2022年12月期(一部の日本企業は23年3月期、豪CSLは22年6月期)の世界売上高100億ドル超の製薬会社26社の業績を集計したところ、今年も米ファイザーが世界一となりました。1000億ドルを超える売り上げの半分は、コロナワクチンと治療薬で稼いでいます。2位は前年に続きスイス・ロシュで、3位は前年6位から浮上した米メルクでした。
ファイザー、売上高の57%がコロナ関連製品
米ファイザーが、製薬企業として世界で初めて売上高1000億ドルの大台を超えました。2022年の売上高は1003億3000万ドルとなり、前年から23.4%増加。新型コロナウイルスワクチン「コミナティ」と経口抗ウイルス薬「パクスロビド」(国内製品名・パキロビッド)の2製品で売上高の約6割にあたる567億3900万ドルを売り上げました。
2位は売上高663億1800万ドルのスイス・ロシュ。多発性硬化症治療薬「Ocrevus」(63億2600万ドル、17%増)や血友病治療薬「ヘムライブラ」(40億650万ドル、27%増)が順調に推移し、世界第2位をキープしました。
売上高592億8300万ドルで3位となった米メルクは、前年6位から3ランクアップ。2021年以来、2年ぶりに世界トップ3に入りました。最主力品の免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」は前年比22%増の209億3700万ドルを販売。HPVワクチン「ガーダシル/ガーダシル9」も22%の増収となったほか、21年後半に販売を開始した新型コロナ治療薬「ラゲブリオ」で56億8400万ドルを稼ぎ出しました。
4位の米アッヴィと5位の米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、ともに1ケタ増収。米メルクに抜かれ、順位は1つずつダウンしました。アッヴィの抗TNFα抗体「ヒュミラ」の売上高は212億3700万ドル。J&Jは乾癬・クローン病治療薬「ステラーラ」(97億2300万ドル)や多発性骨髄腫治療薬「ダラザレックス」(79億7700万ドル)が堅調でした。
武田は11位
6位のスイス・ノバルティスは、価格引き下げや後発医薬品の影響で2.1%の減収。7位の米ブリストル・マイヤーズスクイブもわずかに減収となり、抗凝固薬「エリキュース」など主力品が売り上げを伸ばしたものの、後発品との競争で抗がん剤「レブラミド」が22%減と落ち込みました。
8位は13.9%増の453億1900万ドルとなった仏サノフィ。主力の抗IL-4/13受容体抗体「デュピクセント」は43.8%増の87億4000ドルを売り上げました。9位の英アストラゼネカは、SGLT2阻害薬「フォシーガ」(43億8100万ドル、46%増)が適応拡大によって売り上げを伸ばし、全社の売上高は18.5%の増収。両社とも順位を1つ上げました。
10位の英グラクソ・スミスクラインは、コンシューマーヘルスケア事業を分離したことが影響し、順位は3ランクダウン。ただ、継続事業だけでみれば、新型コロナに対する中和抗体「ゼビュディ」や抗HIV薬などが寄与し、前年から18.7%の増収となりました。
トップ10圏外の順位は昨年からあまり動きはなく、武田薬品工業は前年に続き11位でした。潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンティビオ」などが好調で、売上高は12.8%増の322億2000万ドルとなりました。日本企業ではこのほか、大塚ホールディングス(22位)、アステラス製薬(23位)、第一三共(25位)がランクイン。第一三共は自社創製の抗がん剤「エンハーツ」が伸び、売上高が100億ドルを超えました。
昨年、新型コロナワクチンの開発成功で大手製薬の仲間入りを果たした米モデルナ(18位)は、コロナワクチンの販売が4%増(184億ドル)となり順位を1つアップ。一方、独ビオンテックは需要減によって売り上げを落とし、順位も昨年の16位から19位にダウンしました。
研究開発費、ロシュなど4社が100億ドル超
研究開発費は、167億9200万ドル(前年比8.3%増)のロシュがトップ。がん免疫療法を中心に売上高の25.3%を投じました。遺伝子治療や、早期段階の開発品への投資も増やしています。
2位は10.6%増の135億4800万ドルを投じたメルク。BTK阻害薬nemtabrutinibに関する無形資産の減損費用が発生したことに加え、モデルナや環状RNA技術を持つ米Ornaとの提携に関する費用が研究開発費を押し上げました。3位のJ&Jと4位のファイザーも研究開発費が100億ドルを超えました。
ロシュのほかに研究開発費の売上高比率が25%を超えたのは、25.2%の米イーライリリー(8位)と26.3%の第一三共(19位)。第一三共は注力する3つの抗体薬物複合体(ADC)への投資を加速させています。
前年からの研究開発費の伸びが大きかったのは、モデルナ(65.5%増)とビオンテック(61.9%増)です。モデルナはRSウイルスワクチンや季節性インフルエンザワクチンなどの開発にかかる費用が増加。ビオンテックは、オミクロン対応ワクチンの開発やほかの開発候補品の進捗、研究開発人員の確保などが大幅な伸びにつながりました。
【23年12月期】コロナ需要減少もファイザーが首位キープか
2023年は、各社ともコロナ関連製品の需要減少に大きく影響を受ける見込みで、ファイザーやロシュ、メルクは減収を予想しています。中でも大きな打撃を受けるのがファイザー。コミナティは64%減の135億ドル、パクスロビドは58%減の80億ドルを予想しており、全社の売上高は670~710億ドルとなる見通しです。ただ、2位のロシュが1桁台前半の減収を見込んでいるため、23年もファイザーが世界首位の座をキープするとみられます。
メルクはラゲブリオが47億ドル減の10億ドルにまで落ち込み、売上高は22年を下回る577~589億ドルと予想。モデルナとビオンテックはコロナワクチンが大きく減少し、全社の売上高は100億ドルを割り込みそうです。
ヒュミラの特許切れに直面するアッヴィも減収予想。ノバルティスは慢性心不全・高血圧症治療薬「エンレスト」などが好調ですが、今年後半に後発品子会社のサンド(22年の売上高は92億ドル)のスピンオフを予定しており、分社化の時期によっては順位に変動があるかもしれません。
一方、増収を見込むのはJ&Jやリリー、豪CSLなど。第一三共もエンハーツが54.2%の増収となり、2桁の増収を見込んでいます。
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