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今年も多かったリストラ…小野薬品など大型買収、社長交代も相次ぐ|製薬業界 回顧2024(1)

更新日

前田雄樹

今年もいろいろなことがあった製薬業界。2024年の主なできごとを2回に分けて振り返ります。

 

 

武田や住友など早期退職、揺れた化学系製薬

リストラの多い製薬業界では、今年も早期退職者の募集が相次ぎました。7月下旬から8月上旬にかけて、わずか10日ほどの間に5社が立て続けに早期退職者の募集を発表。リストラが常態化した製薬業界もこれにはざわつきました。

 

【2024年に早期退職者を募集した国内製薬企業】〈発表日/社名/対象/募集人数/退職日/応募人数/〉7月25日/トーアエイヨー/勤続3年以上/100人程度/11月末7月29日/田辺三菱製薬/45歳以上勤続5年以上/定めず/12月末7月31日/住友ファーマ/40歳以上勤続5年以上"/約700人/11月末8月1日/協和キリン/30歳以上勤続3年以上/定めず/12月末8月2日/武田薬品工業/勤続3年以上/定めず/25年2月末|※各社のプレスリリースをもとに作成

 

関連記事:住友ファーマ、田辺三菱、協和キリン、武田薬品…国内製薬 早期退職募集相次ぐ

 

24年3月期に3150億円の最終赤字を計上した住友ファーマは、経営立て直しに向けて約700人の枠で募集を行いました。応募したのは604人で、同社単体の人員は約2900人(24年3月末時点)から約2000人(同年12月1日時点)へと縮小。約770人いたMRは約450人まで減りました。

 

再成長の柱と位置付ける再生・細胞医薬事業は、来年2月に親会社である住友化学との合弁会社に移す予定。住友化学は今年10月の組織再編で、住友ファーマを重点事業から外しました。住友化学の岩田圭一社長はファーマについて「あらゆる選択肢を除外しない」としており、先行きは予断を許しません。

 

田辺三菱に売却報道

同じ化学系製薬企業の田辺三菱製薬も人数を定めず早期退職者を募集。親会社の三菱ケミカルグループは「化学回帰」の方針の下、事業ポートフォリオの見直しを進めており、田辺三菱については「ベストパートナーを探す」(筑本学社長)としています。田辺三菱をめぐっては、9月に売却に向けた動きが報じられ、年末には複数のファンドが買収に関心を示していることも伝えられました。

 

関連記事:住友ファーマと田辺三菱 揺れる化学系製薬2社、4~9月期決算は好調も先行きは依然不透明

 

武田薬品工業は、国内の事業体制の見直しにあわせて希望退職者を募集。同社は来年4月、がん領域を除く国内営業体制を見直し、これまでの疾患領域別から、ワクチンや既存製品を扱う「第一事業部」と新製品・成長製品を扱う「第二事業部」の2つに再編します。協和キリンは、低分子創薬研究の縮小に伴って研究部門を中心に早期退職者を募集しました。

 

1000億円超のM&A3件、小野は3700億円買収

国内製薬企業の業績はおおむね順調に推移しました。円安も追い風にグローバル製品が拡大し、3月期決算の主要8社の今年4~9月期売上収益は前年同期から12.9%増加。大塚ホールディングス(HD)は2月に発表した23年12月期決算で売上収益が初めて2兆円を突破しました。

 

関連記事:【国内製薬2Q決算まとめ】主要8社、売上収益12.9%増…武田と住友の回復で営業利益は80.1%増

関連記事:【国内製薬12月期決算まとめ】大塚HD、初の売り上げ2兆円…協和キリンと鳥居薬品も2桁増収

 

今年は、国内製薬企業による1000億円超のM&Aが3件ありました。小野薬品工業は、抗がん剤を手がける米国のバイオ医薬品企業デシフェラ・ファーマシューティカルズを総額24億ドル(約3700億円)で買収。がん領域のパイプラインを拡充するとともに、欧米での自社販売体制を強化します。

