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【展望2020】毎年薬価改定、対象品目の行方は…治療用アプリ保険適用で「DTx元年」に

オリンピックイヤーとなる2020年。製薬業界では4月に薬価改定が行われ、21年度から始まる毎年改定に向けた議論が本格化します。米国で2億円の価格がついた遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」の承認によって高額薬剤をめぐる議論の再燃が予想される一方、国内初となる治療用アプリの保険適用で「デジタルセラピューティクス(DTx)元年」となりそうです。

 

4月の薬価改定 4.38%引き下げ

今年4月に行われる薬価改定は、薬剤費ベースで4.38%の引き下げとなることが決まりました。過去の改定に比べると引き下げ幅は小さくなっていますが、昨年10月の消費増税に伴う改定でも2.40%の引き下げが行われており、製薬企業にとって厳しい改定となることに変わりはありません。

 

【薬価改定率の推移(薬剤費ベース)】:2000年(-7%)、02(-6.3%)、04(-4.2%)、06(-6.7%)、08(-5.2%)、10(-5.75%)、12(-6%)、14(-2.65% ※消費税増税分+2.99%を含む)、16、(-5.57%)、18、(-7.48%)、19、(-2.4% ※消費税増税分+1.95%を含む)、20、(-4.38%)。※厚生労働省の資料をもとに作成

 

同じく4月に行われる薬価制度改革では、新薬創出・適応外薬解消等促進加算の企業指標に革新的新薬の収載実績の有無などが追加されるものの、現行の仕組みは基本的に維持。効能変化再算定は変更後の主たる効能・効果に薬理作用類似薬がない場合でも適用されることになります。

 

後発医薬品への置き換え率が80%を超えた長期収載品の薬価を段階的に後発品と同じ水準まで引き下げる「G1」は、後発品発売から10年たっていなくても置き換え率が80%を超えると前倒しで適用。後発品では、価格帯の集約によって薬価が改定前より高くなることを防ぐための措置が導入されます。

 

製薬業界側は「新薬創出加算は改善方向への見直しとなったが、その内容は限定的なものだ」(日本製薬工業協会)と受け止めており、再算定の強化については予見性の低下や適応拡大に対する開発意欲の低下を懸念しています。

 

毎年改定にらみ再編・淘汰

今年、製薬業界にとって最大の関心事となるのが、2021年度から始まる毎年薬価改定の対象品目でしょう。16年12月に政府が決めた基本方針では「現在2年に1回行われている薬価調査に加え、その間の年にも全品目を対象に薬価調査を行い、その結果に基づいて価格乖離の大きい品目について薬価改定を行う」とされ、今年中に具体的な対象品目の範囲を決めることになっています。

 

厚生労働省の試算によると、対象品目の範囲を「平均乖離率を上回るもの」とすれば全品目の約半数が、「平均乖離率の2倍以上」とすれば全品目の約2割が、通常改定の間の年に薬価の引き下げを受けることになります。

 

当然ながら対象品目の範囲によって医療費の削減額は変わってくるため、財政当局も交えた激しい綱引きが行われることになりそう。毎年改定には適正な価格形成が不可欠ですが、昨年11月には大手医薬品卸4社による談合疑惑が発覚しており、これが検討に影を落とすかもしれません。

 

【毎年改定の対象品目の範囲と医療費削減額(厚労省試算)】(対象品目の範囲/対象品目数(全品目に占める割合)/医療費削減額):平均乖離率の2倍以上/約3100品目(約2割)/500~800億円程度、平均乖離率の1.5倍以上/約5000品目(約3割)/750~1100億円程度、平均乖離率の1.2倍以上/約6600品目(約4割)/1200~1800億円程度、平均乖離率の1倍超/約8100品目(約5割)/1900~2900億円程度。※薬価制度抜本改革の骨子(2017年12月20日中医協了承)をもとに作成

 

毎年改定は製薬企業の経営に大きな影響を与えると予想され、それをにらんだ動きが今年も活発化しそうです。後発品メーカーでは昨年、富士フイルムファーマが解散し、エーザイは後発品子会社を日医工に売却。外資系後発品企業では、ルピン(インド)とアスペン(南アフリカ)が日本市場からの撤退を発表しました。薬価の引き下げが加速することで収益性の低下は避けられず、後発品メーカーの再編・淘汰が進むでしょう。

 

新規事業を模索

新薬メーカーでは、後発品事業からの撤退や長期収載品の売却によって特許切れ医薬品の事業を縮小させる一方、医療機器やDTxといった新規事業を模索する動きが続きそう。

 

