製薬会社の人員減少が止まりません。東証1部上場の主要製薬企業33社の2017年度の従業員数(単体)は、前年度に比べて1214人(1.8%)減ったことがAnswersNewsのまとめでわかりました。
減少が顕著なのは新薬メーカーで、前年度から1583人減少。武田薬品工業が1000人以上減らしたこともあり、過去5年で最大の減り幅となりました。
武田 単体で1177人減少 塩野義や大日本住友も3ケタ減
集計対象としたのは、2017年4月~18年4月に本決算を迎えた東証1部上場の主要製薬会社33社。各社の有価証券報告書をもとに、単体と連結それぞれで従業員数を集計しました。
17年度の単体ベースの従業員数は33社合わせて6万7605人で、前年度から1214人(1.8%)減少。連結ベース(単体のみの4社除く)では17万7632人で、1629人(0.9%)減りました。
単体ベースで見ると、前年度から従業員を減らしたのは33社中17社。減少が最も大きかったのは武田薬品工業で、1177人(17.7%)減りました。武田コンシューマーヘルスケアを設立してOTC(一般用医薬品)事業を分社化したほか、研究開発体制の見直しに伴って非重点領域をベンチャー企業として分社化したことなどにより大幅な減少となりました。
武田に次いで減少幅が大きかったのは塩野義製薬で、前年度から234人(6.0%)減少しました。同社は昨年4月、間接業務を担ってきた子会社「シオノギ総合サービス」を5社に分割したほか、教育研修を行う子会社を新設。今年10月には生産子会社を設立する予定で、本社組織のさらなるスリム化を図ります。
170人(4.8%)の減少となった大日本住友製薬は、16年度に生産部門を対象に早期退職を募集し、86人が退職。今年4月には子会社「DSPビジネスパートナーズ」を設立し、間接業務を本社から切り離しました。
子会社吸収の日医工は2割増
一方、単体ベースで従業員が増えたのは16社。最も増加が大きかったのは192人(20.6%)増の日医工で、生産子会社「日医工ファーマテック」を昨年10月に吸収合併したためです。137人(4.5%増)となった小野薬品工業は、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」の適応拡大でがん専門MRを増やしています。
連結ベースでは、武田が2670人(8.9%)の減少となった一方、大塚ホールディングス(HD)が1030人(3.2%)増加。沢井製薬は米アップシャー・スミス・ラボラトリーズを買収したことで750人(30.0%)の大幅増となりました。
新薬メーカー 5年で4686人減 後発品は1.7倍に
5年前の2012年度からの推移を見てみると、当時上場していなかったペプチドリームを除く32社(新薬28社、後発品4社)の単体ベースの従業員数は、12年度の6万9551人から5年間で1946人(2.8%)減りました。
新薬メーカーは12年度以降、毎年減少が続いており、過去5年間で4686人(7.1%)減少。新薬メーカーは17年度、単体で1583人(2.5%)減少しており、減り幅としては過去5年間で最大。一方、後発品メーカーは毎年増加しており、この5年間で2680人(67.6%)増えています。
後発品メーカー 連結ベースでは倍増 新薬は減少加速
連結ベース(単体のみの4社と12年度は単体のみだった富士製薬工業を除く28社)で見てみると、過去5年で従業員数は9596人(5.1%)減少。後発品メーカーは倍増した一方、新薬メーカーは1万5000人近く減少しました。
新薬メーカーの連結従業員数は、第一三共がインド・ランバクシーを手放して大きく減少した14年度以降、ほぼ横ばいが続いていましたが、17年度は2567人(1.5%)減と減り幅が大きくなりました。主力品の特許切れに伴う海外でのリストラや、非重点領域での子会社の整理が影響しています。
18年度に入ってからも、すでにアステラス製薬や大正製薬HDが早期退職の実施を発表。エーザイは19年4月に後発品子会社を日医工に売却します。外資系企業を中心にMRの削減も進んでおり、製薬業界では今後も人員縮小の流れが続きそうです。