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【薬価改定の影響は? 4~6月期決算まとめ】国内医薬品市場、薬価引き下げでも成長のワケ―高額薬剤が牽引 成長実感乏しく

更新日

IMSジャパンが公表した今年4~6月の国内医薬品市場統計によると、4~6月の医療用医薬品市場は2兆6425億円(薬価ベース、前年同期比2.5%増)で、今年4月に薬価改定があったにもかかわらず市場は成長しました。

 

成長を支えているのは、いまや社会問題となっている高額薬剤。いずれもギリアド・サイエンシズのC型肝炎治療薬「ハーボニー」「ソバルディ」、小野薬品工業の免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」が牽引しました。

 

一方、国内の主要製薬企業の16年4~6月期決算に目を移すと、好調な小野薬品を除けば売上高はほぼ横ばい。通期ではマイナスを見込む企業が多く、市場成長の実感は乏しいのが実情です。

 

 

前回改定直後はマイナス成長だったが…

IMSジャパンの国内医薬品市場統計によると、今年4~6月の国内医療用医薬品市場は2兆6425億円(前年同期比2.5%増)。前回の薬価改定直後である14年4~6月は前年同期比2.5%減でしたが、今回はプラスに転じました。

 

牽引役となったのは、ギリアド・サイエンシズのC型肝炎治療薬「ハーボニー」「ソバルディ」と、小野薬品工業の免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」。いずれも昨年から今年にかけて高額な薬価が注目を集めた薬剤です。

 

売上高トップとなった「ハーボニー」は3ヶ月で697億9600万円を売り上げ、1~3月と合わせると今年上半期だけで売上高は2200億円を突破。「オプジーボ」は前年同期比1630.6%増の265億3000万円で3位、「ソバルディ」は245億6100万円(480.1%増)で5位でした。「ハーボニー」と「ソバルディ」は4月の薬価改定で特例拡大再算定受け、3割以上薬価が引き下げられましたが、好調を維持しました。

 

16年4~6月国内医療用医薬品売上上位10製品

 

中外製薬の抗がん剤「アバスチン」やファイザーの疼痛治療薬「リリカ」、第一三共のARB「オルメテック」など上位10製品の半数が売り上げを落とす中、高額薬剤の伸びは顕著。開業医市場(1.7%減)や薬局市場(2.3%減)が減少した一方、病院市場が9.3%拡大ことも、スペシャリティー領域の高額薬剤が市場成長を牽引していることを裏付けています。

 

国内企業、小野薬品を除けばゼロ成長

ごく一部の高額薬剤が大きな存在感を発揮しているだけに、多くの企業にとって足元の市場成長は実感に乏しいのが現状です。

 

3月期決算の国内製薬企業の中から、主な企業(17年3月期通期売上高予想が1000億円以上)の16年4~9月期の国内医療用医薬品の売上高を表にまとめました。12社のうち、前年同期比で減収となったのは5社と半数以下で、売上高は合計で2.8%増加。ただ、「オプジーボ」の拡大で売上高を200億円近く伸ばした小野薬品工業を除けば、0.1%にも満たない増加にとどまります。

 

主要製薬企業の16年4~6月期国内医療用医薬品売上高

 

アステラスや大日本住友など苦戦

トップの武田薬品工業は、新薬創出・適応外薬解消等促進加算を得たARB「アジルバ」や酸関連疾患治療薬「タケキャブ」などが伸びたものの、長期収載品をテバとの合弁会社に移管したことが響き、6.2%の減収。アステラス製薬は前立腺がん治療薬「イクスタンジ」が市場拡大再算定の対象となるなど薬価改定の影響が大きく、6.1%の減収となりました。

 

2型糖尿病治療薬「メトグルコ」に後発医薬品が参入した大日本住友製薬や、抗菌薬「ゾシン」に後発品が発売された大正製薬ホールディングスも苦戦しました。

 

第一三共、エーザイ、田辺三菱などは増収

逆に好調だったのは、PPI「ネキシウム」やアルツハイマー型認知症治療薬「メマリー」など新製品が伸びた第一三共。抗凝固薬「リクシアナ」は4月の薬価改定で効能変化再算定を受け、薬価が28%下がったものの、対前年比で160%増加しました。

 

関節リウマチ治療薬「ヒュミラ」や抗がん剤「ハラヴェン」「レンビマ」が伸びたエーザイや、関節リウマチ治療薬「シンポニー」が倍増した田辺三菱製薬も、薬価改定の影響をカバーして売り上げを伸ばしました。

 

通期予想はマイナスに

第1四半期の段階ではかろうじてプラスを確保しましたが、通期ではマイナスを見込む企業が多くなっています。3月期決算の主要12社から通期予想を開示していない武田薬品と小野薬品を除いた10社中、国内医療用医薬品の減収を予想しているのは7社。合計では前期比1.2%の売り上げ減となる見通しです。

 

主要製薬企業の17年3月期国内医療用医薬品売上高予想

 

薬価改定前に医療機関が在庫を絞った反動で第1四半期は数量が伸びる傾向にあり、薬価引き下げの影響は第2四半期以降、本格的に効いてきます。

 

第1四半期段階で増収だった田辺三菱製薬や塩野義製薬、キョーリン製薬ホールディングスは最終的には減収に転じる見通し。田辺三菱は主力の関節リウマチ治療薬「レミケード」の新薬創出加算の返還が、キョーリン製薬HDは最主力品の喘息・アレルギー性鼻炎治療薬「キプレス」への後発品参入が影響します。

 

第1四半期では8.0%の増収だった第一三共も、通期では「ネキシウム」が前年割れする見込みで、0.3%増とほぼ横ばい。エーザイは大幅増収を予想しますが、これはEAファーマ設立に伴い旧味の素製薬の製品を取り込んだのが大きな要因です。

 

今期、小野薬品の「オプジーボ」は前期から1000億円程度売り上げを上積みする見通しで、これを加味すると12社の合計は一転プラスになる見通し。ごく一部の大型製品が、市場全体の動向を大きく左右する――。国内医薬品市場の構造的な変化を象徴しています。

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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