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ニュース解説

【「2010年問題」からの回復は?】製薬会社「5年成長率」ランキング

大型医薬品の相次ぐ特許切れが製薬業界を揺るがした「2010年問題」。あれから5年以上が経過しましたが、製薬企業の業績は当時からどう変わったのでしょうか。

 

AnswersNewsでは、過去5年間の国内製薬企業の売上高、営業利益の成長率を独自に集計し、ランキングにまとめました。新製品の成長で業績を伸ばした企業、パテント・クリフの影響から抜け出せずにいる企業、使用促進策を追い風に急成長する後発品企業と、明暗の分かれるランキングとなっています。

 

併せて集計した営業利益率の増減ランキングからは、全体として収益性が低下する業界の状況も改めて浮き彫りとなりました。

 

 

【売上高成長率】後発品企業が上位独占 新薬トップは参天

集計対象としたのは、東証1部に上場し、医療用医薬品を中心に事業展開している製薬企業。各社の決算資料をもとに2015年度(16年3月期)と10年度(11年3月期)を比較し、過去5年間の売上高、営業利益の成長率と営業利益率の増減を算出(一部決算期の異なる企業あり)。5年前は上場していなかったペプチドリームを除く32社をランキングしました。

 

売上高成長率ランキング

 

売上高成長率でトップとなったのは、後発医薬品国内最大手の日医工。売上高は10年度の倍以上となる1435.1億円まで増え、成長率は123%に達しました。

 

2位には沢井製薬(成長率93.4%)、3位には東和薬品(77.9%)がランクインし、政府の強力な使用促進策を背景に業績を伸ばす後発品企業がトップ3を独占。富士製薬工業(60.8%)も5位に入っており、後発品企業の好調ぶりを強く印象付けるランキングとなりました。

 

新薬メーカーでトップとなったのは4位に入った参天製薬(76.2%)。眼科用VEGF阻害薬「アイリーア」の成長に加え、米メルクから眼科事業を買収したことで海外売上高も拡大しました。前立腺がん治療薬「イクスタンジ」が米国を中心に好調なアステラス製薬(43.9%)や、骨髄異形成症候群治療薬「ビダーザ」が伸びる日本新薬(32.6%)、がん領域の製品が堅調な中外製薬(31.4%)なども高い成長率となっています。

 

武田とアステラスは売上回復 抜け出せないエーザイ

2010年問題で特に影響を受けた大手では、ARB「ブロプレス」とPPI「タケプロン」、糖尿病治療薬「アクトス」が立て続けに特許切れを迎えた武田薬品工業が、買収や新製品の成長を背景に27.3%の成長。免疫抑制剤「プログラフ」や排尿障害改善薬「ハルナール」の特許切れに直面したアステラスも高い成長を記録しており、両社の売上高は特許切れ前のピークの水準を超えました。

 

一方、かつて売上高の6割を稼ぎ出していた認知症治療薬「アリセプト」とPPI「パリエット」の特許が相次いで切れたエーザイは、28.7%のマイナス成長。特許切れ後の業績低迷からなかなか抜け出せずにいます。

 

【営業利益成長率】4社が2倍超の成長 10社はマイナス

 

営業利益成長率ランキング

 

営業利益の成長率でトップとなったのは、日本たばこ産業(JT)傘下の鳥居薬品。そう痒改善薬「レミッチ」などが伸び、売上高の成長率も37.6%と高く、営業利益の成長率は166.8%。それでも営業利益率は7.9%と業界の平均を大きく下回る水準にとどまっています。

 

2位は新薬メーカーで売上高成長率トップだった参天製薬。3位には、自社創製の爪白癬治療薬「クレナフィン」が伸び、ロイヤリティー収入も増加した科研製薬がランクイン。営業利益では武田薬品を抜いて国内トップとなったアステラス製薬、導出品の大型化でロイヤリティー収入が拡大する塩野義製薬も上位につけました。

 

武田・エーザイ 利益半減

営業利益成長率がマイナスとなったのは、全体の3分の1にあたる10社。武田薬品は売上高こそ特許切れ前の水準を超えて伸びていますが、買収によるコスト増で利益は大きく減少。13年度からの5年間で1200億円に及ぶコスト削減策にも取り組んでいますが、営業利益は10年度の4割ほどにとどまります。売上高の減少が大きいエーザイも5年前の半分ほどの水準です。

 

【営業利益率】半数が利益率落とす 収益性の低下が浮き彫りに

 

営業利益率増減ランキング

 

高収益の代表格とされる製薬産業ですが、近年は収益性の低下が叫ばれています。実際のところどうなのでしょうか。

 

過去5年で営業利益率が上昇したのは15社で、半数の16社は低下しました(10年度に営業赤字を計上したわかもと製薬は算出不能)。わかもと製薬を除く31社全体でも15.9%から13.8%に2.1ポイント低下しており、業界全体として収益性は低下しています。

 

かつては高収益企業として知られた武田薬品工業の営業利益率は7.2%まで落ち込み、5年間で18.5ポイントも低下。新薬メーカーでは、小野薬品工業や大正製薬ホールディングス、エーザイなども利益率を落としました。研究開発費などのコスト増に加え、利益率の高い自社創製品の特許切れ、薬価引き下げによる長期収載品の採算性低下が新薬メーカーの利益を圧迫しています。

 

注目すべきは、売上高を大きく伸ばす後発品企業が軒並み利益率を落としていることでしょう。価格競争の激化や薬価の引き下げで「薄利多売」に拍車がかかる上、数量シェア80%を掲げる政府の使用目標に向けて生産体制の強化にも迫られており、多額の設備投資が利益の重しとなっています。

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