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【花粉症】抗アレルギー薬 市場は混戦…「ビラノア」「ルパフィン」一気に販売増へ 「デザレックス」拡大狙う矢先の自主回収

更新日

花粉症シーズンが目前に迫り、抗アレルギー薬市場が混戦の度合いを増しています。田辺三菱製薬の「ルパフィン」が長期処方解禁後初めてのシーズンで一気に販売拡大を狙う一方、杏林製薬の「デザレックス」は製造販売元の薬事手続きの不備で自主回収を余儀なくされました。久光製薬からは世界初の貼り薬も登場し、市場では今年も激しいシェア争いが繰り広げられています。

 

処方額 トップはザイザル、処方数ではタリオンが首位

日本気象協会の発表によると、今シーズンの花粉の飛散量は、全国的に例年に比べて「やや多い」と予想されています。東北から近畿にかけてと九州では例年の110~140%、中国では160%となる見込み。ただ、飛散量の多かった昨シーズンと比べると、東日本ではおおむね少なく、西日本でも昨シーズン並みだといいます。

 

2019シーズンの花粉飛散予測(日本気象協会、1月17日発表)の表。

 

花粉症の主な治療は、くしゃみや鼻水、鼻づまりを抑える薬物療法。なかでも中心となるのが、第2世代の経口抗ヒスタミン薬です。

 

厚生労働省が公表している「NDBオープンデータ」から、2016年度の第2世代抗ヒスタミン薬の処方動向(院外処方)を見てみると、金額ベースで最も処方されたのは、グラクソ・スミスクラインの「ザイザル錠5mg」(一般名・レボセチリジン、222.8億円)。次いで多かったのが田辺三菱製薬の「タリオン錠10mg」(ベポタスチン、132.9億円)で、サノフィの「アレグラ錠60mg」(フェキソフェナジン、116.6億円)、「タリオンOD錠10mg」(59.2億円)、協和発酵キリンの「アレロックOD錠5」(オロパタジン、57.8億円)と続きます。

 

一方、数量ベースで処方が最も多かったのは、タリオン錠10mg(2億8640万錠)。2位以下はザイザル錠5mg(2億3110万錠)、ザイザルシロップ0.05%(1億8510mL)、アレグラ錠60mg(1億7970万錠)、フェキソフェナジン塩酸塩錠60mg「SANIK」(日医工サノフィ、1億3800万錠)の順でした。

 

