2022年に国内で発売が見込まれる主な新薬を、領域別に2回に分けて紹介します。2回目は「新型コロナ」「皮膚」「眼」「その他」です。(1回目はこちら)
INDEX
【新型コロナウイルス感染症】国内2剤目の経口抗ウイルス薬が登場へ
いまだ収束が見通せない新型コロナウイルス感染症には、新たなワクチンと治療薬が承認される見通し。ワクチンでは、ヤンセンファーマのウイルスベクターワクチンと、米ノババックスの組換えタンパクワクチンが申請中です。ノババックスのワクチンは、武田薬品工業が国内の製造・供給を担っており、今年初頭から1億5000万回分を供給することで厚生労働省と合意しています。
治療薬では、ファイザーの経口抗ウイルス薬PF-07321332の申請・承認が見込まれます。低用量リトナビルとの併用で高い有効性が期待されており、日本政府は200万人分を確保しています。経口抗ウイルス薬としては、昨年末に特例承認されたMSDの「ラゲブリオ」に続く薬剤となります。
新薬ではありませんが、新型コロナ治療薬としては中外製薬が抗IL-6受容体抗体「アクテムラ」の新型コロナ肺炎への適応拡大を申請中です。
【皮膚】マルホが3新薬を申請中
皮膚領域では、乾癬治療薬としてユーシービージャパンの抗IL-17A/F抗体ビメキズマブ(予定製品名・ビンゼレックス皮下注)とブリストル・マイヤーズスクイブの経口TYK2阻害薬デュークラバシチニブの発売が見込まれます。TYK2は炎症性サイトカインの受容体に結合して下流にシグナルを伝達する役割を持つJAKファミリーの分子。TYK2阻害薬の申請は国内初となります。
ここ数年新薬の投入が相次いでいるアトピー性皮膚炎では、マルホが中外から導入した抗IL-31受容体A抗体ネモリズマブを成人対象に申請中。同社は、原発性腋窩多汗症治療薬グリコピロニウムトシル酸塩水和物と、酒さに対する外用剤M1220も申請しており、グリコピロニウムは「ラピフォートワイプ」の製品名で1月の承認を見込みます。
【眼】中外の抗VEGF/Ang-2バイスペシフィック抗体が承認へ
眼科領域で注目されるのは、中外製薬の抗VEGF/Ang-2バイスペシフィック抗体ファリシマブ。「糖尿病黄斑浮腫および中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性」を対象に申請中で、眼科領域に参入します。既存の眼内注射剤が最長で12週ごとの投与なのに対し、ファリシマブは最長16週間の投与間隔を実現しており、治療負担の軽減が期待されます。
青森県弘前市の再生医療ベンチャー・ひろさきLIは、角膜上皮幹細胞疲弊症に対する自己口腔粘膜由来上皮細胞シートを今年発売する予定。「サクラシー」の製品名で厚労省部会が昨年12月に承認を了承しました。ヒトの羊膜を調整した羊膜基質上で培養されたもので、同疾患に対する再生医療等製品としては、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)の同「オキュラル」と自家培養角膜上皮「ネピック」に続く3剤目となります。
興和は自社の緑内障・高眼圧症治療薬「グラナテック」の有効成分リパスジルにブリモニジンを組み合わせた配合剤を昨年11月に申請。参天製薬は、ドライアイ治療薬「ジクアス」(1日6回点眼)の点眼回数を少なくした改良製剤の承認を取得する見通しです。
【その他】セマグルチド 肥満症治療薬として承認へ
その他の領域では、ラインファーマのミフェプリストン/ミソプロストールが、国内初の経口人工妊娠中絶薬として年内にも承認される見通し。海外で一般的な中絶法が日本でも可能になると期待されています。婦人科領域では、日本新薬の鉄欠乏性貧血治療薬デルイソマルトース第二鉄の承認も見込まれます。
先駆け審査指定制度の対象品目では、サノフィのオリプダーゼアルファが承認の見込み。酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ASMD)の非中枢神経系病変に対する酵素補充療法で、承認されれば同疾患に対する世界初の治療薬となります。サノフィは、寒冷凝集素症治療薬スチムリマブも申請中です。
大正製薬が関節リウマチ治療薬として申請中のオゾラリズマブは、国内初のナノボディ製剤。2つの抗TNFαナノボディと抗血清アルブミンナノボディを融合した三量体構造の低分子抗体で、大正製薬はベルギー・アブリンクスから同薬を導入して開発を進めてきました。協和キリンも、米リアタから導入したNrf2活性化薬バルドキソロンメチルを昨年7月に申請。対象疾患は、腎機能低下を伴う進行性の遺伝性疾患のアルポート症候群です。
武田薬品工業のラナデルマブは、遺伝性血管性浮腫に対する抗ヒト血漿カリクレイン抗体。EAファーマが昨年5月に申請した潰瘍性大腸炎治療薬カロテグラストメチルは、自社創製の経口α4インテグリン阻害薬で、同作用機序としては世界初の製品化を見込みます。
2型糖尿病治療薬として注射薬と経口薬が販売されているノボ・ノルディスクファーマのセマグルチドは、肥満症に対する新たな製剤が承認される見通しです。現在、国内で保険適用されている抗肥満薬は、BMI35以上の高度肥満にしか適応を持たないマジンドールのみ。セマグルチドが承認されれば、肥満症治療の新たな選択肢となります。
希少疾患では、アルジェニクスジャパンのエフガルチギモド アルファ(ウィフガート点滴静注)が全身型重症筋無力症を対象に、ファイザーのソムアトロゴン(エヌジェンラ皮下注)が成長ホルモン分泌不全性低身長症を対象に、それぞれ近く承認される見通しです。