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【展望2021】毎年薬価改定、市場直撃…新型コロナ、国内でもワクチン接種へ

更新日

コロナ禍の真っ只中で迎えた2021年。国内でも春ごろからワクチンの接種が始まる見込みで、コロナ克服への期待が高まります。一方、4月には初の「中間年改定」が行われ、薬価の毎年改定がスタート。市場は大きな打撃を受けることとなり、企業経営にも大きな影響を与えそうです。

 

薬剤費4300億円削減

毎年改定の初年度となる2021年度の薬価改定は、昨年の薬価調査で乖離率(市場実勢価格と薬価の差)が5%を超えた1万2180品目を対象に行われることが決まりました。改定の範囲は、薬価収載されている品目全体の69%に及び、これによって削減される薬剤費は4315億円。再算定や新薬創出加算の返還など、追加的な引き下げルールは適用されないものの、製薬業界関係者からは「改定の範囲が想定していた以上に広く、これでは通常の全面改定と変わらない」との声も漏れます。

 

【21年度薬価改定の対象品目と影響】 ■対象品目の範囲…乖離率5%超の品目 ■新型コロナウイルス特例…引き下げ幅を0.8%分緩和 ■改定による薬剤費削減額…▲4315億円(国費は▲1001億円) <▼改定品目数と割合> 全体/1万2180品 |新薬(新薬創出加算品を含む)/1350品目59% |新薬創出加算品/240品目40% |長期収載品/1490品目88% |後発品/8200品目83% |※中医協総会(2020年12月18日)の資料をもとに作成

 

特に大きな影響を受けるのが、長期収載品と後発医薬品です。収載品目全体に対する改定対象品目の割合をカテゴリ別に見ると、新薬(後発品のない先発医薬品)は59%(うち新薬創出加算品は40%)の一方、長期収載品は88%、後発品は83%と、ほとんどの品目が改定を受けることになります。

 

後発品をめぐっては、昨年、品質問題によって大規模な自主回収が相次ぎ、小林化工の抗真菌薬「イトラコナゾール錠50『MEEK』」にベンゾジアゼピン系睡眠薬が混入した問題では、服用した180人以上に死亡を含む健康被害が出ました(昨年12月25日時点)。後発品への信頼を揺るがした同社の責任は大きいですが、一方で、問題の構造的な背景として度重なる薬価の引き下げを指摘する声も聞かれます。

 

日本ジェネリック製薬協会は今回の改定について「後発品の安定供給に大きな影響を及ぼし、ひいては医療の効率化につながらないことが懸念される」と指摘。すでに薬価が製造原価を下回っている後発品も少なくない中、毎年改定はそうした品目を増やす可能性があります。供給や品質を維持できなくなる企業も出てきかねず、淘汰や再編の引き金になるかもしれません。

 

国内市場は緩やかなマイナスに

IQVIAによると、毎年改定による医療費の削減額は2020~25年度で3兆円以上に上る見込み。新型コロナウイルスによる受療行動の変化も当面は続くと予測され、国内の医薬品市場は緩やかなマイナス成長となる見通しです。

 

【国内医療用医薬品市場の推移と予測】(20年度と25年度は予測): 10年度/9.27兆円 |15年度/11.16兆円(CAGR=3.8%) |20年度/10.60~80兆円(CAGR=▲0.9~▲0.7%) |25年度/10.41~61兆円(CAGR=▲0.9~0.1%) |※CAGR=年平均成長率 |※IQVIA調べ

 

日本製薬団体連合会など日米欧の製薬団体は、21年度薬価改定について「わが国の薬価制度の予見性を著しく毀損するもので、到底納得できるものではない」と指摘。長期収載品への影響も大きく、大手新薬メーカーを中心に、今後も売却の動きは続きそう。長期収載品に収益を頼る中堅製薬企業にとっては、生き残りをかけた正念場となります。

 

デジタルヘルスや未病ビジネスなど、新規事業の創出に向けた動きはさらに活発化するでしょう。昨年は、フィットネスサービスに参入したアステラス製薬や、介護・認知症の分野を中心に外部と相次いで提携を結んだ東和薬品などの動きが目立ちました。あすか製薬と沢井製薬は今年、持ち株会社体制に移行する予定。両社とも、新規事業の育成・強化を目的の1つに掲げています。

