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2018年、製薬業界に起こる8つのこと―デジタルヘルス領域を中心に|DRG海外レポート

更新日

米国に本社を置くDecision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回は2018年に製薬業界で何が起こるのか、デジタルヘルスの領域を中心に専門アナリストが予想します。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

1.アマゾンのヘルスケア市場参入

ヘルスケア市場にアマゾンが参入してくることで、米医療保険大手ユナイテッド・ヘルスの「Optum」「Humana」のように、保険者のデジタル革新に対する投資を一気に呼び込むだろう。

 

デジタルツールへの需要は供給を上回るが、大規模な患者支援構想のもと、製薬業界がテクノロジー企業と手を組む機会が創出されることになる。

 

2.アマゾン参入のインパクトは、2018年はほぼない

競合する各企業が業界での地位を強化するために攻勢をかけるであろうことを除けば、アマゾンの参入が製薬業界や薬局業界に与えるインパクトは2018年のうちはほぼないと言っていい。

 

おそらくアマゾンは、デバイスの販売に参入してヘルスケア市場の動向をうかがう一方、足場を固めて戦略が確立するまで医薬品関連の事業は先送りするだろう。アマゾンは2017年に米国12州で医薬品卸売のライセンスを取得しているが、これをさらに広げることはなさそうだ。

 

アマゾンが買収した食品スーパー・ホールフーズで試験的に事業を行ったとしても、あるいは米ファイザーや独メルクのOTC(一般用医薬品)事業やビタミン剤事業を買収するという噂が聞こえたとしても、驚くにはあたらない。

 

3.リアルワールドデータの利用が加速する

米FDA(食品医薬品局)の推奨により、リアルワールドデータの利用が加速する。リアルワールドデータの利用拡大は、製薬業界でデータ専門家の需要をあおり、ヘルステックと製薬業界の融合が進むだろう。

 

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アップルの「Heart Study」や「ResearchKit」のようなリアルワールドの臨床試験が大々的に行われるようになる。これは単に、最近アップルウォッチが一人の男の命を救ったから、というわけではない。今、世界中の保険者が、製薬企業が開発する新たな治療薬を吟味しており、特に複数の新薬が競合する領域では厳しく調べている。

 

「オプジーボ」のような抗がん剤の新薬が、例えば、ライバルとなる「キイトルーダ」との直接比較のデータを出すことができていれば、英NICEなどの規制当局の判断も変わっていたかもしれない。

 

4.価値に基づく価格設定で新薬は高額化

米FDAによる後発医薬品の推進は、ブランド薬の売り上げにはさほど圧力とはならない。しかし、大手の保険者は今後、のしかかるコスト削減のプレッシャーをますます製薬業界に転嫁するようになるだろう。

 

強固なデータに基づく価値主導の価格設定は、高額な専門領域の新薬に多大な費用を求めることになる。これは、ノバルティスのCAR-T細胞療法「Kymriah」のように、驚異的な効果があるものの50万ドルという目を見張る高額な新薬で際立っている。

 

EMA(欧州医薬品庁)の承認には、大幅な値引きという犠牲を払うことになるだろう。それは米国の医薬品政策の議論にも飛び火し、フィードバックループとなって利益を圧迫するかもしれない。

 

5.米国の医療政策は依然として不透明

米国の医療政策は依然として不透明で、製薬業界には新たな風評リスクが待ち受けている。

 

包括的助成金を拠出するメディケアの実施が頓挫すると、議会は医療政策の策定を中止したまま中間選挙の態勢に突入した。民主党は強い追い風を受けて、製薬大手と薬価引き下げの約束を破ったトランプ大統領を激しく非難するだろう。

 

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医療は、何百万人もの米国人にとって、手の届かないものになるかもしれない。2019年には、医療保険取引所とCMS(メディケア・メディケイドサービスセンター)が、メディケイド受給者に労働要件などの条件を課すようになり、ACA(医療費負担適正化法)に基づく強制加入制度をなくせば保険料は急上昇する。さらに数百万人が保険からこぼれ落ちることになり、病院の閉鎖と整理・統合がこれに拍車をかける。

