
海外大手製薬企業の2024年12月期決算のハイライトを、コンパクトなビジュアルを交えてまとめます。随時更新(公開:1月24日、最終更新:2月13日)。
米ギリアド・サイエンシズ(2月11日発表)
売上高287億5400万ドル(前期比6.0%増、約4兆4157億円)、純利益4億8000万ドル(91.5%減、約737億円)。米シーマベイ買収の関連費用と開発品の減損損失で大幅な減益。主力の抗HIV薬「ビクタルビ」は13%増の134億2300万ドルを売り上げ、抗TROP2抗体薬物複合体「トロデルビ」も24%増の13億1500万ドルと販売を拡大。CAR-T細胞療法の「テカルタス」と「イエスカルタ」も伸びた。25年12月期は製品売上高282億~286億ドル(前期は286億1000万ドル)を見込む。
米バーテックス・ファーマシューティカルズ(2月10日発表)
売上高110億2010万ドル(前期比11.7%増、約1兆6923億円)、純利益5億3560万ドルの赤字(約822億円の赤字、前期は36億1960万ドルの黒字)。米アルパイン・イミューン・サイエンシズ買収の関連費用で最終赤字となった。主力の嚢胞性線維症治療薬「TRIKAFTA/KAFTRIO」の売上高は102億3860万ドル(14.5%増)。25年12月期は117.5億~120億ドルの売上高を予想している。
英アストラゼネカ(2月6日発表)
売上高540億7300万ドル(前期比18%増、約8兆2087億円)、純利益70億3500万ドル(18%増、約1兆678億円)。SGLT2阻害薬「フォシーガ」(77億1700万ドル、29%増)や抗がん剤「タグリッソ」(65億8000万ドル、13%増)、がん免疫療法薬「イミフィンジ」(47億1700万ドル、17%増)など主力品が好調だった。25年12月期は1桁台後半の増収を予想している。
米ブリストル・マイヤーズスクイブ(2月6日発表)
売上高483億ドル(前期比7%増、約7兆3309億円)、純利益は89億4800万ドルの赤字(約1兆3581億円の赤字、前期は80億2500万ドルの黒字)。米カルナ・セラピューティクス買収の費用で最終赤字となった。抗凝固薬「エリキュース」(133億3300万ドル、9%増)やがん免疫療法薬「オプジーボ」(93億400万ドル、3%増)、関節リウマチ治療薬「オレンシア」(36億8200万ドル、2%増)などは堅調だった。25年12月期は約455億ドルの売り上げを見込む。
米イーライリリー(2月6日発表)
売上高450億4270万ドル(前期比32%増、約6兆8360億円)、純利益105億9000万ドル(102%増、約1兆6072億円)。糖尿病治療薬「マンジャロ」の売上高は115億4010万ドル(124%増)で、同成分の肥満症治療薬「ゼップバウンド」も49億2570万ドル(2702%増)を販売。抗がん剤「ベージニオ」(53億660万ドル、37%増)も伸びた。25年12月期の売上高予想は580億~610億ドルと大幅な増収を見込んでいる。
デンマーク・ノボノルディスク(2月5日発表)
売上高2904億300万デンマーククローネ(前期比25%増、6兆1585億円)、純利益1009億8800万デンマーククローネ(21%増、2兆1416億円)。糖尿病治療薬「オゼンピック」(1203億4200万デンマーククローネ、26%増)や肥満症治療薬「ウゴービ」(582億600万デンマーククローネ、86%増)が好調だった。25年12月期は為替の影響を除いて16~24%の増収を見込む。
英グラクソ・スミスクライン(2月5日発表)
売上高313億7600万ポンド(前期比3%増、約5兆9634億円)、純利益25億7500万ポンド(前期比48%減、約4895億円)。抗HIV薬が計70億8900万ポンド(10%増)と伸び、喘息治療薬「ヌーカラ」などの呼吸器領域(9%増)やがん領域(93%)も好調だった。一方、胃薬「ザンタック」の発がん性をめぐる訴訟の和解費用を計上したことで利益は大きく減少した。25年12月期は3~5%の増収を予想している。
米メルク(2月4日発表)
売上高641億6800万ドル(前期比7%増、約9兆8224億円)、純利益171億1700万ドル(4589%増、約2兆6202億円)。買収に伴って研究開発費が大きく膨らんだ前期の反動で大幅な増益となった。主力のがん免疫療法薬「キイトルーダ」の売上高は前期比18%増の294億8200万ドル。がん治療薬「WELIREG」も倍増した。25年12月期の売上高は641億~656ドルと予想している。
米ファイザー(2月4日発表)
売上高636億2700万ドル(前期比7%増、約9兆7410億円)、純利益80億3100万ドル(279%増、約1兆2295億円)。昨年から進めているコスト削減が奏功し、大幅な増益。抗凝固薬「エリキュース」(73億6600万ドル、9%増)やアミロイドーシス治療薬「ビンダケルファミリー」(54億5100万ドル、64%増)などが販売を拡大し、米シージェン買収で獲得した抗体薬物複合体「パドセブ」「アドセトリス」も増収に貢献した。新型コロナウイルス感染症ワクチン「コミナティ」の売上高は53億5300万ドル(52%減)、同治療薬「パクスロビド」は57億1600万ドル(347%増)だった。25年12月期は610億~640億ドルの売り上げを見込む。