 

旭化成は腎疾患領域の事業基盤を獲得するため、スウェーデンのカリディタス・セラピューティクスを約1740億円で買収しました。カリディタスはIgA腎症治療薬「タルペーヨ」を米国で販売しており、旭化成は腎移植手術後に使われる免疫抑制剤などの既存事業とのシナジーを期待。大塚製薬は独自の創薬技術を持つ米ジュナナ・セラピューティクスを8億ドル(約1200億円)で買収。フェニルケトン尿症治療薬候補を獲得し、自己免疫疾患領域のパイプラインを拡大したほか、創薬基盤の強化を図ります。

 

【2024年に行われた国内製薬企業によるM&A】〈社名/買収先/買収額〉 小野薬品工業/デシフェラ・ファーマシューティカルズ/3700億円/ 旭化成/カリディタス・セラピューティクス/1740億円/ 大塚製薬/ジュナナ・セラピューティクス/1200億円|※各社のプレスリリースをもとに作成

 

肥満症薬登場、アルツハイマー病は2剤の競争がスタート

24年は57の新薬が薬価収載され、このうち17成分がピーク時に100億円超の売り上げを見込んでいます。最大は796億円を予想する日本イーライリリーのアルツハイマー病治療薬「ケサンラ」(一般名・ドナネマブ)。アムジェンの活動性甲状腺眼症治療薬「テッペーザ」(テプロツムマブ)は494億円の販売を予測しています。

 

関連記事:【2024年の新薬薬価収載まとめ】販売予測100億円超は17成分、3分の1は10億円未満…最高はケサンラの796億円

 

ケサンラは、エーザイの「レケンビ」(レカネマブ)に続く2剤目のアルツハイマー病治療薬で、11月に販売を開始。23年12月のレケンビ発売から1年がたち、市場競争が始まりました。

 

世界的に市場が拡大している肥満症治療薬では、ノボノルディスクファーマのGLP-1受容体作動薬「ウゴービ」(セマグルチド)が2月に発売。12月にはリリーのGIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド」(チルゼパチド)の承認が了承され、来年発売される見通しとなりました。

 

関連記事:アルツハイマー病薬「ケサンラ」きょう薬価収載…「レケンビ」と競合、2剤で市場掘り起こしへ

関連記事:肥満症治療薬、迫る「ゼップバウンド」参入…先行の「ウゴービ」立ち上がり遅く

 

大塚HD16年半ぶり、小野15年半ぶり社長交代

24年は、社長交代の発表も目立ちました。

 

大塚HDでは、来年1月1日付で樋口達夫社長兼CEO(最高経営責任者)が相談役に退き、後任にCOO(最高執行責任者)の井上眞氏が昇格する予定。樋口氏は08年7月の大塚HD発足から社長CEOを務めており、16年半ぶりのトップ交代となります。

 

小野薬品工業でも15年半ぶりに社長が交代。研究本部長の滝野十一氏が4月に社長COOに就き、08年9月から社長を務めてきた相良暁氏は会長CEOとなりました。協和キリンでは、来年3月に常務執行役員CIBO(Chief International Business Officer)のアブドゥル・マリック氏が社長COOに就任する予定。宮本昌志氏は会長に就き、引き続きCEOを務めます。両社とも海外展開を拡大する段階にあり、新体制でグローバル経営を強化します。

 

【2024年に発表された上場製薬企業の社長交代】氏名下のカッコは、前社長が退任後の役職、新社長が就任前の役職。氏名横は前・新とも社長就任の年月。★は社長退任後も代表〈社名/前社長就任年/前社長/新社長就任年/新社長〉大塚HD /08年7月/樋口達夫(相談役)/25年1月/井上眞(代表取締役COO)/小野薬品工業/08年9月/相良暁★(会長CEO)/24年4月/滝野十一(専務執行役員研究本部長)/協和キリン/18年3月/宮本昌志★(会長CEO)/25年3月/アブドゥル・マリック(常務執行役員CIBO) 住友ファーマ/18年4月/野村博(特別顧問)/24年6月/木村徹(代表取締役専務執行役員)/富士製薬工業/19年12月/岩井孝之★(会長)/24年10月/森田周平(常務執行役員経営企画部長)|※各社のプレスリリースをもとに作成

