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ニュース解説

今年の後発品収載、品目数過去最低に…参入10社超はフェブリクのみ、安定供給対応が新製品投入にも影

更新日

穴迫励二

12月9日、後発医薬品86品目が薬価基準に追補収載されました。6月分と合わせた今年の後発品収載は197品目で、データが残る中では過去最低。後発品の供給不足が長引く中、各社が安定供給を意識して慎重に対応したことが背景のひとつにありそうです。

 

 

17成分に初の後発品

2022年は、17成分(うち1成分は同成分の投与経路違い)で初めて後発品が収載されました。このうち、先発品の市場が最も大きかったのは消化性潰瘍治療薬「ネキシウム」(アストラゼネカ)で、IQVIAによると22年3月期の売上高は薬価ベースで913億円。21年12月期に決算ベースで730億円を売り上げた利尿薬「サムスカ」(大塚製薬)が続き、骨粗鬆症治療剤「テリボン」(旭化成ファーマ)や高尿酸血症・痛風治療剤「フェブリク」(帝人ファーマ)も22年3月期に決算ベースで300億円を超える売り上げがありました。

 

【2022年に初めて後発品が薬価収載された17成分】(★はオーソライズド・ジェネリックが発売 ) <収載月/成分名/先発品/製品名/社名/適応><6月>フェブキソスタット★/フェブリク/帝人ファーマ/高尿酸血症/ダサチニブ水和物/スプリセル/ブリストル/白血病/トルバプタン★/サムスカ/大塚製薬/利尿薬/オメガ-3脂肪酸エチル★/ロトリガ/武田薬品/高脂血症/トラマドール塩酸塩/トラマール/日本新薬/疼痛/レボカルニチン/エルカルチン(錠)/大塚製薬/カルニチン欠乏症/ドロスピレノン/エチニルエストラジオール/ヤーズ/バイエル薬品/月経困難症/ラメルテオン★/ロゼレム/武田薬品/不眠症/ベンダムスチン塩酸塩/トレアキシン/シンバイオ/リンパ腫/アザシチジン/ビダーザ/日本新薬/骨髄異形成症候群/レボカルニチン/エルカルチン (静注)/大塚製薬/カルニチン欠乏症/テリパラチド酢酸塩/テリボン/旭化成ファーマ/骨粗鬆症<12月>/エスシタロプラムシュウ酸塩/レクサプロ/持田製薬/うつ病 /エソメプラゾールマグネシウム水和物★ネキシウム/アストラゼネカ/消化性潰瘍 /イバンドロン酸ナトリウム/ボンビバ/中外製薬/骨粗鬆症/ダプトマイシン/キュビシン/MSD/抗生物質/ルリコナゾール/ルリコン/サンファーマ/抗真菌薬

 

初後発のAGは5成分

オーソライズド・ジェネリック(AG)は、初収載の17成分のうち▽ネキシウム▽フェブリク▽サムスカ▽不眠症治療薬「ロゼレム」(武田薬品工業)▽高脂血症治療薬「ロトリガ」(同)――5成分で確認できました。

 

ネキシウムはかつて先発品を販売していた第一三共の子会社・第一三共エスファではなく、ニプロが独占販売権を取得。エスファはAGを事業の主軸に置いており、今年はフェブリクのAGを発売しましたが、ネキシウムAGを獲得できなかったのは想定外だったかもしれません。残る3成分は先発品の製造販売元と関係のある企業が手掛けていて、サムスカAGは大塚製薬工場から、ロゼレムAGとロトリガAGは武田テバファーマから、それぞれ発売されました。

 

すでに後発品が発売されている市場に投入する、いわゆる“後追いAG”もありました。抗リウマチ薬「ケアラム」にあゆみ製薬、高脂血症治療薬「リピトール」にファイザーUPJ、抗菌剤「クラリス」と躁病・躁状態治療剤「リーマス」に大正製薬ホールディングス子会社トクホンのAGが収載。いったん奪われた長期収載品の市場をAGで取り返そうとしています。

 

厚労省 供給責任を厳格化

今年12月収載の86品目は、収載回数が年2回に増えたことで品目数が極端に少なかった07年11月を除くと、1回の収載としては初めて100品目を割り込みました。21年12月、22年6月も含め、過去3回の収載はそれまでと比べて品目数が大きく減少しています。

 

直近のピークは415品目が収載された20年6月で、この時は特許切れとなった大型品が多く、アルツハイマー型認知症治療薬「メマリー」、高脂血症治療薬「ゼチーア」、消炎・鎮痛剤「セレコックス」、抗アレルギー薬「ザイザル」などが標的になりました。

 

【後発医薬品の収穫品目数の推移】(年.月)/初収載 /その他/18.6/119/189/18.12/130/116/19.6/48/216/19.12/16/162/20.6/292/123/20.12/123/157/21.12/61/47/22.6/85/26/22.12/45/41

 

供給不足で1年間収載見送り

最近の品目数減少には、20年末から相次いだ後発品メーカーの不祥事と、それに起因する供給不足が関係しています。同年12月、小林化工が製造販売していた抗真菌薬イトラコナゾールに睡眠導入剤が混入していることが発覚し、21年に入るとGMP違反を起こした日医工が大規模な自主回収を実施。両社が業務停止命令を受けるなど、後発品業界全体として製品供給に大きな支障をきたしました。

 

こうした事態を受け厚生労働省は20年9月、直近2回の収載品で供給遅延や欠品を起こした企業に対し、同年12月の収載品でも供給不足となった場合は、自発的に次の追補収載を見送るという「念書」の提出を要求。さらに21年7月には、その運用を厳格化する通知を出し、収載見送りを2回(1年間)とするなどペナルティを重くしました。こうした経緯もあって、各社は自社の製造能力と新製品への需要を慎重に見極める必要に迫られています。

 

「承認申請しづらい」

厚労省が安定供給に対して強い姿勢を示したことは、後発品メーカーに参入を躊躇させる要因になっているようです。ネキシウムは本来なら20社以上が参入してもおかしくない大型品ですが、実際に承認を取得したのはAGを含めて8社のみ。安定供給ができなかった場合のリスクが影響しているとみられます。今年、参入企業が10社を上回ったのは6月収載のフェブリク1成分だけでした。

 

大手後発品企業がさまざまな理由から出荷を停止したり供給を絞ったりすると、ほかの後発品メーカーが市場での不足分を賄うため生産量を増やそうとします。これで需要に応えられれば問題はないのですが、製造キャパシティや原薬・原材料の確保といった問題があり、簡単に増産できるものではありません。

 

ダブルソース化など負担に

日本は後発品原薬の約半数を海外からの輸入に頼っていますが、原薬の製造は中国やインドなど一部の国に集中しており、急な要請があっても即座に確保するのが難しいという実情もあります。原薬を複数企業から調達するタブルソース化も求められていますが、コスト増となるため後発品メーカーにとっては負担です。在庫を積み増して非常時に備えることも、期限切れや廃棄の懸念があり経営を圧迫します。

 

安定供給には各社が責任を持たなければならず、供給責任を厳格化する厚労省の通知によって「生産体制にある程度の見通しが立たないと承認申請しづらい」(業界関係者)状況が生まれているようです。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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