
2024年度に年間1億円以上の役員報酬を受け取った製薬企業・バイオベンチャーの役員は20社52人で、前年度から5人増えたことがAnswersNewsの集計で分かりました。最高額は武田薬品工業のクリストフ・ウェバー氏の21億6000万円。1億円以上の報酬を受けた役員の数では、大塚ホールディングス(HD)の8人が最多でした。
トップ2は武田薬品、3位にアステラスの岡村氏
OTCメーカーやバイオベンチャーを含む製薬企業の直近の本決算の有価証券報告書から、1億円以上の報酬を受けた役員を集計しました。
トップは今回も武田薬品工業のクリストフ・ウェバー代表取締役社長CEO(最高経営責任者)で、報酬の総額は前年度比7800万円増の21億6000万円。報酬の内訳は、武田薬品からの基本報酬が2億5500万円、賞与が3億900万円、業績連動株式ユニット報酬が5億7400万円、譲渡制限付き株式ユニット報酬が4億100万円。さらに、米国子会社からも総額6億2200万円の報酬を受け取りました。
ウェバー氏の役員報酬が20億円を超えたのは2年連続。同氏の取締役再任に対しては、今年も株主総会を前に米議決権行使助言会社が反対を推奨し、総会での賛成率は77.88%と急落した昨年(76.22%)に続いて8割を下回りました。武田薬品は今年1月、ウェバー氏が2026年6月に退任することを発表しており、後任には米国事業トップのジュリー・キム氏が就くことが決まっています。
ウェバー氏に次ぐ高額報酬は、武田薬品のアンドリュー・プランプ取締役リサーチ&ディベロップメントプレジデント(11億9500万円、前年度比4100万円増)。3位はアステラス製薬の岡村直樹代表取締役社長(6億6300万円、2億200万円増)でした。19年度以降、トップ3は5年連続で武田薬品の役員が占めていましたが、同社取締役CFO(最高財務責任者)を務めていたコンスタンティン・サルウコス氏が退任したことで岡村氏が3位に上がりました。
4位は中外製薬の奥田修代表取締役社長(4億2200万円、4700万円増)、5位はアステラスの安川健司代表取締役会長(4億1500万円、1億600万円増)でした。
新たに開示の対象となったのは、武田薬品の古田未来乃取締役CFO、小野薬品工業の滝野十一代表取締役社長COO(最高執行責任者)ら。東和薬品の吉田逸郎代表取締役社長は21年度以来3年ぶりに1億円を超え、科研製薬からは堀内裕之代表取締役社長が20年度の大沼哲夫氏(当時・代表取締役会長)以来4年ぶりにリストに名を連ねました。
開示人数最多は8人の大塚HD
今年の集計で1億円以上の役員報酬を受け取っていたのは52人で、昨年から5人増えました。開示した企業は20社で昨年と同数。52人の報酬は総額137億5400万円となり、昨年(47人)を10億2200万円上回りました。
個別開示の対象となった役員の数が最も多かったのは、8人の大塚HD。前年の5人から3人増えました。2位はエーザイとネクセラファーマの5人で、4人の武田薬品と第一三共が続きました。
東京商工リサーチが25年3月期の有価証券報告書を対象に行った集計(6月27日時点)によると、1億円以上の役員報酬を開示したのは343社859人。前年の336社818人を超え、社数・人数ともに過去最多を更新しました。
最高はソフトバンクグループ取締役のレネ・ハース氏で、報酬額は49億400万円。ダイキン工業の井上礼之会長が44億500万円、ソニーグループの吉田憲一郎会長が25億2400万円で続き、ウェバー氏は5位でした。
企業別の開示人数では、日立製作所が31人でトップ。2位は三菱UFJフィナンシャル・グループ(20人)、3位は伊藤忠商事(17人)でした。
社長と社員の報酬差 武田196倍、アステラス63倍
役員の報酬を従業員の平均年収と比較してみると、格差が最も大きかったのは武田薬品のウェバー氏。役員報酬21億6000万円を従業員の平均年収1103.8万円で割ると、報酬差は195.7倍となりました。従業員の平均年収は22.5万円増加したものの、差は前年度の192.5倍からさらに広がりました。
ほかの主な企業の社長・CEOと従業員の報酬差を見てみると、アステラスは63.4倍(前年度は41.5倍)、中外製薬は35.0倍(31.3倍)、塩野義製薬は26.9倍(28.2倍)、第一三共は22.7倍(34.7倍)、エーザイは20.4倍(20.0倍)などとなっています。
報酬1億円以上の役員52人のうち、従業員との報酬差が20倍を超えたのは23人で、昨年の集計と同数でした。