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【国内製薬2Q決算まとめ】主要8社、売上収益12.9%増…武田と住友の回復で営業利益は80.1%増

更新日

穴迫励二

国内の主要製薬企業8社の2024年4~9月期決算が出そろいました。円安も追い風にグローバル製品が成長し、売上収益は前年同期比12.9%増加。営業利益は、武田薬品工業や住友ファーマの回復もあって80.1%増となりました。通期業績予想を上方修正する企業も多く、全体として堅調な推移が読み取れます。

 

 

増収6社、グローバル品拡大

8社の売上収益の合計は、前年同期から6000億円以上増えて5兆4551億円となりました。6社が増収を確保し、減収は2社。為替が円安に振れたこともあり、いずれも売上収益で武田薬品が1765億円、アステラス製薬は548億円、第一三共も396億円の押し上げ要因となりました。

 

【国内主要製薬8社 24年4~9月期の業績】%は前年同期比・前期比 〈社名/売上収益2Q実績/前年同期比/営業収益通期予想/前年同期比/営業利益2Q実績/営業利益前年同期比/営業利益通期予想/営業利益前期比〉武田薬品工業/2,384,028/13.4/4,480,000/5.1/350,576/194.0/265,000/23.8|アステラス製薬/935,621/22.0/1,800,000/12.2/93,710/69.9/80,000/213.5|第一三共/882,727/21.5/1,830,000/14.3/186,900/96.6/280,000/32.3|エーザイ/385,023/3.1/754,000/1.7/27,837/▲ 11.4/53,500/0.2|小野薬品工業/240,339/▲ 7.1/485,000/▲ 3.5/55,881/▲ 42.4/82,000/▲ 48.7|田辺三菱製薬/232,600/6.0/465,000/6.3/27,600/▲ 38.1/49,000/▲ 28.9|塩野義製薬/213,970/▲ 7.2/460,000/5.7/75,869/▲ 22.7/165,000/7.6|住友ファーマ/180,749/18.4/338,000/7.5/▲ 8,179/―/0/―|合計/5,455,057/12.9/10,612,000/7.2/810,194/80.1/709,500/123.3|※各社の決算発表資料をもとに作成

 

牽引役となるグローバル製品では、武田薬品の炎症性腸疾患治療薬「エンタイビオ」が4732億円(前年同期比20.8%増)に拡大。アステラス製薬の抗がん剤「イクスタンジ」は適応追加も手伝って4517億円(25.1%増)、第一三共の同「エンハーツ」は2613億円(50.7%増)といずれも大きく伸ばしています。

 

【グローバル製品の売上収益】〈薬剤名/23年度2Q/24年度2Q/24年度通期(予想)〉イクスタンジ/3609/4517/8597|エンタイビオ/3917/4732/8009|エンハーツ/1734/2613/5230|単位:億円。各社の決算発表資料をもとに作成

 

エーザイ「レケンビ」下方修正も市場拡大に自信

新製品では、アステラスの加齢黄斑変性治療薬「アイザーヴェイ」が新規患者の獲得が進み、発売直後は不調だった閉経に伴う血管運動神経症状治療薬「ベオーザ」も拡大期に入りました。同社は、これら3製品を含む重点戦略5製品の通期売上収益予想をすべて上方修正しています。住友ファーマは、北米で販売する「基幹3製品」のうち、前立腺がん治療薬「オルゴビクス」が355億円(83.0%増)を売り上げ、通期予想に対する進捗率は61.3%に達しました。

 

エーザイのアルツハイマー病治療薬「レケンビ」は159億円を売り上げました。ただ、米国では投与施設の不足で約6000人の待機患者が出ており、同国での通期予想を170億円減の265億円に引き下げ。逆に日本は20億円増の120億円に引き上げました。グローバルでは通期で425億円の販売を見込んでおり、内藤晴夫代表執行役CEOは「市場拡大の大きな可能性を認識している」と自信を示しました。

 

