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ニュース解説

海外新薬承認情報(2022年8月分)

更新日

亀田真由

2022年8月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。

 

【新薬】βサラセミアの遺伝子治療「Zynteglo」や酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症治療薬「Xenpozyme」など

【2022年8月に米FDAが承認した主な新薬】(*=優先審査、★=ブレークスルーセラピー)<製品名(一般名)/社名/適応>Calquence(acalabrutinib/maleate)/英アストラゼネカ/マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、小リンパ球性リンパ腫(錠剤)|Auvelity(dextromethorphan/bupropion)*★/米アクサム/大うつ病性障害(成人)|Zynteglo(betibeglogene/autotemcel)*★/米ブルーバード・バイオ/定期的な赤血球輸血を必要とするβサラセミア(成人、小児)|Xenpozyme(olipudase/alfa)*★/仏サノフィ/酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(成人、小児)|※米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成

 

「Calquence」英アストラゼネカ

BTK阻害薬「Calquence」(一般名・acalabrutinib maleate)は、新たに錠剤が承認されました。再発・難治性のマントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、少リンパ球性リンパ腫を含む承認済みのすべての適応症に使用できます。

 

「Auvelity」米アクサム・セラピューティクス

「Auvelity」は、NMDA受容体拮抗薬dextromethorphan hydrobromideと抗うつ薬bupropion hydrochlorideの徐放性配合錠。成人の大うつ病性障害を対象に承認されました。大うつ病に使用できるNMDA受容体拮抗薬は初めてで、新規作用機序を持つ大うつ病の経口薬は60年以上ぶり。プラセボ対照の臨床試験では、治療開始1週間後からうつ症状を有意に改善しました。

 

「Zynteglo」米ブルーバード・バイオ

「Zynteglo」(betibeglogene autotemcel)は、定期的な赤血球輸血を必要とするβサラセミアに対する遺伝子治療。患者から取り出した造血幹細胞にβグロビン遺伝子を産生するよう遺伝子改変を施して投与するもので、1回の投与で治療が完了します。臨床試験では、同薬を投与した41人の患者のうち89%が定期的な輸血を必要としなくなりました。

 

「Xenpozyme」仏サノフィ

「Xenpozyme」(olipudase alfa)は、酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ASMD)の治療に使用される酵素補充療法製剤。ASMDの非中枢神経系病変に使用します。ASMDはライソゾーム病の1つで、スフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ1の遺伝子変異により生じる疾患。臨床試験では肺機能を改善するとともに、肝容積と脾容積を低下させました。日本では今年3月に世界に先駆けて承認。6月には欧州でも承認済みです。

 

【適応拡大】「Enhertu」のHER2低発現乳がんなど

【2022年8月に米FDAが承認した主な適応拡大】(*=優先審査、★=ブレークスルーセラピー)<製品名(一般名)/社名/適応>Nubeqa(darolutamide)*/独バイエル/転移性ホルモン感受性前立腺がん(+docetaxel)|Enhertu(trastuzumab/deruxtecan)*★/第一三共/HER2低発現の手術不能または転移性乳がん/HER2遺伝子変異を有する切除不能・転移性非小細胞肺がん(迅速承認)|Xofluza(baloxavir/marboxil)/米ジェネンテック/合併症のない発症後48時間以内の急性インフルエンザ感染症治療(5歳以上12歳未満)/インフルエンザウイルス感染曝露後予防(5歳以上12歳未満)|Mirena(levonorgestrel)/独バイエル/使用期間を/8年に延長|Imbruvica(ibrutinib)/米アッヴィ/慢性移植片対宿主病(1つ以上の全身療法に失敗した1歳以上の小児)|Pemazyre(pemigatinib)*/米インサイト/FGFR1遺伝子再構成を有する再発・難治性の骨髄性・リンパ性腫瘍(成人)|Lynparza(olaparib)/英アストラゼネカ【適応取り下げ】gBRCA変異陽性の進行卵巣がん(4thライン以降、成人)|※米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成

 

「Nubeqa」独バイエル

アンドロゲン受容体阻害薬「Nubeqa」(darolutamide)は、転移性ホルモン感受性前立腺がんに適応拡大。抗がん剤docetaxelと併用します。アンドロゲン除去療法(ADT)とdocetaxelの併用療法に対する上乗せを検証した臨床第3相(P3)試験では、全生存期間を有意に延長しました。「プロジェクトOrbis」のもと、各国で審査が行われています。

 

「Enhertu」第一三共

抗HER2抗体薬物複合体(ADC)「Enhertu」(trastuzumab deruxtecan)は、2つの適応で新たに承認を取得しました。承認されたのは、「転移再発で化学療法を受けたHER2低発現の手術不能または転移性乳がん」と「全身治療歴のある活性化HER2遺伝子変異を有する切除不能・転移性非小細胞肺がん」。いずれの適応でも抗HER2療法は初めて。HER2低発現乳がんでは、「プロジェクトOrbis」のもとオーストラリア、カナダ、スイス、ブラジルでも審査中です。

 

「Xofluza」米ジェネンテック

塩野義製薬創製の抗インフルエンザウイルス薬「Xofluza」(baloxavir marboxil)は、5歳以上12歳未満の小児を対象に、「合併症のない発症後48時間以内の急性インフルエンザ感染症治療」と「インフルエンザウイルス感染暴露後予防」に適応拡大。海外で小児患者を対象に行われたP3試験と、日本で予防効果を検証したP3試験の結果をもとに承認されました。米国では2018年に12歳以上を対象に承認。欧州でも小児適応で申請中です。

 

「Mirena」独バイエル

避妊薬「Mirena」(levonorgestrel)は、使用期間が7年から8年に延長されました。承認の根拠となった臨床試験では、8年目まで高い避妊効果が認められました。欧州でも申請を済ませています。

 

「Imbruvica」米アッヴィ

BTK阻害薬「Imbruvica」(ibrutinib)は、慢性移植片対宿主病の適応で、1つ以上の全身療法に失敗した1歳以上の小児に対象を拡大しました。成人に対しては2017年に承認を取得。小児適応では、47人の患者を対象に行ったP1/2試験の結果をもとに承認されました。

 

「Pemazyre」米インサイト

FGFR阻害薬「Pemazyre」(pemigatinib)は、FGFR1遺伝子再構成を有する再発・難治性の骨髄性・リンパ性腫瘍への適応拡大が承認されました。同薬は20年に米国で、21年に日本と欧州で胆道がん(胆管がん)治療薬として承認。日本では今年8月、FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性・リンパ性腫瘍への適応拡大申請を行いました。

 

【バイオシミラー】米コヒラスのranibizumab

【2022月8月に米FDAが承認したバイオシミラー】<製品名(一般名)/社名/適応>Cimerli(ranibizumab)/米コヒーラス/加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症後の黄斑浮腫、糖尿病黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、近視性脈絡膜新生血管|※米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成

 

「Cimerli」米コヒーラス・バイオサイエンシズ

眼科用VEGF阻害剤「Cimerli」は、米ジェネンテックの「Lucentis」(ranibizumab)のバイオシミラー。Lucentisが持つ5つの適応症すべてで使用できます。米コヒーラスにとってバイオシミラーの承認は3剤目です。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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