2023年12月期(一部の日本企業は24年3月期、豪CSLは23年6月期)の世界売上高100億ドル超の製薬会社24社の業績を集計したところ、スイス・ロシュが3年ぶりに世界一を奪還しました。2位は米メルクで、昨年首位の米ファイザーは3位でした。
ロシュ、8.2%減収も首位奪還
2023年の売上高1位はスイス・ロシュ。672億7000万ドル(前年比8.2%減)を売り上げました。新型コロナウイルス感染症治療薬「ロナプリーブ」の需要減などが響いたものの、眼科用VEGF/Ang-2阻害薬「バビースモ」(26億ドル、324%増)や多発性硬化症治療薬「Ocrevus」(71億ドル、13%増)といった新製品が好調でした。
2位は601億1500万ドル(1.4%増)の米メルク。抗がん剤「キイトルーダ」が前年比19%増の250億ドルを売り上げ、新型コロナウイルス感染症治療薬「ラゲブリオ」の販売減をカバーしました。3位の米ファイザーは、新型コロナウイルスワクチン「コミナティ」が70%減、新型コロナ治療薬「パクスロビド」が93%減となり昨年首位から後退。売上高は584億9600万ドルで41.7%の減収となりました。コロナ関連製品を除くと売上高は前年から7%増加しています。
4位は米ジョンソン・エンド・ジョンソン(医療用医薬品事業)で、5位は米アッヴィ。J&Jは乾癬・クローン病・潰瘍性大腸炎治療薬「ステラーラ」などの主力品が売り上げを伸ばした一方、アッヴィは最主力品の抗TNFα抗体「ヒュミラ」がバイオシミラー参入の影響で大幅に減少。両社の順位は昨年から入れ替わりました。
ノボ、好業績で12位に浮上…武田は13位
6位の仏サノフィは466億200万ドルで前年からほぼ横ばい。抗IL-4/13受容体抗体「デュピクセント」は116億ドルを売り上げました。7位は458億1000万ドル(3.3%増)の英アストラゼネカ。SGLT2阻害薬「フォシーガ」や抗がん剤「イミフィンジ」などが好調です。両社はそれぞれ昨年から順位を2つ上げ、これに押し出される形で米ブリストル・マイヤーズスクイブとスイス・ノバルティスが2つ順位を落としました。
好業績が目立つのは、昨年から順位を4つ上げて12位となったデンマーク・ノボノルディスク。糖尿病治療薬「オゼンピック」(139億ドル、60%増)や同成分の肥満症治療薬「ウゴービ」(45億ドル、407%増)などGLP-1受容体作動薬が需要拡大を追い風に売り上げを大きく伸ばしました。19.6%の増収となった11位の米イーライリリーも、糖尿病治療薬「マンジャロ」(52億ドル)が急成長。免疫グロブリン製剤の売り上げが伸びた豪CSLも順位を3つ上げています。
日本企業では、298億5000万ドル(5.9%増)の武田薬品工業が13位でトップ。主力の潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンティビオ」などが好調ですが、リリーとノボに抜かれて順位は2つ下がりました。初めて売上収益2兆円を超えた大塚ホールディングス(HD)は20位。このほか、日本からはアステラス製薬(23位)と第一三共(24位)がランクインしました。
昨年18位だった米モデルナと19位だった独ビオンテックは、コロナワクチンの需要の落ち込みでランキング圏外に転落。23年の売上高は、モデルナが68億4800万ドル(64.4%減)、ビオンテックが41億3200万ドル(79.9%減)でした。
研究開発費、100億ドル超は6社
研究開発費トップは、305億3100万ドル(前年比125.4%増)の米メルク。米プロメテウス・バイオサイエンシズや米イマーゴ・バイオサイエンシズの買収、第一三共とのADC(抗体薬物複合体)に関する提携に計約170億ドルを費やしたことで大きく膨らみました。
2位は158億500万ドルのロシュ。全社では前年比6.7%減となりましたが、医薬品事業ではがん免疫領域を中心に投資を加速しており、6%増の128億ドルを投じました。3位のJ&J(医療用医薬品事業)は119億6300万ドル(2.9%増)で、4位のノバルティスは113億7100万ドル(13.8%増)。このほか、アストラゼネカとファイザーが100億ドル超を研究開発に投じました。
売上高に対する比率が25%を超えたのは、メルク(51%)、米イーライリリー(27%)、ノバルティス(25%)の3社。リリーは、後期開発パイプラインの進捗で前年から研究開発費が30%増えました。日本企業では、第一三共の23%が最大。「エンハーツ」などADCフランチャイズの臨床開発に資金を集中させています。
24年もロシュが首位キープか
2024年は、コロナ関連製品の落ち込みが一段落したこともあり、売上高のガイダンスを公表しているほとんどの企業が増収を見込んでいます。ロシュとメルクはともに1桁台半ばの増収となる見通しで、ファイザーは1桁台前半の増収を予想。24年もロシュが首位を維持するとみられます。
イーライリリーは24~28%、ノボノルディスクは為替影響を除いて19~27%の増収を予想。GLP-1受容体作動薬の好調を背景に両社ともに売上高が400億ドル台に乗るとみられ、トップ10の顔ぶれも変化するかもしれません。アストラゼネカやアムジェンも2桁増収の見込み。日本企業は9.3%増予想の第一三共を筆頭に、一桁台の増収となる見通しです。
新たに世界ランキング入りが予想されるのが米バーテックス・ファーマシューティカルズ。主力の嚢胞性繊維症治療薬の売り上げが拡大しており、24年は売上高105.5~107.5億ドル(23年は98億7000万ドル)を見込んでいます。
全24社の詳細なランキング
【チャートで見る】海外製薬大手2023年業績
海外大手20社の2023年業績を▽売り上げ・利益▽研究開発費▽主力製品売上高▽疾患領域・事業別売上高▽地域別売上高――の5つの切り口でチャートを使って解説しています。 (1)売上高・利益編 |
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
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