1. Answers>
  2. AnswersNews>
  3. ニュース解説>
  4. 【国内製薬12月期決算まとめ】大塚HD、初の売り上げ2兆円…協和キリンと鳥居薬品も2桁増収
ニュース解説

【国内製薬12月期決算まとめ】大塚HD、初の売り上げ2兆円…協和キリンと鳥居薬品も2桁増収

更新日

穴迫励二

2023年12月に決算期を迎えた国内製薬4社の業績が出揃いました。新型コロナウイルス感染症治療薬「ロナプリーブ」の政府購入が減少した中外製薬を除く3社が2桁増収を達成。大塚ホールディングス(HD)は初めて売上収益が2兆円を突破しました。

 

 

大塚HD、医療関連事業19.9%増収

大塚HDは全体の売上収益が2兆186億円(前期比16.1%)に達し、医療用医薬品を中心とする医療関連事業も前期比19.9%増の1兆3644億円と過去最高を更新。グローバル4製品と位置付ける▽持続性抗精神病薬「エビリファイメンテナ」▽抗精神病薬「レキサルティ」▽V2-受容体拮抗薬「サムスカ/ジンアーク」▽抗がん剤「ロンサーフ」――が業績を牽引しました。

 

一方、営業利益は、アルツハイマー型認知症に伴うアジテーション(行動障害)の治療薬として開発してきた「AVP-786」が臨床第3相試験で主要評価項目を達成できず、約1000億円の減損損失を計上。これが響いて7.1%の減益となりましたが、コア営業利益に相当する事業利益は前期比1.8倍の2781億円を確保しました。

 

同社は19~23年の第3次中期経営計画で、医療関連事業の売上収益を18年の8171億円から1兆800億円まで増やすことを目指していました。実際はそれを大きく上回り、5年間の年平均成長率は10.8%と2桁に乗せています。中でも、グローバル4製品は計画を1年前倒しで達成し、合計売上収益は18年の2.6倍となる7269億円に急拡大しました。同事業の海外売上高比率は70%まで上昇しており、24年12月期はさらに72%まで伸びると予想。額にすると1兆680億円と大台に乗り、横ばいの国内に対して存在感をさらに高めていきます。

 

【大塚HD 医療関連事業の売り上げ収益】〈年度/グローバル4製品/新製品/従来品〉18年実績 2781/0/5390|23年中計目標/4800/900/5100|23年実績/7269/717/5658|※大塚HDの決算説明会資料をもとに作成

 

今年から始まる28年までの第4次中計は6月に公表される予定。新中計では、現在のグローバル4製品に開発中の新薬や販売提携、導出品を含めた「グローバル10プラス2」を成長ドライバーと位置付けます。ただ、エビリファイメンテナ(23年12月期売上収益2025億円)やジンアーク(1835億円)は特許切れが控えており、業績に大きな影響を及ぼすことになりそうです。グローバル10プラス2に含まれるAVP-786もP3試験失敗で売り上げが見込めなくなりました。第3次中計の延長線上にどのような成長を描くのでしょうか。

 

協和キリン 業績好調も利益指標達成は先送り

21~25年の中計を走らせる協和キリンは、23年12月期の業績が売上収益4422億円(11.0%増)、コア営業利益968億円(11.6%増)と過去最高を更新しました。中計スタート後の過去3年間の売上収益の年平均成長率は、「10%以上」とする計画を上回る11.6%で推移しています。

 

一方、利益面は計画からやや遅れています。25年の利益指標は「研究開発費控除前コア営業利益率43~45%」「研究開発費率18~20%」「コア営業利益率25%以上」ですが、24年12月期は研究開発費が膨らんで売上収益に対して21%となり、コア営業利益率は18%にとどまる見込みです。

 

