
2024年12月期(一部の日本企業は25年3月期、豪CSLは24年6月期)の世界売上高100億ドル超の製薬会社25社の業績を集計したところ、スイス・ロシュが2年連続の首位となりました。2位は米メルク、3位は同ファイザーで、トップ3の顔ぶれは昨年から変わらず。糖尿病・肥満症治療薬が業績を牽引する米イーライリリーがトップ10に入りました。
トップのロシュ、売上高687億ドル
スイス・ロシュの売上高は687億2200万ドル(前年比3.0%増)。多発性硬化症治療薬「オクレバス」(77億ドル、9%増)や血友病治療薬「ヘムライブラ」(52億ドル、12%増)などの主力品が好調でした。
2位の米メルクは641億6800万ドル(6.7%増)。がん免疫療法薬「キイトルーダ」は295億ドル(18%増)を売り上げ、売上高の4割を稼ぎ出しました。3位の米ファイザーは636億2700万ドル(6.8%増)。抗凝固薬「エリキュース」(74億ドル、9%増)をはじめとする主力品が伸び、23年の米シージェン買収で獲得した抗がん剤も寄与しました。
4位は569億6400万ドルの米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)で、5位は563億3400万ドルの米アッヴィ。J&Jは乾癬・炎症性腸疾患治療薬「ステラーラ」にバイオシミラー参入の影響があったものの、多発性骨髄腫治療薬「ダラザレックス」が好調で4.0%の増収。アッヴィも抗TNFα抗体「ヒュミラ」の減収を乾癬治療薬「スキリージ」などの主力品で補いました。上位5社は前年と同じ顔ぶれで、順位の変動もありません。
日本勢は武田14位が最高、大塚が19位
6位の英アストラゼネカは前年から1つ順位を上げました。SGLT2阻害薬「フォシーガ」や肺がん治療薬「タグリッソ」が好調で、前年比18.0%増の540億7300万ドルを売り上げました。
このほか売り上げを大きく伸ばしたのは、9位の米イーライリリー(32.0%増)や11位のデンマークのノボ・ノルディスク(25.0%増)、13位の米アムジェン(18.6%増)など。リリーとノボはそれぞれ糖尿病・肥満症治療薬として展開するGLP-1受容体作動薬が急成長しています。リリーのチルゼパチド(一般名)は前年の約3倍となる165億ドルを売り上げ、ノボのセマグルチドも38.4%増の293億ドルを販売。アムジェンは米ホライゾン・セラピューティクス買収が通年で寄与しました。一方、仏サノフィはコンシューマー事業を切り離したことで前年6位から10位まで順位を落としています。
日本企業トップは14位の武田薬品工業で、売上高は320億7100万ドル(7.5%増)。炎症性腸疾患治療薬「エンタイビオ」が2桁の売り上げ増となったものの、アムジェンに抜かれて順位を1つ落としています。19位の大塚HDは15.4%増の163億900万ドルで1ランクアップ。アステラス製薬は23位、第一三共は24位でした。
米バーテックス・ファーマシューティカルズは24年に売上高が初めて100億ドルを突破。最主力品の嚢胞性線維症治療薬「TRIKAFTA/KAFTRIO」だけで102億ドルを売り上げました。
研究開発費 100億ドル超は9社
研究開発費は、179億3800万ドルの米メルクがトップ。買収や提携に関する費用で300億ドルを超えた前年の反動で41.2%の減少となったものの、臨床開発費の増加で前年に続き1位となりました。2位は173億8500万ドル(7.8%増)のロシュ。医薬品事業では、がん領域を中心に126億ドルを投じています。
3位の英アストラゼネカは135億8300万ドルで、4位は135億2900万ドルの米J&J(医療用医薬品事業)。このほか、アッヴィと米ブリストル・マイヤーズスクイブ、リリー、ファイザー、スイス・ノバルティスが100億ドル以上を投じました。アッヴィは、米イミュノジェンと同セレベルの買収関連費用、セレベルから導入した抗精神病薬emraclidineの減損損失によって前年比で66.7%増加しています。
売上高に対する比率が25%を超えたのは、米リジェネロン・ファーマシューティカルズ(36.1%)とバーテックス(32.9%)、メルク(28.0%)、ロシュ(25.3%)、アストラゼネカ(25.1%)の5社。リジェネロンは後期開発段階にあるがん領域のパイプラインへの投資を強めています。日本企業では第一三共の23%が最大でした。
リリーはトップ5、ノボはトップ10入り視野
各社の業績ガイダンスによると、2025年もロシュが首位を維持する見通し。1桁台半ばの増収を見込んでいます。メルクとファイザーは横ばいから数%の増収予想。4位のJ&J以下の企業も多くが増収を見込んでいます。
中でもGLP-1受容体作動薬が好業績を牽引するリリーは、売上高580~610億ドル(29~35%増)を見込んでおり、トップ5入りが視野に入ります。ノボも恒常為替レートで13~21%の増収予想で、500億ドルを突破してトップ10に入りそうです。
一方、減収を見込むのはブリストル(3~5%減)と独バイエル(医薬事業、1~4%減)、武田薬品(1.1%減)。ブリストルは複数の品目への後発医薬品の影響が大きいと予想。武田薬品も米国でのADHD治療薬「ビバンセ」への後発品の影響などを織り込んでいます。
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AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
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