 

1988年4月から36年以上にわたってCEOの内藤晴夫氏が経営トップを務めるエーザイでは今年6月、晴夫氏の子息である内藤景介氏が代表執行役専務COOに就任しました。内藤CEOは「従来から当社では、CEOの交代はジェネレーションの交代ということで、数十歳若返らせるということが行われてきた。そのやり方に沿ったサクセッションプラン(後継者育成計画)を取締役会とも協議する中で準備してきた」と話しており、バトンタッチのタイミングが注目されます。

 

【2024年 製薬業界の主なできごと(4~6月)】1月/能登半島地震。参天製薬の工場など被災(1日)/GSKが国内初となるRSウイルスワクチン「アレックスビー」を発売(15日)。5月にはファイザーも「アブリスボ」を発売。モデルナも同月、mRNAベースのRSウイルスワクチンを申請/サワイグループHD、子会社を売却して米国事業から撤退すると発表(17日)。売却は4月に完了|2月/承認書と異なる方法で原薬を製造したなどとして、富山県がアクティブファーマに業務改善命令(9日)/ノボノルディスクが肥満症治療薬「ウゴービ」を発売(22日)/塩野義製薬、米アキリから導入したADHD治療用アプリを申請(26日)|2024年度薬価改定が告示。改定率は薬剤費ベースでマイナス4.67%(5日) シミックHDがMBOで上場廃止(28日)|4月/医師の働き方改革がスタート(1日) 小野薬品工業が15年半ぶりに社長交代。研究本部長を務めていた滝野十一氏が社長COOに就任(1日)/アクセリードと帝人、創薬研究支援の合弁会社「Axcelead Tokyo West Partners」を設立(1日)/大正製薬がOTCの内臓脂肪減少薬「アライ」を発売(8日) 大正製薬HD、MBOで上場廃止(9日)/アトピー性皮膚炎治療薬「イブグリース」など新薬10成分15品目が薬価収載。24年度薬価制度改革で新設された「迅速導入加算」が発作性夜間ヘモグロビン尿症治療薬「ボイデヤ」に始めて適用されたが、原価の開示度が低く加算係数はゼロに(17日)/小野薬品工業、抗がん剤を手がける米デシフェラ・ファーマシューティカルズを約24億ドルで買収すると発表(30日)。買収は6月に完了|5月/米ブラックストーンがアイロムグループを買収すると発表(13日)/住友ファーマ、24年3月期決算で3150億円の最終赤字(14日)/米アミリックス、ALS治療薬のP3試験失敗を受けて23年開始した日本事業を終了すると発表(17日)/胃がん治療薬「ビロイ」など新薬18製品22品目が薬価収載。自己免疫性肺胞蛋白症治療薬「サルグマリン吸入用」に6年ぶりとなる画期性加算がついたが、原価の開示度によって加算係数はゼロ(22日)/政府の「創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議」が中間取りまとめを公表(22日)/厚生労働省の「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」が報告書を取りまとめ。業界再編への国の支援などを提言(22日)/長生堂製薬、徳島市の川内工場で不適切製造が確認されたと発表(24日)/旭化成、スウェーデンの製薬企業カリディタス・セラピューティクスを約118億スウェーデンクローナで買収すると発表(28日)。買収は9月に完了|6月/エーザイ、内藤晴夫CEOの子息である内藤景介氏が代表執行役COOに就任(14日)/後発医薬品の薬価追補収載。初後発は筋弛緩回復薬「ブリディオン」のみ(14日)/住友ファーマ、経営立て直しへ社長交代。木村徹専務執行役員が社長に昇格(25日)/大阪・中之島に国際医療拠点「Nakanoshima Qross」が開業(29日)

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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