2021年に国内で発売が見込まれる主な新薬を、領域別に2回に分けて紹介します。2回目は「精神・神経」「神経筋疾患」「骨・関節」「その他」です。(1回目はこちら)
【精神・神経】CGRP標的の抗体医薬が承認へ
精神・神経の領域では、片頭痛を対象とする3つの抗体医薬が承認される見込み。いずれも神経ペプチドのCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)をターゲットとする薬剤で、市場の形成が一気に進みそうです。
一番乗りを果たすのは、日本イーライリリーの抗CGRP抗体ガルカネズマブ(製品名・エムガルディ)。すでに厚生労働省の部会で承認が了承されており、1月承認・4月薬価収載が想定されます。販売は提携先の第一三共が行い、両社で情報提供活動を展開する予定。大塚製薬の同フレマネズマブと、アムジェンの抗CGRP抗体エレヌマブがこれに続きます。
精神・神経の領域では、バイオジェンが昨年12月、エーザイと共同開発したアルツハイマー病治療薬の抗アミロイドβ抗体アデュカヌマブを申請しました。承認の行方に注目が集まりますが、米国では昨年11月、FDA(食品医薬品局)の諮問委員会が承認に否定的な見解を示しており(FDAによる審査完了目標日は今年3月7日)、日本でも厳しい判断となるかもしれません。
【神経筋疾患】経口のスプライシング修飾薬が登場
神経筋疾患の領域で注目されるのは、中外製薬の脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬リスジプラム。SMN2遺伝子のスプライシング(遺伝子からタンパク質がつくられる過程で、mRNA前駆体から不要な塩基配列=イントロンを取り除き、必要な塩基配列=エクソンをつなぎ合わせる反応)を修飾することで、機能を持ったSMNタンパク質を産生させます。承認されれば初の経口SMA治療薬となり、新たな治療選択肢として期待されています。
一方、田辺三菱製薬が申請中なのは、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)に対する抗CD19抗体イネビリズマブ。NMOSDに対しては、2019年に抗補体(C5)抗体「ソリリス」(アレクシオンファーマ)が、20年には抗IL-6受容体抗体「エンスプリング」(中外製薬)が承認されており、イネビリズマブはこれらに続く治療薬となります。
【骨・関節】変形性関節症に抗NGF抗体
骨・関節の領域では、ファイザーの抗NGF抗体タネズマブが、変形性関節症治療薬として承認される見込み。NGF(神経成長因子)は痛みの発現に関与している物質で、タネズマブはこれを阻害することで鎮痛作用を発揮します。
変形性関節症では、生化学工業が、ヒアルロン酸に非ステロイド性抗炎症薬のジクロフェナクを共有結合させた関節腔内注射剤ジクロフェナクエタルヒアルロン酸ナトリウム(製品名・ジョイクル)を申請中。同薬は昨年12月の厚労省部会で承認の可否が審議されたものの、薬理作用や適応範囲などについて指摘があり、継続審議となっています。指摘事項に対する回答が準備され次第、次回以降の部会で再び審議される見通しです。
骨・関節領域ではこのほか、帝人ファーマの骨粗鬆症治療薬アバロパラチド酢酸塩も承認を取得する見通し。同薬は副甲状腺ホルモン関連ペプチド(hPTHrP)の誘導体で、骨形成を促進する薬剤です。
【その他】先駆け指定のムコ多糖症II型治療薬が承認へ
その他の領域では、先駆け審査指定制度の対象品目が2品目承認される見通しです。オーファンパシフィックの血漿カリクレイン阻害薬ベロトラルスタット塩酸塩(製品名・オラデオ)は、遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症を抑制する薬剤。厚労省部会で承認の了承を得ており、1月に承認される見込みです。
もう1つの先駆け指定品目は、JCRファーマのムコ多糖症II型治療薬パビナフスプ アルファ。独自の血液脳関門通過技術を適用した酵素製剤で、春ごろの承認が予想されます。ムコ多糖症II型に対しては、脳室内に直接注射するクリニジェンの酵素製剤イデュルスルファーゼ ベータ(製品名・ヒュンタラーゼ)も1月に承認される見込みです。
アルナイラムジャパンが申請中のギボシランは、遺伝性の希少疾患である急性肝性ポルフィリン症に対するRNAi核酸医薬。武田薬品工業は、短腸症候群治療薬のGLP-2アナログ製剤テデュグルチドを申請中です。
ファイザーが昨年12月に国内で初めて申請した新型コロナウイルスワクチンは、2月中にも承認の可否が判断される見込み。政府は同月下旬から接種を開始できるよう準備を進めています。
(前田雄樹)
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