【2016年度 第2世代抗ヒスタミン薬 処方金額上位50】の表。品名<ザイザル錠5mg>処方金額:222.8億円、処方数量:231.14百万。品名<タリオン錠10mg>処方金額:132.9億円、処方数量:286.37百万。品名<アレグラ錠60mg>処方金額:116.6億円、処方数量:179.71百万。品名<タリオンOD錠10mg>処方金額:59.2億円、処方数量:127.5百万。品名<アレロックOD錠5>処方金額:57.8億円、処方数量:112.18百万。品名<アレロック錠5>処方金額:54.1億円、処方数量:105百万。品名<ディレグラ配合錠>処方金額:52.4億円、処方数量:84.05百万。品名<アレジオン錠20>処方金額:47.7億円、処方数量:39.67百万。品名<フェキソフェナジン塩酸塩錠60mg「SANIK」>処方金額:47.5億円、処方数量:138.03百万。品名<フェキソフェナジン塩酸塩錠60mg「EE」>処方金額:40.4億円、処方数量:137.39百万。品名<ザイザルシロップ0.05%>処方金額:33.1億円、処方数量:185.15百万。品名<アレロック顆粒0.5%>処方金額:29.9億円、処方数量:43.51百万。品名<クラリチン錠10mg>処方金額:26.3億円、処方数量:30.3百万。品名<クラリチンレディタブ錠10mg>処方金額:22.4億円、処方数量:25.86百万。品名<ジルテックドライシロップ1.25%>処方金額:22.3億円、処方数量:9.3百万。品名<ジルテック錠10 10mg>処方金額:20.7億円、処方数量:22.47百万。品名<フェキソフェナジン塩酸塩錠60mg「KN」>処方金額:17.1億円、処方数量:58.24百万。品名<アレグラドライシロップ5%>処方金額:12.5億円、処方数量:10.22百万。品名<エバステルOD錠10mg>処方金額:10.6億円、処方数量:11.53百万。品名<エピナスチン塩酸塩錠20mg「サワイ」>処方金額:10.4億円、処方数量:23.66百万。品名<アレジオンドライシロップ1%>処方金額:10.3億円、処方数量:12.76百万。品名<オロパタジン塩酸塩OD錠5mg「明治」>処方金額:10.1億円、処方数量:46.36百万。品名<エピナスチン塩酸塩錠20mg「日医工」>処方金額:10億円、処方数量:22.86百万。品名<エバステル錠10mg>処方金額:9.2億円、処方数量:10.01百万。品名<フェキソフェナジン塩酸塩錠60mg「トーワ」>処方金額:8.8億円、処方数量:30.08百万。品名<アレグラ錠30mg>処方金額:8.8億円、処方数量:17.18百万。品名<アレジオン錠10>処方金額:7.9億円、処方数量:8.68百万。品名<エピナスチン塩酸塩錠20mg「トーワ」>処方金額:7.1億円、処方数量:16.3百万。品名<ビラノア錠20mg>処方金額:7億円、処方数量:8.77百万。品名<エピナスチン塩酸塩錠20mg「ケミファ」>処方金額:5.8億円、処方数量:8.34百万。品名<アレロックOD錠2.5>処方金額:5.6億円、処方数量:13.78百万。品名<オロパタジン塩酸塩錠5mg「明治」>処方金額:5億円、処方数量:23.03百万。品名<オロパタジン塩酸塩錠5mg「日医工」>処方金額:5億円、処方数量:23百万。品名<デザレックス錠5mg>処方金額:5億円、処方数量:7.17百万。品名<フェキソフェナジン塩酸塩錠60mg「杏林」>処方金額:4.9億円、処方数量:16.8百万。品名<フェキソフェナジン塩酸塩錠60mg「サワイ」>処方金額:4.3億円、処方数量:14.66百万。品名<ザジテンドライシロップ0.1%>処方金額:4.2億円、処方数量:6.4百万。品名<オロパタジン塩酸塩錠5mg「サワイ」>処方金額:4.1億円、処方数量:18.69百万。品名<セチリジン塩酸塩錠10mg「サワイ」>処方金額:3.8億円、処方数量:7.35百万。品名<フェキソフェナジン塩酸塩錠60mg「明治」>処方金額:3.8億円、処方数量:10.97百万。品名<アゼプチン錠1mg>処方金額:3.5億円、処方数量:9.1百万。品名<セルテクト錠30>処方金額:3.5億円、処方数量:6.52百万。品名<オロパタジン塩酸塩OD錠5mg「日医工」>処方金額:3.5億円、処方数量:16.13百万。品名<オロパタジン塩酸塩OD錠5mg「テバ」>処方金額:3.5億円、処方数量:15.95百万。品名<オロパタジン塩酸塩錠5mg「トーワ」>処方金額:3.3億円、処方数量:15.25百万。品名<オロパタジン塩酸塩OD錠5mg「MEEK」>処方金額:3.2億円、処方数量:14.76百万。品名<オロパタジン塩酸塩顆粒0.5%「トーワ」>処方金額:3.1億円、処方数量:8.82百万。品名<フェキソフェナジン塩酸塩錠60mg「JG」>処方金額:2.9億円、処方数量:9.94百万。品名<オロパタジン塩酸塩錠5mg「杏林」>処方金額:2.9億円、処方数量:13.2百万。品名<エピナスチン塩酸塩錠20mg「ファイザー」>処方金額:2.8億円、処方数量:9.65百万。

 

新薬が相次ぎ登場

第2世代抗ヒスタミン薬では近年、新薬が相次いで登場しています。

 

16年11月には、杏林製薬が「デザレックス」(デスロラタジン、製造販売元はMSD)を、大鵬薬品工業とMeijiSeikaファルマが「ビラノア」(ビラスチン、製造販売元は大鵬薬品)を発売。17年11月には田辺三菱製薬が「ルパフィン」(ルパタジン、製造販売元は帝國製薬)を発売し、18年4月には抗ヒスタミン薬としては世界初の貼付剤となる「アレサガテープ」(エメダスチン)を久光製薬が発売しました。

 

デザレックスは、ロラタジン(製品名・クラリチン)の代謝活性物質。ロラタジンは肝臓で代謝されてデスロラタジンになり、効果を発揮しますが、デザレックスははじめから代謝活性物質なので、その分、効果が速やかに現れると期待されます。

 

ビラノアも効果発現の速さをウリにしており、ルパフィンは抗ヒスタミン作用と抗PAF作用を併せ持つのが特徴です。アレサガの有効成分エメダスチンは経口剤(先発医薬品は興和のレミカット)としてすでに販売。貼付剤にすることで血中濃度の推移が安定し、効果の持続などが期待できるといいます。

