは中枢神経に作用して痛みを緩和するもので、高い効果が期待できる一方、依存性もあり、米国では乱用が社会問題となっています。日本では、「デュロップMT」「ワンデュロ」「フェントス」を慢性疼痛に使用する場合、処方医は事前にトレーニングを受けた上で、処方時に「確認書」を必ず発行するなど、厳格な適正使用が行われています。塩野義製薬は、噛み砕けないように錠剤を硬くした乱用防止製剤を申請中です。

 

抗うつ薬の「サインバルタ」(塩野義製薬・日本イーライリリー)も、12年に「糖尿病性神経障害に伴う疼痛」、15年に「線維筋痛症に伴う疼痛」、16年に「慢性腰痛症に伴う疼痛」の適応拡大が承認されました。富士経済のレポートによると、適応拡大によって慢性疼痛治療薬としての処方が増える見通しで、今後の市場拡大を支えるとみられています。

 

ミロガバリンは18年発売予定 抗体医薬や抗うつ薬の適応拡大も

高齢化も背景に今後も患者数が増加すると予想される慢性疼痛は、新薬開発も活発です。

 

慢性疼痛2

 

国内で臨床第3相(P3)試験段階にあるのは、第一三共のミロガバリン。α2δリガンドという、「リリカ」と同じ作用機序を持つ経口薬です。日本では糖尿病性末梢神経障害性疼痛と帯状疱疹後神経痛を対象に開発が行われており、2018年の承認・発売を予定しています。

 

欧米では線維筋痛症の適応でP3試験を実施中。第一三共は米国で、オピオイドの副作用である便秘の治療薬「モバンティック」を販売しており、ミロガバリンを含む疼痛領域で20年度までに全世界で年間1000億円の売り上げを目指しています。

 

抗うつ薬では、「サインバルタ」が変形性関節症に伴う疼痛の適応拡大を申請中。Meiji Seika ファルマは「リフレックス」の線維筋痛症への適応拡大を目指してP2試験を行っています。

 

ファイザーは、この領域では初となる抗体医薬tanezumabのP2/3試験を実施中。P1試験には、疼痛領域に強い塩野義製薬の神経障害性疼痛治療薬などが控えています。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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