2019年11月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】抗がん剤Brukinsaや急性肝性ポルフィリン症治療薬Givlaariなど
「Ibrance」米ファイザー
乳がん治療薬「Ibrance」(一般名・palbociclib)は、新たに錠剤が承認されました。対象はホルモン受容体陽性・HER2陰性の進行・転移性患者で、アロマターゼ阻害薬やフルベストラントと併用します。これまではカプセル剤でしたが、錠剤にすることで飲みやすくなり、アドヒアランスの向上につながると期待されます。
「Talicia」イスラエル・レッドヒル
ヘリコバクター・ピロリ感染症治療薬「Talicia」(omeprazole/amoxicillin/rifabutin)が承認されました。抗菌薬クラリスロマイシンをベースとする標準治療で効果が得られない患者に使用できるのが特徴で、FDAから認定感染症製品に指定されています。
「Reblozyl」米セルジーン
赤血球成熟製剤「Reblozyl」(luspatercept)は、定期的な赤血球輸血を必要とするβサラセミア患者の貧血に対する治療薬。輸血回数を減らし、鉄過剰のリスクを軽減すると期待されます。βサラセミアは、ヘモグロビンの産生を低下させる遺伝性疾患。日本では骨髄異形成症候群に伴う貧血を対象に臨床第3相(P3)試験を実施中です。
「Brukinsa」中国ベイジーン
BTK阻害薬「Brukinsa」(zanubrutinib)は、再発・難治性のマントル細胞リンパ腫の適応で承認を取得しました。対象は、少なくとも1回の治療歴がある患者。申請のもとになった臨床試験では、84%の患者で腫瘍が縮小しました。中国企業が抗がん剤の承認を米国で取得するのは初めて。
「Fetroja」塩野義製薬
抗菌薬「Fetroja」(cefiderocol)が「ほかの治療選択肢がない、もしくは限られた18歳以上の患者における、グラム陰性菌による腎盂炎を含む複雑尿路感染症」の適応で承認。同薬は新規のシデロフォアセファロスポリンで、カルバペネム耐性の緑膿菌などに対して抗菌力を示します。薬剤耐性への活用が期待されており、認定感染症製品に指定。欧州でも申請中です。
「Adakveo」スイス・ノバルティス
抗P-セレクチン抗体「Adakveo」(crizanlizumab)は、鎌状赤血球症の疼痛発作の低減で承認されました。鎌状赤血球症は、赤血球の形が鎌状になり、酸素運搬機能が低下して起こる遺伝性の貧血病。米国ではアフリカ系などで約10万人の患者がいると考えられています。臨床試験ではプラセボに比べて血管閉塞による発作の頻度を45%低下させました。
「Givlaari」米アルナイラム
「Givlaari」(givosiran)は、米国初となる急性肝性ポルフィリン症治療薬として承認。急性肝性ポルフィリン症は肝細胞にポルフィリンが過剰産生される遺伝性疾患で、主な症状は発作や麻痺、呼吸不全など。同薬はアルナイラムにとって2剤目のsiRNA核酸医薬で、欧州でも申請中。日本でも開発を進めており、2020年の申請を目指しています。
「Xcopri」韓国SKバイオ
抗てんかん薬「Xcopri」(cenobamate)は、てんかんの部分発作の適応で承認を取得しました。韓国企業が創製した化合物としては初の米国承認。麻薬取締局の審査を経て、2020年4~6月に発売する予定です。欧州では導出先のスイス・アーベルセラピューティクスが20年の申請を目指しています。
「Exservan」米アクエスティブ
「Exservan」は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬riluzoleの舌下フィルム剤。同薬はアクエスティブ独自のドラッグ・デリバリー・システム「PharmFilm」を使って開発されました。欧州では導出先のイタリア・ザンボンが開発・商業化を進めています。
「Oxbryta」米グローバル・ブラッド
「Oxbryta」(voxelotor)は鎌状赤血球症治療薬として承認を取得しました。鎌状赤血球症を引き起こす脱酸素化鎌状ヘモグロビン重合を阻害する作用機序を持ち、疾患の原因にアプローチする米国で初めての薬剤です。
【適応拡大】Calquenceの慢性リンパ性白血病と少リンパ球性リンパ腫など
「Calquence」英アストラゼネカ
BTK阻害薬「Calquence」(acalabrutinib)は、慢性リンパ性白血病と少リンパ球性リンパ腫への適応拡大が承認されました。同薬は2017年にマントル細胞リンパ腫を対象に米国で承認。アストラゼネカにとって血液がんに参入するきっかけとなった治療薬です。
FDAが主導する多国間共同審査の枠組み「プロジェクトOrbis」が適用され、カナダとオーストラリアでも同時に承認されました。Orbisによる承認は2例目。
【バイオシミラー】サンドのpegfilgrastimとファイザーのadalimumab
「Ziextenzo」独サンド
持続性G-CSF製剤「Ziextenzo」は、pegfilgrastim(先行品は米アムジェンのNeulasta)のバイオシミラーとして承認されました。適応は「がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制」。欧州では18年に承認されており、米国では今年中に発売する見込みです。
「Abrilada」米ファイザー
「Abrilada」は、抗TNFα抗体adalimumab(先行品は米アッヴィのHumira)のバイオシミラー。適応は、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、尋常性乾癬です。日本でも同バイオシミラーの臨床試験が行われているとみられます。
(亀田真由)