昨年は、いわゆる「未病ビジネス」に参入するメーカーも相次ぎました。「保険財政は緊縮以外なく、その中でだけでは安定した成長はない」とは、昨年3月に認知症の予測・予防サービスを事業化する方針を明らかにしたエーザイの内藤晴夫代表執行役CEO(最高経営責任者)の言葉。薬価引き下げの圧力が強まる中、公的保険外でどう稼いでいくのか、真剣に考えなければならない時期に差し掛かっています。

 

ゾルゲンスマ承認へ 日本新薬の核酸医薬も

国内では今年も注目の新薬が続々と登場する見通しです。

 

中でも特に注目度が高いのが、ノバルティスファーマの脊髄性筋萎縮症向け遺伝子治療薬「AVXS-101」です。先駆け審査指定制度の対象品目で、本来なら昨年半ばの承認が見込まれていましたが、審査が長引いたことで承認は今年に持ち越されました。「ゾルゲンスマ」の製品名で昨年承認された米国では2億円を超える価格がついており、日本でも超高額な薬価が議論を呼びそうです。

 

日本新薬が申請している国産初のアンチセンス核酸医薬ビルトラルセンは、順調にいけば今年春に承認となる見通し。同薬はデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬で、ジストロフィン遺伝子のmRNA前駆体に作用し、スプライシングの過程でエクソン53をスキップすることで機能を持ったジストロフィンタンパク質を産生させます。米国でも昨年承認を済ませており、年内の承認が見込まれます。

 

【2020年 国内で承認が見込まれる注目の新薬】(品名/社名/対象疾患/モダリティなど)★は先駆け審査指定制度の対象品目:AVXS-101★(ゾルゲンスマ)/ノバルティス/脊髄性筋委縮症/遺伝子治療薬、ビルトラルセン★/日本新薬/デュシェンヌ型筋ジストロフィー/核酸医薬、サトラリズマブ/中外製薬/視神経脊髄炎スペクトラム/リサイクリング抗体、トラスツズマブデルクステカン/第一三共/HER2陽性乳がん/抗HER2ADC、 経口セマグルチド/ノボノルディスク/2型糖尿病/経口GLP-1受容体作動薬、ボロファラン(10B)★/ステラファーマ/頭頸部がん/BNCT用ホウ素製剤。※各社のプレスリリースなどをもとに作成

 

このほかにも、▽第一三共が大型化を期待する抗HER2抗体薬物複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン▽抗原に繰り返し結合できるリサイクリング抗体技術を使った中外製薬のサトラリズマブ▽ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に使うステラファーマのホウ素製剤ボロファラン(10B)――などが今年国内で承認される見通し。昨年、アステラス製薬の「エベレンゾ」が一番乗りで発売された腎性貧血治療薬のHIF-PH阻害薬には、今年3品目が参入し、激しい市場競争が繰り広げられることになりそうです。

 

CureAppの禁煙治療アプリが保険適用へ

昨今注目を集めるDTxも今年、日本で登場する見通しです。

 

国内初の治療用アプリとなるとみられるのが、CureAppの禁煙治療用アプリ。昨年、薬事申請を行っており、年内の承認と保険適用が見込まれています。同アプリは、受診と受診の間に治療介入することで禁煙の継続をサポートするもので、国内で行った臨床第3相(P3)試験では対照群(対照アプリ)に比べて主要評価項目の継続禁煙率を有意に上昇させました。

 

塩野義製薬は米アキリ・インタラクティブから導入したADHD(注意欠陥・多動症)向けの治療用アプリ「AKL-T01」について、日本で近く臨床試験(P2試験)を始める予定。アステラス製薬も昨年、米ウェルドックから糖尿病患者向け疾患管理アプリ「BlueStar」を導入するなど、製薬大手もDTxに力を入れ始めています。

 

医薬品でもなく医療機器でもない第三の治療として期待を集めるDTxですが、保険適用でどのような点数がつくかは不透明な部分も大きいのが現状です。今後の市場や参入企業の動向に大きな影響を与えかねないだけに、CureAppの禁煙治療用アプリの点数がどのように設定されるか注目されるところです。

 

※※※

 

今年はこのほか、秋ごろに改正医薬品医療機器等法が施行され、先駆け審査指定制度と条件付き早期承認制度が法制化。薬害防止のための第三者機関「医薬品等行政評価・監視機構」が発足します。2020年も製薬業界にとってはせわしない1年になりそうです。

 

(前田雄樹)

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