中央社会保険医療協議会(中医協)総会は5月13日、ノバルティスファーマの脊髄性筋萎縮症向け遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」や、第一三共の抗がん剤「エンハーツ」、日本新薬のデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬「ビルテプソ」などの薬価収載を了承した。ゾルゲンスマの薬価は1患者あたり1億6700万円となった。収載は今月20日の予定。
ゾルゲンスマ 50%の有用性加算
「ゾルゲンスマ」(一般名・オナセムノゲン アベパルボベク)は、アデノ随伴ウイルスにSMNタンパク質をコードするSMN遺伝子を組み込んだ遺伝子治療薬。正常なSMN遺伝子を導入することで同遺伝子の機能欠損を補い、正常なSMNタンパク質を発現させて生命予後と運動機能を改善する。米国では2億円を超える価格が設定され、日本でも薬価に注目が集まっていた。
ゾルゲンスマの薬価は、バイオジェン・ジャパンのアンチセンス核酸医薬「スピンラザ」を比較薬とする類似薬効比較方式Iで算定。1回の静脈内投与で長期的な有効性が認められていることなどが評価され、有用性加算I(加算率50%)がついたほか、先駆け審査指定制度加算(同10%)がつき、薬価は1患者あたり1億6707万7222円となった。薬価算定組織は当初、有用性加算を40%としていたが、ノバルティスの不服意見を受けて50%に引き上げられた。
発売2年度目のピーク時売上高は薬価ベースで43億円(投与患者数25人)を予測。新薬創出・適応外薬解消等促進加算が適用され、中医協の判断で費用対効果評価の対象となった。
ピーク時売上高100億円超は6成分
この日の中医協総会では、新薬18成分28品目の薬価収載も了承された。このうち、ピーク時の売上高予測が100億円を超えるのは、
▽加齢黄斑変性治療薬「ベオビュ」(ブロルシズマブ)=ノバルティスファーマ(294億円)
▽高カリウム血症治療薬「ロケルマ」(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物)=アストラゼネカ(158億円)
▽抗がん剤「エンハーツ」(トラスツズマブ デルクステカン)=第一三共(129億円)
▽同「カボメティクス」(カボザンチニブリンゴ酸)=武田薬品工業(127億円)
▽糖尿病治療薬「オゼンピック」(セマグルチド)=ノボノルディスクファーマ(125億円)
▽血栓・塞栓形成抑制薬「キャブピリン」(アスピリン/ボノプラザンフマル酸)=武田(121億円)
――の6成分。カボメティクスには10%、エンハーツには5%の有用性加算IIがつき、いずれも費用対効果評価の対象となった。
18成分のうち、▽メルクバイオファーマの抗がん剤「テプミトコ」(テポチニブ塩酸塩水和物)▽日本新薬のデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬「ビルテプソ」(ビルトラルセン)▽ステラファーマのがん治療薬「ステボロニン」(ボロファラン〈10B〉)――は先駆け審査指定制度の対象品目で、いずれも10%の先駆け審査指定制度加算がついた。
ホウ素中性子補足療法(BNCT)に使うステボロニンは、1回で治療が完了する利便性の高さが評価され、35%の有用性加算Iを取得。国産初の核酸医薬であるビルテプソには、市場性加算I(加算率10%)がついた。
【AnswersNews編集部が製薬企業をレポート】