2022年9月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】膿疱性乾癬治療薬「Spevigo」や肝内胆管がん治療薬「Lytgobi」など
「Spevigo」独ベーリンガーインゲルハイム
抗IL-36受容体抗体「Spevigo」(一般名・spesolimab)は、成人の膿疱性乾癬の急性症状に対する米国初の治療薬。承認の根拠となった臨床試験では、Spevigoの投与を受けた患者の半数以上で、投与1週間後に膿疱の消失が確認されました。日本でも今年9月に承認されており、欧州でも申請中です。
「Daxxify」米レバンス
「Daxxify」(daxibotulinumtoxinA)は、中等度から重度の眉間のしわを改善する薬剤。レバンス独自の細胞透過性ペプチド技術を使って開発されたアセチルコリン遊離阻害・神経筋遮断薬です。臨床試験では、中央値で6カ月、最大で9カ月の持続効果を確認。従来の治療薬は持続効果が3~4カ月とされ、患者負担の軽減が期待されます。頸部ジストニアや足底筋膜炎の適応でも開発中です。
「Sotyktu」米ブリストル
経口アロステリックチロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬「Sotyktu」(deucravacitinib)は、1日1回投与の尋常性乾癬治療薬。全身療法や光線療法の候補となる中等症から重症の成人患者が対象です。1684人の患者を対象に行った臨床第3相(P3)試験では、プラセボおよび1日2回投与の「Otezla」(apremilast)と比べて優れた皮疹改善効果が確認されました。日本でも今年9月に承認を取得しており、欧州でも申請を済ませています。
「Rolvedon」米スペクトラム
「Rolvedon」(eflapegrastim)は、米国で約20年ぶりとなる新規の長時間作用型のG-CSF製剤。パートナーである韓国Hanmiの長時間作用型タンパク質プラットフォームを使って開発されました。適応は「抗がん剤治療による発熱性好中球減少症の発症抑制」。早期乳がん患者643人を対象としたP3試験では、持続型G-CSF製剤pegfilgrastimに対する非劣性が示されました。
「Terlivaz」アイルランド・マリンクロット
バソプレシン受容体作動薬「Terlivaz」(terlipressin acetate)は、米国初の肝腎症候群(HRS)治療薬。腎機能の急速な低下を伴う成人HRS患者の腎機能を改善します。腎機能の急速な低下を伴うHRSは、未治療の場合、生存期間の中央値は約2週間で、3カ月以内に8割が死亡するといわれています。P3試験では、腎機能の改善と透析の回避、短期生存が確認されました。
「Aponvie」米ヘロン
「Aponvie」は、ニューロキニン1(NK1)受容体拮抗薬aprepitantの注射用乳剤。術後の悪心・嘔吐(PONV)を予防します。投与後すみやかに血中濃度が治療域に到達し、48時間効果が持続します。米国では長らく術後の悪心・嘔吐の予防に経口のaprepitantが使われてきましたが、注射剤の承認により利便性向上が期待されます。
「Pedmark」米フェネック
「Pedmark」(sodium thiosulfate)は、シスプラチン誘発性の聴覚障害のリスクを軽減する米国初の治療薬。局所・非転移性の小児固形がん患者が対象です。シスプラチンによる治療を受けた子どもの6割は難聴になるといいます。欧州でも申請済み。
「Omlonti」参天製薬
選択的EP2受容体アゴニスト「Omlonti」(omidenepag isopropyl)は、UBEと共同開発した開放隅角緑内障・高眼圧症治療薬。EP2受容体刺激作用により、線維柱帯流出路やぶどう膜強膜流出路を介した房水流出を促進して眼圧を下げると考えられています。P3試験では標準療法の1つであるチモロールに対する非劣性が確認されました。日本では「エイベリス点眼液」の製品名で2018年から販売しています。
「Iheezo」スイスSintetica
眼科用ゲル「Iheezo」(chloroprocaine hydrochloride)は、眼科用表面麻酔剤。白内障の手術などに使用します。北米では米Harrowにライセンスを供与しており、同社が販売を行う予定です。
「Relyvrio」米Amylyx
筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬「Relyvrio」は、sodium phenylbutyrateとtaurursodiolの固定用量配合剤。単剤または既存薬との併用で使用されます。プラセボ対照の臨床試験では、身体機能の低下を有意に遅らせることが確認されました。欧州でも申請中です。
「Lytgobi」大鵬薬品工業
FGFR阻害薬「Lytgobi」(futibatinib)は、前治療歴を有する切除不能な局所進行または転移性肝内胆管がんの適応で迅速承認を取得しました。FGFR2融合遺伝子またはその他の再構成を伴う成人患者が対象です。同薬は大鵬薬品が創製した化合物で、日本と欧州でも申請を済ませています。
【適応拡大】「Imfinzi」の胆道がん、「Dupixent」の結節性痒疹など
「Orkambi」米バーテックス
嚢胞性線維症治療薬「Orkambi」(ivacaftor/lumacaftor)は、F508del変異を2つ持つ1歳以上2歳未満の小児に対象を拡大しました。同薬は2015年に米国で承認。今回の承認で、より早期の治療が可能となりました。
「Imfinzi」英アストラゼネカ
免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-L1抗体「Imfinzi」(durvalumab)は、新たに局所進行または転移性の胆道がんに適応拡大。化学療法(gemcitabine+cisplatin)と併用します。P3試験では、化学療法のみを行った患者と比べて死亡リスクを20%低下させました。日本や欧州、オーストラリアなどでも申請中です。
「Retevmo」米イーライリリー
RET阻害薬「Retevmo」(selpercatinib)は、新たに「RET融合遺伝子陽性の局所進行または転移性の固形がん」の適応で迅速承認を取得しました。対象は、全身治療の実施中・実施後に進行し、ほかの治療選択肢がない患者。膵がんや結腸直腸がん、唾液腺がんなどを対象に行った臨床試験結果をもとに承認されました。2020年に迅速承認された「RET融合遺伝子陽性の局所進行または転移性の非小細胞肺がん」の適応でも完全承認を取得しました。
「Dupixent」米リジェネロン
抗IL-4/13受容体抗体「Dupixent」(dupilumab)は、結節性痒疹に適応拡大しました。結節性痒疹は2型炎症による慢性の皮膚疾患。同薬が標的とするIL-4/13は2型炎症で中心的な役割を担うサイトカインとして知られています。承認の根拠となった臨床試験では、プラセボに比べてかゆみや皮膚病変を有意に軽減しました。欧州で申請中で、日本でも今年6月に申請しました。
「Firdapse」米カタリスト
ランバート・イートン筋無力症候群治療薬「Firdapse」(amifampridine)は、6歳以上17歳未満の小児に対象を拡大しました。同薬は経口カリウムイオンチャネル阻害薬で、神経末端からのアセチルコリン放出を促進し、筋肉機能を改善する作用を持っています。成人に対しては2018年に承認を取得。日本では導出先のダイドーファーマが成人を対象としたP3試験を実施中です。
【バイオシミラー】独フレゼニウス カービのpegfilgrastim、韓国セルトリオンのbevacizumab
「Stimufend」独フレゼニウス カービ
「Stimufend」は、米国で6剤目となる米アムジェンの「Neulasta」(pegfilgrastim)のバイオシミラー。欧州でも今年3月に承認されました。
「Vegzelma」韓国セルトリオン
「Vegzelma」は、米ジェネンテックの抗VEGF抗体「Avastin」(bevacizumab)のバイオシミラー。同薬のバイオシミラーは米国で4剤目です。欧州でも承認済み。日本では今年9月、提携先の日本化薬が承認を取得しました。