【レケンビの販売状況】〈地域/24年4~9月期実績/通期予想・11月修正公表/通期予想・期初〉米国/105/265/435|日本/42/120/100|中国ほか/15/40/30|合計/163/425/565|※エーザイの決算発表資料をもとに作成

 

国内は7.4%減、増収1社のみ

国内市場は依然として冴えない状況が続きます。売上収益は8社で7.4%減の1兆927億円でした。増収を確保したのは田辺三菱製薬のみで、ワクチン類が47.6%増の276億円に伸び、主力品の減収を補っています。

 

小野薬品工業は、抗がん剤「オプジーボ」が4月の薬価改定で15%の薬価引き下げを受けたことが影響。武田薬品は高血圧症治療薬「アジルバ」への後発医薬品参入が響きました。第一三共は、後発品事業を手掛けていた第一三共エスファが連結対象から外れたことで2.9%減となりましたが、これを除くと増収を確保。抗凝固薬「リクシアナ」が18.9%増の679億円と好調なこともあり、通期は期初から339億円上乗せして4688億円を見込みます。塩野義製薬は、新型コロナウイルス感染症治療薬「ゾコーバ」など主力の感染症薬が下期中心の売り上げとなります。

 

売上収益全体に占める国内の比率は、武田薬品が9.1%と1割を切りました。アステラスも14.5%まで低下し、第一三共は27.2%と3割を下回っています。8社の平均は前年同期の24.5%から20.3%に縮小しており、日本は世界の中の1地域という印象を強めています。

 

【主要製薬8社24年4~9月期国内売上収益】〈社名/2Q実績/前年同期比/通期予想/前期比〉武田薬品工業/216,355/▲ 5.3/―/―|第一三共/239,700/▲ 2.9/468,800/▲ 9.7|田辺三菱製薬/156,000/2.2/317,200/5.5|小野薬品工業/150,700/▲ 3.0/―/―|アステラス製薬/133,500/▲ 3.0/270,100/0.0|エーザイ/95,900/▲ 7.9/195,500/0.6|住友ファーマ/52,800/▲ 9.8/100,300/▲ 12.6|塩野義製薬/47,700/▲ 50.5/124,700/▲ 17.5|合計/1,092,655/▲ 7.4/1,476,600/▲ 4.7|各社の決算発表資料をもとに作成

 

営業利益 第一三共倍増、小野薬品は買収で減益

営業利益は8社合計で8102億円まで回復しました。前年同期に865億円の損失を計上した住友ファーマが赤字幅を82億円まで圧縮。同じく開発の不調で減損損失が発生していた武田薬品は3506億円を確保しました。第一三共は1869億円でほぼ倍増。円安で研究開発費や販売費・一般管理費が膨らんだものの、売上収益の伸びが上回りました。

 

42.4%の減益となった小野薬品は、米デシフェラ買収の関連費用が利益を押し上げましたが、それを除けば想定通りと言います。田辺三菱製薬の38.1%減益は、希望退職に伴う関連費用の計上が要因。エーザイはレケンビの販促費用などがかさんでいます。

 

通期予想 6社が売上収益上方修正

通期業績予想はエーザイと住友ファーマを除く6社が売上収益を上方修正しました。第一三共は前期比14.3%増の1兆8300億円を予想。アステラスを上回る見込みで、国内2位の座が入れ替わりそうです。予想を据え置いた住友ファーマは、上期の進捗は想定を上回ったものの、不確定要素があり期末に向かっての振れ幅が大きいと慎重な構え。エーザイはレケンビの米国売上収益を下方修正しましたが、ほかの製品で補うことで期初予想はクリアできるとみています。

 

営業利益は5社が上方修正しました。8社合計では前期から2.2倍の7095億円となります。減損損失に備えて一定額を「その他の費用」に織り込むアステラスと田辺三菱は、コアベースで期初の減益予想から増益に転じる予想。第一三共はコア、フルともに500億円上乗せしました。武田薬品は無形資産償却費や減損損失を除いたコア営業利益が1兆500億円に達する見込み。売上収益に対する比率は23.4%となりますが、目標とする「30%台前半から半ば」にはまだ届きません。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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