2023年度に年間1億円以上の役員報酬を受け取った製薬企業・バイオベンチャーの役員は20社47人で、前年度から4人増えたことがわかりました。最高額は武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長の20億8200万円。1億円以上の報酬を受けた役員の数では、大塚ホールディングス(HD)、第一三共、エーザイの3社が5人で最多でした。
トップ3は5年連続で武田の3人
OTCメーカーやバイオベンチャーを含む製薬企業の直近の本決算の有価証券報告書から、1億円以上の報酬を受けた役員を集計しました。
トップは今年も武田薬品工業のクリストフ・ウェバー代表取締役社長CEO(最高経営責任者)で、役員報酬の総額は前年度比3億5900万円増の20億8200万円。報酬の内訳は、武田薬品からの基本報酬が2億4100万円、賞与が2億5700万円、業績連動株式ユニット報酬が7億7800万円、譲渡制限付き株式ユニット報酬が4億2600万円。このほか、米子会社からも総額3億8100万円の報酬を受け取っています。
武田・ウェバー氏、業績に厳しい目
ウェバー氏の役員報酬は19年度(20億7300万円)以来、4年ぶりに20億円を超えました。一方で、同社の自己資本利益率(ROE)は低迷しており、米議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は今年の株主総会を前にウェバー氏の取締役再任と取締役賞与の承認について反対を推奨。株主総会ではいずれも賛成多数で可決されましたが、取締役再任に対する賛成率は76.22%と前年(95.69%)を大きく下回りました。
ウェバー氏に次いで高額の報酬を受けたのは、武田薬品のアンドリュー・プランプ取締役リサーチ&ディベロップメントプレジデント(11億5400万円、前年度比1億8100万円増)。3位は退任した同社のコンスタンティン・サルウコス前取締役CFO(最高財務責任者)で、8億1100万円(1億2000万円増)でした。武田薬品の3人が上位を占めるのは5年連続です。
武田薬品の3人に続く4位はアステラス製薬の岡村直樹代表取締役社長で、報酬の総額は4億6100万円(2億5700万円増)。5位は3億8600万円を受け取った第一三共の眞鍋淳代表取締役会長CEOでした。
今年、新たに開示の対象となったのは、アステラスの杉田勝好代表取締役副社長、第一三共の福岡隆取締役専務執行役員、エーザイの岡田安史代表執行役ら8人。昨年は大正製薬ホールディングス(HD)から2人が名を連ねていましたが、上場廃止によって有価証券報告書が開示されなくなったため、今年のランキングには入っていません。
開示人数は3社が5人でトップ
今年の集計で1億円以上の役員報酬を受け取っていたのは47人で、昨年から4人増えました。開示した企業は20社で、大正製薬HDが上場廃止となったため昨年から1社減少。47人の報酬は計127億3200万円となり、昨年を14億9200万円(13.3%)上回りました。
個別開示の対象となった役員の人数が最も多かったのは、大塚HD、第一三共、エーザイの5人。大塚HDは前年も5人でしたが、第一三共とエーザイはそれぞれ1人増えました。3社の次に多かったのは武田薬品の4人で、アステラス製薬、ネクセラファーマ、ペプチドリームの3社が3人で続きました。
東京商工リサーチの6月27日時点のまとめによると、24年3月期の有価証券報告書で1億円以上の役員報酬を開示したのは295社740人。開示人数は前年の722人を超えて過去最多を更新しました。最高額はソフトバンクグループのレネ・ハース取締役の34億5,800万円。2位はソニーグループの吉田憲一郎代表執行役会長(23億3,900万円)で、武田薬品のウェバー氏は3位でした。
企業別の開示人数では、日立製作所が34人でトップ。17人の三井住友フィナンシャルグループ、14人の伊藤忠商事、三菱UFJフィナンシャル・グループと続きました。
「ペイレシオ」武田192.5倍、アステラス41.5倍
役員と従業員の報酬の格差が最も大きかったのは武田薬品のウェバー氏。役員報酬20億8200万円を従業員の平均年収1081.3万円で割ると、格差は192.5倍となりました。ウェバー氏の報酬は増えた一方、従業員の平均年収は16万円ほど下がっており、差は昨年の157倍から広がりました。
主な企業の社長・CEOと従業員の報酬差(ペイレシオ)を見てみると、アステラスは41.5倍(昨年は42.6倍)、第一三共は34.7倍(35.9倍)、中外製薬は31.3倍(24,6倍)、塩野義製薬は28.2倍(32.1倍)となっています。
報酬1億円以上の役員47人のうち、従業員との報酬差が20倍以上となったのは23人で、昨年から3人増加しました。