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オプジーボがキイトルーダを引き離す、DOAC市場はリクシアナがけん引―2022年医薬品売り上げトップ10

更新日

穴迫励二

2022年の国内医療用医薬品売上高トップ10(薬価ベース)が、調査会社のエンサイス(東京都渋谷区)が毎月公表している「月間スナップショット」のデータから明らかになりました。年間トップとなった免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」(小野薬品工業)は1523億円を売り上げ、同「キイトルーダ」(MSD)を大きく引き離しました。順位の変動はあったものの、トップ10の顔ぶれは前年と変わらず、年間売上高が1000億円を超えたのは5品目でした。

 

 

オプジーボ 胃がんや食道がんで拡大

エンサイスの月間スナップショットでは、月ごとの売り上げ上位20品目とその金額が公表されています。今回の集計で用いたデータは、1~11月分が確定値で、12月は速報値です。データには新型コロナウイルス感染症に関連する薬剤や再生医療等製品は含まれません。トップ20に入る品目は月によって入れ替わりがあるため、年間を通じて上位にランクインした10品目に絞って集計しました。

 

22年の年間トップとなったオプジーボは薬価ベースで1523億円を売り上げ、2位のキイトルーダ(1282億円)に241億円の差をつけました。21年の売り上げはオプジーボが1206億円、キイトルーダが1207億円とほぼ同額で、オプジーボがこの1年でリードを大きく広げたことになります。

 

オプジーボ26%増、キイトルーダ6%増

小野薬品工業はオプジーボの売り上げ拡大について、胃がん1次治療や食道がん術後補助療法への適応拡大(いずれも21年11月承認)が貢献したと説明しており、これらが前年比26.3%増という大きな成長につながっています。オプジーボは22年に、尿路上皮がん術後補助療法(3月承認)、食道がんに対する免疫チェックポイント阻害薬「ヤーボイ」との併用療法/食道がんに対する化学療法との併用療法(いずれも1次治療、5月承認)の適応を取得しました。

 

一方のキイトルーダは、21年末から22年にかけて、子宮体がんに対する抗がん剤「レンビマ」との併用療法(21年12月承認)や腎細胞がんに対するレンビマとの併用療法(22年2月承認)、子宮頸がん(同年9月承認)、再発高リスクのトリプルネガティブ乳がんに対する術前・術後補助療法(同)などの適応拡大が承認されました。同薬の単月の売上高は22年3月に100億円台に乗り、その後も拡大傾向にありますが、オプジーボとの差は埋まらず、年間の売上高も前年比6.2%増にとどまっています。

 

【オプジーボとキイトルーダ月ごとの売り上げ推移(2022年)】(月/オルシーボ売上(億円)/キイトルーダ売上(億円))1月/102/93|2月/108/95|3月/124/102|4月/129/109|5月/113/100|6月/131/111|7月/129/100|8月/140/117|9月/135/108|10月/134/111|11月/137/114|12月/141/122

 

オプジーボとキイトルーダは、市場拡大に伴う薬価の再算定を何度も受けており、売り上げを下押しする要因になっています。処方患者数の広がりによって今は一定の売り上げを維持していますが、薬価算定ルールが市場拡大のカギになることは間違いありません。

 

特例再算定のタケキャブは前年上回る

22年の年間売上高3位となった抗凝固薬「リクシアナ」(第一三共)は1165億円を売り上げ、前年の6位から順位を上げました。第一三共によると、4剤が競合する直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)市場での売り上げシェアは、22年4~9月期の時点で41.4%まで上昇。ほかの3剤はいずれもシェアを落としており、リクシアナが市場をけん引する形となっています。

 

4位の「タケキャブ」(武田薬品工業)と10位の「ネキシウム」(アストラゼネカ)は、胃潰瘍や逆流性食道炎などの酸関連疾患の領域で競合しています。

 

タケキャブは昨年4月の薬価改定で、特例拡大再算定によって15.8%の薬価引き下げを受けましたが、それでも売上高は前年をわずかに上回りました。一方、ネキシウムは昨年12月に後発医薬品が参入し、同月は月間の上位20製品から姿を消しました。年間売り上げ6位に入った高血圧症治療薬「アジルバ」(武田薬品工業)は今年の後発医薬品追補収載のターゲットで、6月収載なら今年のランキングに大きく影響しそうです。

 

アバスチン バイオシミラー参入3年もトップ10

前年から4つ順位を下げて9位となった抗がん剤「アバスチン」(中外製薬)は、前年比150億円減の856億円でした。同薬には19年12月発売のファイザーと第一三共を皮切りに4つのバイオシミラーが参入していますが、アバスチンは極端に大きく売り上げを落とすことなく上位にランクインし続けています。

 

【2022年 医療用医薬品売り上げ上位10製品】(※順位横の矢印は前年からの変動。売上金額は億円)(順位/製品名/売上金額/対象疾患・薬効/販売企業)1/↑/オプジーボ/1,523/がん/小野薬品工業|2/↓/キイトルーダ/1,282/がん/MSD|3/↑/リクシアナ/1,165/抗凝固薬/第一三共|4/↓/タケキャブ/1,118/酸関連疾患/武田薬品工業|5/↓/タグリッソ/1,094/がん/アストラゼネカ|6/↑/アジルバ/885/高血圧症/武田薬品工業|7/↑/アイリーア/873/加齢黄斑変性など/参天製薬|8/→/サムスカ/858/利尿薬/大塚製薬|9/↓/アバスチン/856/がん/中外製薬|10/↓/ネキシウム/844/消化性潰瘍/アストラゼネカ|※エンサイスのデータをもとに作成

 

バイオシミラーと競う製品には抗TNFα抗体「ヒュミラ」(アッヴィ/エーザイ)もありますが、こちらも毎月50~60億円の売り上げを安定的に確保。バイオシミラーは、インスリン製剤や抗がん剤リツキシマブなど浸透が進んでいる製品がある一方で、適応症の違いなどから先行品の牙城を崩せない領域もあり、普及の度合いはまちまちです。

 

フォシーガやデュピクセントに勢い

トップ10以下で主な製品を拾ってみると、「イグザレルト」(バイエル薬品)はDOACでリクシアナに次ぐ位置につけています。昨年、DOACとして初めて「下肢血行再建術施行後の末梢動脈疾患」の適応を取得し、同適応で使用する2.5mg錠を10月に発売しました。ただ、同薬には今年、後発品が参入する可能性があり、バイエルは関連会社を通じてオーソライズド・ジェネリックの承認を取得しています。

 

免疫チェックポイント阻害薬「テセントリク」(中外製薬)は着実に売り上げを伸ばしています。慢性心不全や慢性腎臓病に適応が広がったSGLT2阻害薬「フォシーガ」(アストラゼネカ/小野薬品)やアトピー性皮膚炎治療薬「デュピクセント」(サノフィ)にも勢いがあります。

 

スナップショットデータでは、月ごとの市場全体の売上高も明らかになっています。それを合算すると22年は10兆1823億円で、前年の10兆400億円から1.4%増加しました。薬価改定が毎年行われるようになり、政策に影響を受けた市場変動の要素は薄まっています。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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