国内の製薬会社で人員の減少が続いています。東証1部上場の主要製薬企業33社の2018年度の従業員数(単体)は前年度比785人(1.2%)減となったことが、AnswersNewsのまとめでわかりました。新薬メーカーの人員減が顕著で、5年前と比べると5000人余り減少しています。
大日本住友など21社で減少、第一三共が最多に
集計対象としたのは、2018年4月~19年3月に本決算を迎えた東証1部上場の主要製薬会社33社(うち4社は後発医薬品メーカー)。各社の有価証券報告書をもとに、単体と連結それぞれで従業員数を集計しました。
18年度の単体ベースの従業員数は33社合わせて6万6820人で、前年度から785人(1.2%)減少。33社中21社が従業員を減らしました。減少が最も大きかったのは、335人(9.8%)減の大日本住友製薬。同社は18年4月、グループの間接業務を担う子会社DSPビジネスパートナーズを設立し、本社から従業員約190人が移りました。
このほか減少が目立ったのは、170人減の武田薬品工業や、111人減の田辺三菱製薬、107人減の協和キリンなど。日本ケミファやゼリア新薬工業も5%を超える減少となりました。一方、第一三共は158人(2.9%)増え、武田を抜いて単体ベースでは国内最多に。小野薬品工業やツムラ、中外製薬なども増加しました。
連結では大正製薬HDが1200人減少
連結ベースの従業員数は、子会社のない4社を除く29社合計で前年比2万1647人(12.2%)増の19万9279人。武田がシャイアー買収により2万2348人(82.1%)増えており、これが全体を押し上げました。武田を除く28社では前年度比701人(0.5%)の減少となります。
連結ベースで最も多く従業員を減らしたのは、1198人(18.9%)減となった大正製薬ホールディングス(HD)。同社は18年に国内グループ会社を対象に早期退職を行い、948人が応募しました。国内グループ会社の再編を行ったアステラス製薬(374人減)や協和キリン(290人減)、大日本住友(128人減)、沢井製薬(121人減)も3ケタの減少となりました。
上場製薬会社 5年で2900人減少、後発品は1.5倍に
上場製薬会社の単体従業員数は、13年度をピークに減少傾向が続いています。13年度と比較すると、33社全体では2903人(4.2%)減少。顕著なのは新薬メーカーで、この5年間で5248人(8.0%)減りました。企業ごとに見てみると、武田(19.6%減)やアステラス(12.9%減)、田辺三菱(15.5%減)などが10%以上減らしており、大日本住友(29.2%減)やエーザイ(21.6%減)は2割以上減少しています。
一方、後発医薬品メーカーは4社合わせて5年間で2345人(55.0%)増加。ただし、18年度は54人(0.6%減)と、過去5年で初めて従業員が減りました。
連結ベースで見てみると、連結ベースで5695人(2.9%)増加。新薬メーカーは2384人(1.3%)増え、後発品メーカーも3311人(61.6%)増加しました。シャイアー買収で従業員数が膨れた武田を除くと、全体では1万2658人(7.8%)減、新薬メーカーに限ると1万5969人(10.2%)減となります。
5社が早期退職、19年度は大幅減少か
18年度は、アステラスが約700人、エーザイが300人の早期退職を行いましたが、いずれも今年3月31日まで対象者が在籍していたため、今回の集計には反映されていません。さらに19年度は、協和キリンで296人、中外で172人(退職日は6月末)、鳥居薬品で281人(9月末)が早期退職することになっています。
過去5年で見ると、新薬メーカーの従業員数の減少幅が最も大きかったのは1583人減となった17年度。19年度はそれ以上に大きく減少することになるかもしれません。
(前田雄樹)