 

その反面、遺伝子治療や「エレクトロシューティカル」のような革新的新規医療技術は、製薬企業のパブリックイメージを好転させ、それに伴って企業収益も上昇するだろう。現在、特に目立ったイノベーションサイクルのピークにいるわけではない。有望かつ真に革新的な後期臨床試験段階の治療薬があるのはがん領域だけで、それもわずか数十だけだ。

 

6.米国のDTCはテレビからデジタルにシフトする

米国の消費者向けの医薬品広告予算は、テレビからデジタルにシフトするだろう。アラガンのCOO、Bill Meury氏は第3四半期の業績発表で「アラガンのDTC(消費者向け広告)予算の大部分は国内のテレビ広告ですが、ソーシャルメディアなどの分析技術も台頭している。それによって、広告効果はぐっと高まるだろう」と述べている。

 

フェイスブックのようなデジタルプラットフォームは、製薬企業の広告予算を呼び込もうと真剣に取り組んでいるし、対象患者が絞り込んだ形で発売される新薬が増えている。派手なテレビ広告は効果が薄れ、標的型オンライン広告と控えめなテレビ広告を組み合わせるほうが、効果を上げるようになるだろう。

 

7.AIや音声認識技術のヘルスケア・アプリケーションは期待外れの状態が続く

AIや音声認識技術を活用したヘルスケア・アプリケーションにはがっかりさせ続けられるだろう。開発者が安全性やプライバシーなど大変な問題に取り組んでいると喧伝しているのとは、息切れするほどのギャップがある。

 

ただ、VRやAR、ウェアラブルセンサーでは、新しい意外な有用性があることもわかってくるだろう(循環器モニタリングでアップルが行っている仕事からは目が離せない)。

 

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米国では、アマゾン/ホールフーズ、CVS/Aetna、ユナイテッド・ヘルスケア/Optumによって、その他の市場では、あらゆる場所で使える高性能センサーも搭載可能なモバイルデバイスが力となって、遠隔医療も発展していく。

 

世界中の医師がこれにすばやく対応し、改良を加えていけば、今は様子見の医療制度側も、バーチャル診療がコスト削減と患者の利便性向上を実現する手段だと気付くだろう。

 

8.製薬企業とIT企業の協力関係はさらに広がる

プロテウスのデジタルメディスン「Abilify MyCite」は、従来の通念を踏襲したもので、スマートピルを発売するのに最適な方法ではないだろう。この薬剤とデバイスが一体化した製品は後発医薬品と競合しており、これから採用曲線の険しい坂道を上っていかなければならない。

 

ただ、MyCiteのパフォーマンスにかかわらす、デジタルソリューションで差別化を図り、保険者に印象付けたい製薬企業は、プロテウスやPropeller Healthのような相手との協力関係をさらに広げていくようになるだろう。

 

一部では、呼吸器疾患から糖尿病まで、薬の領域を飛び出すようなソリューションにも動きが見えてくると期待される。デジタルな患者支援策から、次のレベルの血糖値測定器(最近ロシュが買収したMySugrなど)まで、多くの有望な新規事業が進んでおり、老舗の製薬企業や医療機器企業が提携先の発掘に力を入れている。

 

【AnswersNews編集長の目】

アナリストによる2018年の予想はいかがでしたか?

 

国内ではやはり、4月に行われる薬価制度改革が製薬業界にとって最も大きなできごとになるでしょう。新薬創出加算の対象は縮小し、長期収載品は後発医薬品の水準まで薬価が引き下げられます。国内市場の縮小も現実味を帯びてきており、製薬企業は生き残りをかけて事業構造を見直す1年となりそうです。

 

国内ではまた、今年4月から、市販後調査にリアルワールドデータを活用することが認められるようになり、リアルワールドデータを新薬開発に活用するための環境整備も進みます。1月には、ディー・エヌ・エー(DeNA)が塩野義製薬、旭化成ファーマとともにAI創薬の共同研究を開始すると発表しました。

 

市場環境は厳しさを増すだけに、データやITの活用による効率化に期待がかかります。

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

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