米アムジェン(2月4日発表)
売上高334億2400万ドル(前期比19%増、約5兆1146億円)、純利益40億9000万ドル(39%減、約6259億円)。主力の高コレステロール血症治療薬「レパーサ」(22億2200万ドル、36%増)や骨粗鬆症治療薬「イベニティ」(15億6300万ドル、35%増)などが好調で、新製品の甲状腺眼症治療薬「テッペーザ」(18億5100万ドル)も前期から4倍以上売り上げを増やした。一方、ホライゾン・セラピューティクス(アイルランド)の買収に関連する費用が利益を押し下げた。25年12月期の売上高予想は343億~357億ドル。
米リジェネロン(2月4日発表)
売上高142億200万ドル(前期比8%増、約2兆1729億円)、純利益44億1300万ドル(12%増、約6752億円)。眼科用VEGF阻害薬「アイリーア」の高濃度製剤が売り上げを伸ばし、がん免疫療法薬「リブタヨ」(12億1700万ドル、41%増)も拡大。アトピー性皮膚炎などの治療薬「デュピクセント」の販売増に伴い、仏サノフィからの提携収入も2割近く増えた。
米アッヴィ(1月31日発表)
売上高563億3400万ドル(前期比3.7%増、約8兆7500億円)、純利益42億7800万ドル(12.0%減、約6600億円)。抗TNFα抗体「ヒュミラ」の売り上げがバイオシミラーの影響で37.6%減と落ち込んだものの、抗IL-23p19抗体「スキリージ」(117億1800万ドル、50.9%増)やJAK阻害薬「リンヴォック」(59億7100万ドル、50.4%増)などが成長。オンコロジー領域やニューロサイエンス領域も売り上げを伸ばした。買収関連費用などがかさみ純利益は減少。25年12月期は、調整・希薄化後の1株あたり純利益を12.12~12.32ドル(24年12月期は10.12ドル)と予想している。
スイス・ノバルティス(1月31日発表)
売上高503億1700万ドル(前期比11%増、約7兆8200億円)、純利益119億3900万ドル(39%増、約1兆8600億円)。心不全治療薬「エンレスト」(78億2200万ドル、30%増)や乾癬治療薬「コセンティクス」(61億4100万ドル、23%増)、多発性硬化症治療薬「ケシンプタ」(32億2400万ドル、49%増)など主力品が好調。売上高の増加と再編費用などの減少で大幅な増益となった。25年12月期は、1桁台半ばから後半の増収、1桁台後半から2桁台前半のコア営業増益を見込む。
仏サノフィ(1月30日発表)
売上高410億8100万ユーロ(前期比8.6%増、約6兆5980億円)、純利益57億4400万ユーロ(6.4%増、約9225億円)。アトピー性皮膚炎などの治療薬「デュピクセント」が23.1%増の130億7200万ユーロを売り上げ、業績を牽引した。25年12月期は1桁台半ばから後半の増収を見込む。
スイス・ロシュ(1月30日発表)
売上高604億9500万スイスフラン(前期比3.0%増、約10兆3168億円)、純利益91億8700万スイスフラン(前期比25.7%減、約1兆5667億円)。医薬品部門の売上高は461億7100万スイスフラン(約7兆8739億円)で4.3%増。多発性硬化症治療薬「オクレバス」(67億4400万スイスフラン、9%増)、血友病治療薬「ヘムライブラ」(45億300万スイスフラン、12%増)、眼疾患治療薬「バビースモ」(38億6400万スイスフラン、68%増)などが好調だった。医薬品部門の日本の売上高は、新型コロナウイルス感染症治療薬「ロナプリーブ」の販売減で23%減少した。純利益の減少は、買収に関連するのれんの減損が主な要因。25年12月期は、為替の影響を除いて1桁台半ばの増収を見込む。
イスラエル・テバ(1月29日発表)
売上高165億4400万ドル(前期比4.4%増、約2兆5549億円)、純利益16億3900万ドル(約2534億円)の赤字(前期は5億5900万ドルの赤字)。後発医薬品の販売が堅調で、片頭痛治療薬「アジョビ」やハンチントン病治療薬「オーステド」など新薬も拡大。のれんの減損費用や販売費用の増加で赤字となった。25年12月期は168~174億ドルの売上高を見込む。
米ジョンソン・エンド・ジョンソン(1月22日発表)
売上高888億2100万ドル(前期比4.3%増、約13兆39027億円)、純利益140億6600万ドル(5.6%増、約2兆2016億円)。医療用医薬品を扱うイノベーティブメディスン事業の売上高は569億6400万ドル(4.0%増、約8兆9163億円)。主力の乾癬治療薬「ステラーラ」がバイオシミラーの影響で売り上げを落としたものの、多発性骨髄腫治療薬「ダラザレックス」(116億7000万ドル、19.8%増)などが好調だった。25年12月期は売上高892~900億ドル(0.5~1.5%増)を見込む。