4月に行われる2018年度薬価改定が告示され、焦点の1つだった新薬創出加算の対象品目が明らかになりました。
要件が大幅に見直された結果、対象品目は前回改定から102成分263品目減って314成分560品目に。新たに選ばれた薬もあれば、対象から外れた薬もあり、要件の見直しで明暗が分かれました。
対象品目 前回改定から3割減
2018年度の薬価制度改革で「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」が大きく見直されました。「革新的新薬を対象に選ぶ仕組みになっていない」との批判を受け、従来の「後発医薬品が発売されておらず、乖離率が全医薬品の平均以内」という要件を撤廃。かわりに
▽希少疾病用医薬品
▽開発公募品
▽加算適用品(薬価収載時に有用性加算などを取得した品目)
▽新規作用機序医薬品(革新性・有用性の基準に該当する品目)
▽新規作用機序医薬品の収載から「3年以内・3番手以内」の医薬品(1番手が加算適用品か革新性・有用性の基準に該当する品目)
という5つの要件のいずれかを満たした新薬を対象とする仕組みに変更されました。
3月5日に告示された18年度の薬価改定で新薬創出加算の対象となったのは314成分560品目と、16年度改定の416成分823品目から102成分263品目(品目ベースで32%)減少。加算の総額は810億円で、前回改定と比べて250億円減少しました。
今回の改定で新薬創出加算の適用を受けた品目がどの要件を満たしたかを見てみると、最も多かったのが「希少疾病用医薬品」(147成分229品目)で、次いで「加算適用品」(91成分184品目)、「新規作用機序医薬品」(51成分92品目)と続きました。「新規作用機序医薬品から3年以内・3番手以内」の要件を満たしたのは17成分38品目でした。
要件見直しで対象から外れた薬は
今回の改定では、要件の見直しに伴って多くの医薬品が新薬創出加算の対象から外れました。
市場競争の激しい経口抗凝固薬では、日本ベーリンガーインゲルハイムの「プラザキサ」と第一三共の「リクシアナ」が加算の対象となった一方、これまで加算の対象だったバイエル薬品の「イグザレルト」やブリストル・マイヤーズスクイブの「エリキュース」が加算を得られませんでした。
プラザキサとリクシアナは薬価算定時に加算(プラザキサは営業利益率の加算、リクシアナは有用性加算)がついた一方、イグザレルトとエリキュースには薬価算定時の加算はついていません。
「加算適用」で明暗
16年度改定では全7成分8品目が新薬創出加算の対象となったSGLT-2阻害薬では、アステラス製薬の「スーグラ」、アストラゼネカの「フォシーガ」、サノフィ/興和の「アプルウェイ/デベルザ」、大正富山医薬品の「ルセフィ」が「新規作用機序医薬品の収載から3年・3番手以内」の要件を満たして加算を受けた一方(2~4番手は同時収載)、田辺三菱製薬の「カナグル」が加算の対象外に。日本ベーリンガーインゲルハイムの「ジャディアンス」もこの要件は満たしていませんが、前回改定で「真の臨床的有用性の検証に係る加算」をとったことで新薬創出加算の対象となりました。
薬価算定時に有用性加算を取得したMSDの高脂血症治療薬「ゼチーア」や、キッセイ薬品工業の前立腺肥大症に伴う排尿改善薬「ユリーフ」も新たに新薬創出加算の適用を受けており、要件の1つである「加算適用品」かどうかが明暗を分ける大きな要素となったようです。
「3年・3番手以内」も主力品直撃
「3年・3番手以内」の要件も各社の主力品を直撃しました。今回の改定では、認知症治療薬の「メマリー」「レミニール」「イクセロン/リバスタッチ」や、過活動膀胱治療薬「ベシケア」「ウリトス」「ベタニス」「トビエース」などが新薬創出加算の対象から除外。関節リウマチ治療薬では「ヒュミラ」「シンポニー」「シムジア」が、喘息/COPD治療薬では配合剤の「フルティフォーム」「レルベア」などが外れました。
乖離率が大きくなりやすく、従来の要件では新薬創出加算の対象になることがほとんどなかったDPP-4阻害剤では、1番手の「ジャヌビア/グラクティブ」(MSD/小野薬品)と2番手の「エクア」(ノバルティスファーマ)が初めて新薬創出加算を取得。3番手の「ネシーナ」(武田薬品)も加算対象となりました。一方、前回改定で対象だった武田薬品工業の「ザファテック」は加算を得られませんでした。
企業区分 加算満額は23社 外資優勢は変わらず
今回の新薬創出加算の見直しでは、新薬開発やドラッグ・ラグ解消への取り組みを企業ごとに点数化し、それに応じて段階的に加算額を設定する「企業要件」が導入されました。
18年度改定では、加算を満額得られる「区分I」(点数で上位25%、加算係数1.0)は23社、「区分II」(区分I・III以外、加算係数0.9)が54社、「区分III」(最低点数、加算係数0.8)は6社となりました。ただ、厚生労働省はどの企業がどの区分になったのか明らかにしていません。
新薬創出加算を受けた成分数・品目数を企業別に見ると、最も成分数が多かったのは25成分45品目のノバルティス。2位はファイザー(23成分47成分)、3位はサノフィ(21成分26品目)で、上位を外資系企業が独占する構図は変わりませんでした。
前回改定と比べると、グラクソ・スミスクラインやアステラス製薬、大日本住友製薬、田辺三菱製薬などで加算対象成分数が半減。MSDやバイエル薬品も大きく減りました。今回の見直しは、企業経営に大きなインパクトを与えることになります。