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ニュース解説

【医薬品】先駆け審査指定制度、対象品目の一覧と開発状況まとめ

世界に先駆けて日本で承認申請を目指す新薬の審査期間を短縮する「先駆け審査指定制度」。2015年の制度創設以来、医薬品ではこれまでに22品目が指定を受け、このうち8品目がすでに承認を取得し、2品目が申請中、3品目が臨床第3相(P3)試験を実施中です。対象品目の開発状況をまとめました(記事の末尾に開発状況一覧)。

 

22品目が指定

先駆け審査指定制度とは、世界に先駆けて日本で申請を目指す画期的な新薬、医療機器、再生医療等製品、体外診断用医薬品を承認審査で優遇する制度。2015年に「試行的実施」という形で制度が創設されました。

 

対象品目には優先審査が適用される上、医薬品医療機器総合機構(PMDA)による事前評価で実質的に審査が前倒しされ、医薬品の場合、通常なら12カ月程度かかる審査期間を半分の6カ月に短縮。薬価算定の際には「先駆け審査指定制度加算」が適用され、10~20%の範囲で薬価が上乗せされます。

 

対象は、▽新規作用機序を持つ▽対象疾患が重篤である▽対象疾患に対して極めて高い有効性がある▽世界に先駆けて日本で早期開発・申請する意思がある――の要件を満たす品目。企業からの応募をもとに厚生労働省が選定します。

 

これまでに5回の公募で計22の医薬品が対象に選ばれ、このうち20年4月15日現在で8品目が承認を取得しています。

 

「ゾフルーザ」「ビルテプソ」など8品目が承認

承認を取得した先駆け審査指定制度の対象品目は、
▽塩野義製薬の抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ」(一般名・バロキサビル マルボキシル)
▽ノーベルファーマの結節性硬化症に伴う血管線維腫治療薬「ラパリムスゲル」(シロリムス)
▽アステラス製薬の急性骨髄性白血病治療薬「ゾスパタ」(ギルテリチニブフマル酸塩)
▽ファイザーのトランスサイレチン型心アミロイドーシス治療薬「ビンダケル」(タファミジス メグルミン)
▽中外製薬の抗がん剤「ロズリートレク」(エヌトレクチニブ)
▽日本新薬のデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬「ビルテプソ」(ビルトラルセン)
▽ステラファーマのがん治療薬「ステボロニン」(ボロファラン〈10B〉)
▽メルクバイオファーマの抗がん剤「テプミトコ」(テポチニブ塩酸塩水和物)
――の8品目。

 

【医薬品】承認を取得した先駆け審査指定制度の対象品目】(2020年6月25日現在)(製品名(一般名)/社名/申請/承認先駆け加算(率)): ゾフルーザ(バロキサビル/マルボキシル)塩野義製薬/17年10月/18年2月/10%/ ラパリムスゲル(シロリムス)/ノーベルファーマ/17年10月/18年3月/10% / ゾスパタ(ギルテリチニブフマル酸塩)アステラス製薬/18年3月/18年9月/10% ビンダケル*(タファミジス/メグルミン)/ファイザー/18年11月/19年3月/―/ ロズリートレク(エヌトレクチニブ)/中外製薬/18年12月/19年6月/10%/ ビルテプソ(ビルトラルセン)/日本新薬/19年9月/20年3月/10% ステボロニン(ボロファラン(10B))/ステラファーマ/19年10月/20年3月/10%/ テプミトコ(テポチニブ塩酸塩水和物)/メルクバイオファーマ/19年11月/20年3月/10% |※*は適応拡大。PMDAの資料や各社のプレスリリースなどをもとに作成

 

ゾフルーザは、「タミフル」など既存のノイラミニダーゼ阻害薬とは異なる作用機序を持つキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬。1回の内服で治療が完結するのが最大の特徴です。ゾスパタは国内初のFLT3阻害薬で、FLT3遺伝子の変異がある急性骨髄性白血病が対象。ロズリートレクはROS1/TRK阻害薬で、NTRK融合遺伝子変異陽性の固形がんを対象に承認されました。