【協和キリン 中計の財務KPI】〈年度/ROE/売上収益CAGR/研究開発費控除前コア営業利益率/研究開発費率/コア営業利益率〉23年実績/10.2%/11.6%(21~23年)/38% 16%/22%|24年予想/7.6%/10.4%(21~24年)/39%/21%/18%|25年中計/10%以上/10%以上/43〜45%/18〜20%/25%以上|※協和キリンの決算説明会資料をもとに作成

 

そのため、2030年のビジョンに向けた戦略を再構築し、利益率などの財務KPIの達成時期は26年度以降に先送りしました。足元では最大の主力品であるくる病・骨軟化症治療薬「クリースビータ」が順調で、円安の恩恵も受けますが、今年1月に完了した英オーチャード・セラピューティクスの買収や、米アムジェンと共同開発しているアトピー性皮膚炎治療薬「KHK4038」の開発進展により、研究開発費が増加。期待の大きかったバルドキソロンメチルなど新薬の開発中止や、パーキンソン病治療薬「ノウリアスト」の欧州不承認、薬価をめぐる市場環境の悪化といったマイナス要因を考慮しました。

 

ただ、クリースビータと血液がん治療薬「ポテリジオ」は希少疾患領域でグローバルでの成長軌道に乗り、さらなる拡大戦略が描けるフェーズに入っています。パイプラインには年内に臨床入りが予定される血液がん領域の抗体薬物複合体(ADC)「KHK2845」やオーチャードの品目が加わりました。資金にはまだ余力があり、新たな戦略投資先を探っています。

 

鳥居薬品 業績回復鮮明

19年に抗HIV薬6品目をギリアド・サイエンシズに返還したことで業績が低迷した鳥居薬品は、回復基調が鮮明です。23年12月期は、花粉症などのアレルゲン領域やアトピー性皮膚炎治療薬が好調で、売上高は546億円(11.7%増)と2桁増収を確保しました。営業利益は、円安による原価率の上昇とライセンス契約一時金支払いによる研究開発費の増加で9.1%の減少。ただ、期初には26.0%の減少を見込んでおり、最終的に減益幅は縮小しました。

 

近年の業績や新薬開発の状況を踏まえ、30年までの中長期ビジョンで掲げた数値目標を修正。30年の売上高を従来の「過去最高(641億円)を更新する」から「800億円超」に引き上げました。ローリング方式で毎年更新している3年間の中計も、26年の売上高を630~660億円と高めに設定し直しています。

 

【鳥居薬品 売上高の推移】24年は予想、26年は中計ガイダンス〈年度/売上高〉17/641.35|18/625.51|19/429.98|20/417|21/469.87|22/488.96|23/546.38|24/586|25/0|26/650|※鳥居薬品の決算発表資料などをもとに作成

 

19年にギリアドが抗HIV薬を引き揚げて以降、業績は低迷し、大規模な早期退職も行いましたが、ここにきて政府が進める花粉症対策によって舌下免疫療法薬「シダキュア」の需要が増大。アトピー性皮膚炎治療薬のJAK阻害薬「コレクチム」も成長し、業績が安定してきました。

 

中外製薬の売上収益は11.8%減の1兆1114億円でした。ロナプリーブが1225億円減の812億円にとどまったことが最大の減収要因です。その他のビジネスは。海外売上高比率がほぼ5割(49.7%)に達するなど、全体として堅調に推移しました。

 

21~30年の成長戦略では「R&Dアウトプット倍増」「自社グローバル品毎年上市」を目標とし、業績に関する定量目標は設定していませんが、血友病A治療薬「ヘムライブラ」、抗がん剤「アレセンサ」、視神経脊髄炎スペクトラム障害治療薬「エンスプリング」といった自社開発品によって持続的な成長を見据えています。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

あわせて読みたい

メールでニュースを受け取る

  • 新着記事が届く
  • 業界ニュースがコンパクトにわかる

オススメの記事

人気記事

メールでニュースを受け取る

メールでニュースを受け取る

  • 新着記事が届く
  • 業界ニュースがコンパクトにわかる