2度目の中間年改定となる2023年度薬価改定が、3月3日に告示されました。4月1日に行われる改定の概要をビジュアルを交えて詳報します。
改定対象は1万3400品目
今回の改定は「乖離率が平均の0.625倍を超える品目」を対象に行われます。昨年の薬価調査の平均乖離率は7.0%だったので、その0.625倍にあたる乖離率4.375%超の1万3400品目(全収載品目1万9400品目の69%)が対象になります。今回の改定による薬剤費の削減額は3100億円です。
今回の改定では、物価高騰や安定供給問題への臨時・特例的な対応として、不採算に陥った医薬品の薬価を引き上げる「不採算品再算定」を実施。不採算品再算定は前回の中間年改定(21年度)では行われませんでしたが、今回は1100品目の不採算品すべてで薬価を引き上げます。さらに、近年問題となっている「ドラッグ・ラグ」への対応として、新薬創出・適応外薬解消等促進加算を臨時・特例的に増額。ルール通りに加算を適用すると薬価が下がる品目について、現行薬価との差額の95%を補填します。
厚生労働省によると、今回の改定では全収載品目の48%(9300品目)で薬価が引き下げられます。46%(9000品目)は薬価を維持し、6%(1100品目)は不採算品再算定の適用によって引き上げとなります。
不採算品再算定 アセトアミノフェンなど対象に
今回の改定では、通常の薬価改定ルールのうち、▽基礎的医薬品▽最低薬価▽新薬創出加算▽後発医薬品の価格帯集約▽不採算品再算定▽収載後の外国平均価格調整――の各ルールが適用されます。収載後の外国平均価格調整は中間年改定では今回初めて行われましたが、対象となる品目はありませんでした。
医療現場で長期間にわたって広く使われている医薬品の安定供給を確保するために薬価を維持する基礎的医薬品は、計323成分1094品目が対象。このうち、医療上必要不可欠で安定的な確保が求められる医薬品として厚生労働省がリスト化している「安定確保医薬品」では、10成分60品目が基礎的医薬品として薬価維持の対象になりました。
特例措置として行われる不採算品再算定は328成分1100品目が対象。主な品目は、解熱消炎鎮痛剤アセトアミノフェン、外皮用殺菌消毒薬イソプロパノール、漢方薬の葛根湯エキス、生理食塩液、抗菌薬セファゾリンナトリウムなどで、例えばアセトアミノフェン20%1gは7.10円から9.90円に、セファゾリン2g1瓶は356円から474円に引き上げられます。
新薬創出加算の特例措置は143品目に適用
新薬創出加算の対象となったのは370成分600品目で、前回の22年度改定と比べて22成分29品目増加。加算を得たのは92社で、前回から2社増えました。特例措置として行われる加算の増額は、改定対象となった新薬創出加算品233品目のうち143品目が対象となります。
今回の改定では、昨年後発医薬品が発売された高尿酸血症治療薬「フェブリク」(帝人ファーマ)や利用薬「サムスカ」(大塚製薬)、骨髄異形成症候群治療薬「ビダーザ」(日本新薬)、抗がん剤「スプリセル」(ブリストル・マイヤーズスクイブ)などが新薬創出加算の対象から外れました(一部剤形が加算を取得した品目もある)。累積加算額の控除は中間年改定では行わず、次の通常改定となる24年度に行われます。
新薬創出加算の対象となった医薬品の数を企業ごとに見てみると、成分数が最も多かったのは25成分のノバルティスファーマ。サノフィとヤンセンファーマ、武田薬品工業が19成分、ファイザーが15成分で続きました。外資系企業で加算品が多い傾向は変わらず、上位10社のうち内資は武田薬品と第一三共、ノーベルファーマの3社にとどまりました。