1億円以上は個別開示が義務付けられている上場企業の役員報酬。AnswersNewsが各社の有価証券報告書を集計したところ、医薬品業界で直近の事業年度に1億円以上の役員報酬を得ていた役員は50人で、昨年の集計から4人増加したことがわかりました。最高額はクリストフ・ウェバー氏(武田薬品工業社長CEO)の20億7300万円。人数ではエーザイの6人が最多でした。
トップ3は武田薬品
上場企業には、年間1億円以上の役員報酬を受けた役員の氏名と報酬額を有価証券報告書で個別に開示することが義務付けられています。今回は、2019年4月~20年3月に本決算を迎えた医薬品業界の企業(OTCメーカーを含む製薬企業、バイオベンチャー、医薬品卸、CSOやCROなどの周辺産業の企業、薬局チェーン)のうち、1億円以上の役員報酬を得た役員を有価証券報告書で開示した企業を集計対象としました。
1位は武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長CEO(最高経営責任者)で、役員報酬の総額は20億7300万円(前年比3億1500万円増)でした。ウェバー氏のトップは4年連続。基本報酬は2億7300万円で、賞与(6億7500万円)と長期インセンティブ(11億2500万円)が報酬の大半を占めました。
ウェバー氏を含む上位3人はすべて武田薬品の役員で、2位には研究開発を統括するリサーチ&ディベロップメントプレジデントのアンドリュー・プランプ取締役(10億4600万円)、3位にはCFO(最高財務責任者)のコンスタンティン・サルウコス取締役(6億6400万円)がランクイン。プランプ氏は報酬のほとんどを米国子会社の武田ファーマシューティカルズ・インターナショナルから受け取っています。武田からはこのほか、国内事業の責任者であるジャパンファーマビジネスユニットプレジデントの岩崎真人取締役(2億9700万円)も8位に入りました。
武田は今年公表した有価証券報告書の中で、社外を含む取締役16人全員の報酬を個別に開示しました。1億円未満の役員まで報酬を開示するのは異例です。武田はさらに、重大な決算の修正や不正行為があった場合に役員報酬を会社に返還させる「クローバック制度」を20年度から導入。役員報酬が高額化する中、透明性を向上させ、経営責任を明確化する狙いです。
武田の3人に続いて4位となったのは、19年度から取締役の報酬制度を見直したアステラス製薬の安川健司社長CEOで、報酬総額は前年から2億4700万円アップの5億3700万円。5位は昨年12月末で退任したエーザイのサジ・プロシダ執行役(5億2300万円)で、5位までが5億円を超えました。同氏はプレジデント兼COO(最高執行責任者)を務めていた米子会社エーザイ・インクから退職関連給付として3億6900万円を受け取っています。
開示人数トップはエーザイ
今回の集計で1億円以上の役員報酬を受けたのは50人で、昨年の集計から4人増加。50人の報酬額は計122億5500万円で、昨年の111億7200万円から10億8300万円増えました。
1億円以上の報酬を受け取ったとして個別開示した役員の人数が最も多かったのは、エーザイの6人。次いで多かったのは武田の4人で、大塚ホールディングス(HD)とアステラス製薬、中外製薬、大正製薬HDが3人で続きました。
東京商工リサーチの7月10日時点のまとめによると、20年3月期決算の上場企業で役員報酬を個別開示したのは243社498人。最高額は住友不動産の高島準司元会長(22億5900万円)で、武田のウェバー社長は3位、プランプ取締役は7位に入りました。
開示人数では、三菱UFJフィナンシャルグループの10人が最多。ファナック、東京エレクトロン、三菱商事、三井物産の4社が8人、バンダイナムコHD、三井不動産、野村HDの3社が7人で続きました。
従業員との「報酬格差」最大190倍
役員と従業員の「報酬格差」が最も大きかったのは、役員報酬額でトップとなった武田のウェバー社長。ウェバー氏の役員報酬20億7300万円を従業員の平均年収1091万1000円で割ると、格差は190倍に及びました。武田の従業員の平均年収は前年比2万9000円減とほぼ横ばい。格差は前年の160.7倍からさらに広がりました。
ウェバー氏に続いて格差が大きかったのは、武田のプランプ取締役(95.9倍)とサルウコス取締役(60.9倍)。従業員との格差が20倍を超えたのは22人で、昨年の集計から6人増えました。
(前田雄樹)
【AnswersNews編集部が製薬企業をレポート】
・アステラス製薬
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・塩野義製薬
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
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