2020年に日本と米国、欧州で承認された主な新薬などを領域別にまとめました。2 回目は「血液」「眼科」「皮膚」「感染症」「ワクチン」「その他」です。(1回目はこちら)
血液
米バイオクリストの血漿カリクレイン阻害薬「オラデオ」は、世界初となる遺伝性血管性浮腫の発作抑制薬として米国で承認。日本では先駆け審査指定制度の対象品目に指定されており、今年1月に承認されました。欧州でも申請中です。
米ライジェルが創製したチロシンキナーゼ阻害薬「Tavalisse/Tavlesse」は、慢性免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病)治療薬。欧州では提携先のスペイン・グリフォルスが販売中です。日本ではキッセイ薬品工業が臨床第3相(P3)試験を進めています。
武田薬品工業は、シャイアー買収で獲得したフォン・ヴィレブランド病治療薬「ボンベンディ」の承認を日本で取得しました。
眼科
眼科領域では、米国初となる甲状腺眼症治療薬「Tepezza」(アイルランド・ホライズン)が承認されました。同薬はデンマーク・ジェンマブが創製した抗IGF-1R抗体。後天性眼瞼下垂では、米オスモティカの直接作用型αアドレナリン受容体作動薬「Upneeq」が初の治療薬として米国で承認を取得しました。日本や欧州では、販売権を持つ参天製薬が今後開発を進める予定です。
加齢黄斑変性治療薬の抗VEGF抗体「ベオビュ」(スイス・ノバルティス)は、19年の米国に続いて日本と欧州で承認を取得しました。既存薬よりも維持期の投与間隔が長く、患者負担の軽減が期待され、日本やドイツでの立ち上がりは好調といいます。
皮膚
アトピー性皮膚炎を対象に、外用JAK阻害薬「コレクチム」(日本たばこ産業)が世界に先駆けて日本で承認されました。海外では皮膚領域に強いデンマーク・レオファーマがP2試験を進めています。米イーライリリーの経口JAK阻害薬「オルミエント」も昨年、日本と欧州でアトピー性皮膚炎に適応拡大しました。アトピー性皮膚炎では、米ファイザーの外用剤「Staquis/Eucrisa」も欧州で承認。日本ではP3試験が進行中です。
米国では、伊カシオペアの尋常性ざ瘡(にきび)治療薬「Winlevi」が承認。同薬はアンドロゲン受容体阻害薬で、にきび治療薬としては約40年ぶりの新規作用機序を持つ薬剤となりました。
感染症
感染症領域では、独MYRファーマシューティカルズの慢性B型/D型肝炎治療薬「Hepcludex」が欧州で承認されました。特にD型肝炎に対するファースト・イン・クラスの治療薬として期待されており、米国でも21年上期に申請予定。ウイルス性肝炎に注力する米ギリアドは昨年末、MYRの買収を発表しており、今後はギリアドの販売網で同薬を展開していくとみられます。
新型コロナウイルス感染症治療薬としては、ギリアドの「ベクルリー」が日米欧で承認。米国では、イーライリリーの中和抗体バムラニビマブや、米リジェネロンの抗体カクテル製剤カシリビマブ/イムデビマブに緊急使用許可が出されています。
感染症領域ではこのほか、エボラウイルス感染症に対する米リジェネロンの抗体カクテル製剤「Inmazeb」や、英ヴィーブヘルスケアの多剤耐性HIV感染症治療薬「Rukobia」、米Amivasの重症マラリア治療薬「Artesunate」などが米国で承認されました。
ワクチン
米メルクの9価HPVワクチン「シルガード9」が、申請から5年越しに日本で承認。日本ではまた、同社の4価HPVワクチン「ガーダシル」が接種対象を男性に拡大しました。
新型コロナウイルス感染症のワクチンとしては、ファイザーと独ビオンテックが開発したmRNAワクチン(欧州製品名・Comirnaty)と、米モデルナのワクチンが米国や欧州などで条件付き承認や緊急使用許可を取得。ファイザーは日本でも昨年12月に申請しており、今年2月ごろの承認が見込まれています。
その他
米アッヴィの関節リウマチ治療薬のJAK阻害薬「リンヴォック」は、19年の米国と欧州に続いて日本でも承認。ギリアドの同「ジセレカ」は、日本と欧州で承認を取得しましたが、米国ではFDA(食品医薬品局)が承認を見送っています。
欧州で承認された米ヘロン・セラピューティクスの術後疼痛治療薬「Zynrelef」は、局所麻酔薬bupivacaineと、同薬の効果を増強する低用量の非ステロイド性抗炎症薬メロキシカムの固定用量配合剤。米国でも申請中です。
ノバルティスの気管支喘息治療薬「エナジア」は日本と欧州で承認を取得。エナジアは気管支喘息では世界初となる長時間作用性β2刺激薬/長時間作用性抗コリン薬/吸入ステロイドの3剤配合剤です。あわせて、長時間作用性β2刺激薬と吸入ステロイドの2剤配合薬「アテキュラ/Bemrist」も承認を取得しました。
このほか、米ユーロバント・サイエンシズの過活動膀胱治療薬「Gemtesa」が米国で承認。同社を傘下に持つ大日本住友製薬は、ピーク時に500億円を超える売り上げを期待しています。日本では18年に杏林製薬が「ベオーバ」の製品名で承認を取得。キッセイ薬品工業と共同販売しています。
(亀田真由)
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
・武田薬品工業
・キョーリン製薬ホールディングス(杏林製薬/キョーリンリメディオ)
・参天製薬
・塩野義製薬
・大日本住友製薬