 

ビルテプソは国産初の核酸医薬。ジストロフィン遺伝子のmRNAに作用し、エクソン53をスキップすることで機能を持ったジストロフィンタンパク質を産生させます。

 

ステボロニンはホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に使うホウ素剤です。がん患者に同薬を投与するとホウ素(10B)ががん細胞に集積し、そこに体外から中性子線を当てると放射線が発生。これによってがん細胞を破壊します。テプミトコはMET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の非小細胞肺がんの治療薬です。

 

エンハーツは胃がんで申請、光免疫療法も申請中

対象品目22品目のうち、残る14品目は申請または臨床開発の段階です。楽天メディカルジャパンの光免疫療法薬「ASP-1929」(セツキシマブ サロタロカンナトリウム、予定適応=頭頸部がん)は20年3月に申請し、条件付き早期承認制度が適用されました。第一三共の抗体薬物複合体(ADC)「エンハーツ」(トラスツズマブ デルクステカン)も、20年5月に先駆け指定の対象である胃がんへの適応拡大を申請しています。

 

ASP-1929は、抗EGFR抗体セツキシマブにIR700という色素を結合させた抗体薬物複合体(ADC)。投与後、患部にレーザー装置で非熱性赤色光を当てると、IR700が活性化されて物理的にがん細胞を破壊します。

 

P3試験を行っているのは、協和キリンの「RTA402」(バルドキソロンメチル、糖尿病性腎症)など。RTA402は、体内のストレス防御反応で中心的な役割を果たす転写因子Nrf2を活性化する低分子化合物。抗酸化ストレス作用と抗炎症作用によって、腎機能を改善させると考えられています。

 

直近の第5回の公募では、▽大阪大医学部付属病院の「CNT-01」(中性脂肪蓄積心筋血管症の症状および予後の改善)▽アレクシオンファーマの抗補体(C5)抗体エクリズマブ(ギラン・バレー症候群)▽グラクソ・スミスクラインのがん免疫療法薬「M7824」(胆道がん)――の3品目が20年6月19日に指定を受けました。エクリズマブは「ソリリス」の製品名で発作性夜間ヘモグロビン尿症などを対象に承認されている薬剤。M7824は、PD-L1とTGF-βを標的とする融合タンパクで、次世代のがん免疫療法薬の1つとして注目されています。

 

複数指定は第一三共のみ

先駆け指定の対象品目を企業ごとに見てみると、複数の指定を受けているのは第一三共(3品目)のみ。武田薬品工業も以前は2品目の指定を受けていましたが、プロテアソーム阻害薬「ニンラーロ」(イキサゾミブ)がALアミロイドーシスを対象としたP3試験で主要評価項目を達成できず、開発を中止したため、指定を取り消されました。

 

第一三共がエンハーツのほかに指定を受けているのは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬「DS-5141b」と抗がん剤「DS-3201」(バレメトスタット、予定適応=抹消性T細胞リンパ腫)。DS-5141bは、日本新薬のビルトラルセンとは異なるエクソンをスキップするアンチセンス核酸で、現在P1/2試験の段階。P1試験を行っているEZH1/2阻害薬バレメトスタットは、不活化されたがん抑制遺伝子を再活性化することでがん細胞の増殖を抑えます。

 

【【医薬品】先駆け審査指定制度の企業別対象品目数】(2020年6月25日現在) <3品目> 第一三共 <1品目>ノーベルファーマ| 日本新薬 |塩野義製薬 |オーファンパシフィック |アステラス製薬 |サノフィ |ステラファーマ |小野薬品工業 |協和キリン |JCRファーマ |ファイザー |メルクバイオファーマ |中外製薬 |武田薬品工業 |楽天メディカルジャパン |エーザイ |大阪大医学部付属病院 |アレクシオンファーマ |グラクソ・スミスクライン |※PMDAの資料をもとに作成

 