 

ビラノア先行 追うルパフィン、デザレックス 供給再開は未定

これら新薬の販売状況を見てみると、17年度はビラノアが大鵬薬品とMeijiの合計で52億円を販売。デザレックスは49億円で、ルパフィンも初年度に4億円を売り上げました。

 

2016年以降発売の第2世代抗ヒスタミン薬の売上高推移の棒グラフ。【2016年度】ビラノア(大鵬):22億円、デザレックス:10億円。【2017年度】ビラノア(大鵬):20億円、ビラノア(Meiji):32億円。デザレックス:49億円、ルパフィン:4億円。【2018年度】ビラノア(大鵬):75億円、ビラノア(Meiji):53億円、デザレックス:81億円、ルパフィン:68億円。

 

18年度はビラノアが合わせて128億円(前年度比146.2%増)に達する見通しで、長期処方解禁後初のシーズンとなるルパフィンは68億円(17倍)と一気に拡大を狙っています。

 

デザレックスは81億円(65.3%増)を見込んでいましたが、製造販売元のMSDが原薬保管施設の外国製造業者認定を取得しておらず、承認書にも記載されていないことが判明したため、杏林製薬が1月7日に使用期限内の全ロットの自主回収を開始。安全性・有効性に問題はなく、重篤な健康被害が生じる恐れはないといいますが、供給再開は未定です。処方が伸びるこの時期の販売休止は大きな痛手。逆に、ビラノアやルパフィンにとっては追い風となり、販売が上振れする可能性があります。

 

アレサガは18年度(19年2月期)の売上高予想を開示していませんが、4月の発売以降、第3四半期(18年9~11月)までに1.1億円を売り上げました。

 

第2世代抗ヒスタミン薬をめぐっては、昨年3月にニプロがタリオンのオーソライズド・ジェネリック(AG)を発売。日医工が販売するアレグラのAGも処方を伸ばしています。久光製薬の「アレグラFX」が18年度に35億円の売上高を見込むなど、スイッチOTCもまじえた競争は激しさを増しています。

 

主な第2世代抗ヒスタミン薬の一覧

主な第2世代の抗ヒスタミン薬(経口・貼付)の表。<アレサガテープ(エメダスチン)>社名:久光、発売年月日:18.4、用法・用量:1日1回・1回4mg、1日あたり薬価:67.5円。<ルパフィン(ルパタジン)>社名:田辺三菱/帝國、発売年月日:17.11、用法・用量:1日1回・1回10mg、1日あたり薬価:67.5円。<デザレックス(デスロラタジン)>社名:杏林/科研、発売年月日:16.11、用法・用量:1日1回・1回5mg、1日あたり薬価:65.5円。<ビラノア(ビラスチン)>社名:大鵬/MeijiSeika、発売年月日:16.11、用法・用量:1日1回・1回20mg、1日あたり薬価:75.6円。<ディレグラ(フェキソフェナジン/プソイドエフェドリン)>社名:サノフィ、発売年月日:13.2、用法・用量:1日2回・1回2錠、1日あたり薬価:238.8円。<ザイザル(レボセチリジン)>社名:GSK、発売年月日:10.12、用法・用量:1日1回・1回5mg、1日あたり薬価:87.8円。<クラリチン(ロラタジン)>社名:バイエル/塩野義、発売年月日:2.9、用法・用量:1日1回・1回10mg、1日あたり薬価:77.6円。<アレロック(オロパタジン)>社名:協和発酵キリン、発売年月日:1.3、用法・用量:1日2回・1回5mg、1日あたり薬価:91.2円。<アレグラ(フェキソフェナジン)>社名:サノフィ、発売年月日:0.11、用法・用量:1日2回・1回60mg、1日あたり薬価:114.8円。<タリオン(ベポタスチン)>社名:田辺三菱、発売年月日:0.1、用法・用量:1日2回・1回10mg、1日あたり薬価:82.8円。<ジルテック(セチリジン)>社名:GSK/第一三共、発売年月日:98.9、用法・用量:1日1回・1回10mg、1日あたり薬価:78円。<エバステル(エバスチン)>社名:大日本住友、発売年月日:96.6、用法・用量:1日1回・1回5~10mg、1日あたり薬価:63.2~83円。<アレジオン(エピナスチン)社名:日本BI、発売年月日:94.6、用法・用量:1日1回・1回10~20mg、1日あたり薬価:70.5~89.5円。

 

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