地域医療に貢献していると思う製薬企業は?インテージグループでヘルスケア領域の市場調査を手がけるアンテリオが全国の医師1万6000人を対象にこんな調査を行いました。トップとなったのは武田薬品工業で、上位10社中8社が日本企業という結果に。製薬企業に期待する取り組みとしては、多くの医師が「地域連携支援」を挙げました。
地域貢献 評価トップは武田薬品 上位10社中8社が内資系
アンテリオは6月27日、全国の医師に「地域医療に貢献していると思う製薬企業」を尋ねたWebアンケートの結果を発表しました。調査は今年2月に行われ、27診療科の医師1万6012人(病院勤務医1万2264人、開業医3748人)が回答しました。
調査の結果、最も多くの医師が地域医療に貢献していると思うと答えたのは武田薬品工業。2位は第一三共、3位は大塚製薬でした。上位10社のうち8社を内資系企業が占め、外資系からはファイザー(5位)とMSD(9位)がランクインしました。
アンテリオは「国内での長い活動、生活習慣病や認知症といった国の重点疾患に対する医薬品開発、市民に向けた啓発活動など、実際の医療現場での具体的な取り組みが総合的に評価された結果ではないか」と分析しています。
広がる自治体との連携協定
トップとなった武田薬品は今年4月、国内の営業体制を再編し、全国13支店の下にある営業所を細分化して88から154に倍増。MRに医療経営士の資格取得を促しているほか、今年に入ってからは、地域包括ケアシステムの推進に向けて北海道旭川市、広島市、滋賀県と相次いで連携協定を結びました。
2位の第一三共や6位のエーザイも、認知症患者を支えるまちづくりに向けて自治体と連携協定を締結。3位の大塚製薬も今年3月時点で45都道府県と生活習慣病予防などを目指した連携協定を結んでいます。
「地域の情報提供」「施設越えた勉強会」に期待
同じアンケートで「地域医療について製薬企業に期待すること」(複数回答)を尋ねたところ、最も多くの医師が挙げたのが「医療従事者に向けた勉強会の実施」(39.4%)。次いで「地域における他施設の動向に関する情報提供」(34.8%)が多く、「医師会や他施設とタイアップした研究会の実施」(34.5%)、「地域における患者の特徴に関する情報提供」(30.2%)と続きました。地域の動向に関する情報提供や、医療従事者間の連携を促す取り組みに対するニーズが高いことがうかがえます。
ただ、施設形態ごとに細かく見ていくと、それぞれ違ったニーズを持っていることが分かります。
それぞれ特徴的なところを挙げてみると、大学病院では「地域における患者の特徴に関する情報提供」を、大学病院以外の病院では「地域における他施設の動向に関する情報提供」を、診療所では「疾患領域における幅広い情報提供」を求める傾向にあります。病床の機能分化で施設の役割の見直しが急務となっている病院では他施設の動向に関心が高く、かかりつけ医機能を中心的に担う診療所では幅広い疾患に関する情報を求めていることがうかがえます。
地域にフォーカス 企業側も体制整備
国は団塊の世代が75歳以上となる2025年をめどに、住み慣れた地域で医療・介護・予防・住居・生活支援などのサービスを包括的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築を目指しています。2016年度には、これを実現するために必要となる病床数などを盛り込んだ「地域医療構想」を都道府県が策定。今後、構想をもとに全国各地で地域医療提供体制の再編が進むことになります。
製薬企業側でもこれに対応するため、組織体制の整備が進んでいます。
エーザイは16年4月、営業の最前線を担う「地域統括部」をそれまでの35から70に倍増させ、上位組織として8つの「地域連携推進本部」を設置。中外製薬も17年4月、それまで11支店だった体制を、都道府県単位の活動を基本とする36支店に細分化し、武田薬品も18年4月に営業所を倍増する組織再編を行いました。営業部門とは別に、地域連携をサポートする組織を立ち上げる企業も少なくありません。
地域医療をめぐる環境が大きく変化し、地域の実情にあったきめ細やかな対応が求められる中、製薬企業も新たな価値の提案を模索しています。
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