先駆け審査指定制度 対象品目の開発状況一覧

 【【医薬品】先駆け審査指定制度の対象品目と開発状況】(*は適応拡大。2020年6月25日現在)(指定/製品名/開発コード(一般名)/社名/対象疾患/開発段階)  <1>ラパリムスゲル(シロリムス)/ノーベルファーマ/結節硬化症に伴う皮膚病変/17年10月申請・18年3月承認 |ビルテプソ(ビルトラルセン)/日本新薬/エクソン53スキッピングにより治療可能なジストロフィン遺伝子の欠失が確認されているデュシェンヌ型筋ジストロフィー/19年9月申請・20年3月承認 |ゾフルーザ(バロキサビルマルボキシル)/塩野義製薬/A型またはB型インフルエンザウイルス感染症/17年10月申請・18年2月承認 |BCX7353(―)/オーファンパシフィック/遺伝性血管浮腫の血管性浮腫の発作管理/P3 |ゾスパタ(ギルテリチニブフマル酸塩)/アステラス製薬/再発または難治性のFLT3遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病/18年3月申請・18年9月承認 <2> ―(オリプダーゼアルファ)/サノフィ/酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症/P2 |DS-5141b(―)/第一三共/デュシェンヌ型筋ジストロフィー(ジストロフィン遺伝子のエクソン45スキッピングにより効果が期待できる患者)/※P1/P2 |ステボロニン(ボロファラン(10B))/ステラファーマ/切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がん/19年10月申請・20年3月承認 |ステボロニン(ボロファラン(10B))/ステラファーマ/再発悪性神経膠腫/P2 |オプジーボ*(ニボルマブ)/小野薬品工業/胆道がん/P2 <3>RTA402(バルドキソロンメチル)/協和キリン/糖尿病性腎臓病 |JR-141(イズロン酸-2-スルファターゼ)/JCRファーマ/ムコ多糖症II型(ハンター症候群)/P3 |ビンダケル*(タファミジスメグルミン)/ファイザー/トランスサイレチン型心アミロイドーシス/18年11月申請・19年3月承認 テプミトコ(テポチニブ塩酸塩水和物)/メルクバイオファーマ/MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん/20年3月承認 |エンハーツ*(トラスツズマブデルクステカン/第一三共/がん化学療法後に増悪したHER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃がん/20年5月申請 |ロズリートレク(エヌトレクチニブ)/中外製薬/NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形がん/18年12月申請・19年6月承認 <4> DS-3201(バレメトスタット)/第一三共/再発または難治性の末梢性T細胞リンパ腫/P2 |TAK-925(―)/武田薬品/ナルコレプシー/P1 |ASP-1929(―)/楽天メディカルジャパン/頭頸部がん/20年3月申請 |E7090(―)/エーザイ/FGFR2融合遺伝子を有する切除不能な胆道がん/P2 |CNT-01(―)/大阪大医学部付属病院/中性脂肪蓄積心筋血管症の症状および予後の改善/P2 |ソリリス*(エクリズマブ)/アレクシオンファーマ/ギラン・バレー症候群/P2 |M7824(―)/グラクソ・スミスクライン/胆道がん/P2 |※指定の数字は回(第1回15年10月27日/第2回17年4月21日/第3回18年3月27日/第4回19年4月8日/第5回20年6月19日)。PMDAの資料と各社のパイプラインをもとに作成

 

【【医薬品】過去に先駆け指定を受けていたものの取り消された品目】(*は適応拡大。2020年6月25日現在)(指定/製品名/開発コード(一般名)/社名/対象疾患/取り消し理由(時期)): 1/キイトルーダ*(ペムブロリズマブ)/MSD/胃がん/同作用機序の「オプジーボ」が先に承認されたため(17年9月) |2/BIIB037(アデュカヌマブ)/バイオジェン・ジャパン/アルツハイマー病の進行抑制/主要評価項目を達成する見込みがなくP3試験を中止したため(19年9月)|4/ニンラーロ*(イキサゾミブ)/武田薬品工業/ALアミロイドーシス/P3試験で主要評価項目を達成できず、開発を中止したため(20年6月) |※PMDAや厚労省の資料をもとに作成

 

(前田雄樹)

(公開日:2019年10月24日/最終更新日:2020年6月29日)

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