 

コロナワクチン 2月にも接種開始

国内で20万人以上が感染し、3000人以上の死者を出している新型コロナウイルス感染症は、ワクチン接種の開始で国内でも大きな転機を迎えます。

 

ファイザーは昨年12月、特例承認を求めて独ビオンテックと共同開発したmRNAワクチンを申請。政府は2月下旬の接種開始を目指しており、▽医療従事者(400万人)▽65歳以上の高齢者(3600万人)▽基礎疾患のある人(820万人)、高齢者施設で働く人(200万人)、60~64歳の人(750万人)――の順で接種を行う方向です。

 

日本政府は、ファイザーから今年6月までに1億2000万回分(6000万人分)の供給を受けることで合意しているほか、米モデルナから9月までに5000万回分(2500万人分)、英アストラゼネカからは今年初頭以降1億2000万回分(6000万人分)の供給を受けることになっています。

 

国内メーカーでは、アンジェスと塩野義製薬が臨床試験を実施中、KMバイオロジクスや第一三共、IDファーマも春にかけて臨床試験に入る予定です。ただ、有効なワクチンの接種が始まれば、臨床試験の実施が難しくなる可能性があり、国産ワクチン実用化の見通しはまだはっきりしません。

 

【新型コロナウイルスワクチンの国内開発状況】: <臨床試験前> KMバイオロジクス(不活化)/第一三共(RNA)/IDファーマ(ウイルスベクター)/モデルナ(RNA)/ノババックス(組換えタンパク) |※モデルナとノババックスのワクチンは武田薬品工業が日本での供給を狙う <P1/2> アストラゼネカ(ウイルスベクター)/ヤンセン(ウイルスベクター)/塩野義製薬(組換えタンパク) <P2/3> アンジェス(DNA) <申請> ファイザー(RNA) 【日本への供給量】 ▼ファイザー/今年上半期に1億2000万回分(6000万人分) ▼アストラゼネカ/今年初頭から1億2000万回分(6000万人分)うち3000万回分は1~3月に供給 ▼モデルナ/今年前半から5000万回分(2500万人分) |※各社の発表などをもとに作成

 

仮にワクチンによって感染拡大が収束に至ったとしても、新型コロナウイルスがもたらした変化が完全に元に戻ることはなさそうです。特にデジタル化は、営業や研究開発といった医薬品ビジネスのあらゆる局面で機運が高まっており、効率化によってMRの削減が進むとの見方もあります。

 

片頭痛に3つの抗体医薬が登場へ

国内では今年も、注目の新薬が続々と登場する見通しです。

 

がん領域では、2019年5月承認の「キムリア」に続く、2剤目、3剤目のCAR-T細胞療法が承認される見込み。アキシカブタゲン シロルユーセル(第一三共)とリソカブタゲン マラルユーセル(ブリストル・マイヤーズスクイブ)で、前者は昨年12月、厚生労働省の部会で承認が了承されました。

 

インサイト・ジャパンはFGFR阻害薬ペミガチニブの承認を取得する見込みで、日本での自社販売に乗り出します。エピジェネティックな作用機序を持つタゼメトスタット(エーザイ)やツシジノスタット(フヤ・ジャパン)なども承認される見通しです。

 

【今年承認が見込まれる主な新薬】(品名/社名/対象疾患/モダリティ/作用機序) アキシカブタゲン シロルユーセル/第一三共/リンパ腫/CAR-T細胞療法 |リソカブタゲン マラルユーセル/ブリストル/リンパ腫/CAR-T細胞療法 |タゼメトスタット/エーザイ/リンパ腫/EZH2阻害薬 |ペミガチニブ/インサイト/胆管がん/FGFR阻害薬 |ガルカネズマブ/イーライリリー/片頭痛予防/抗CGRP抗体 |フレマネズマブ/大塚製薬/片頭痛予防/抗CGRP抗体 |エレヌマブ/アムジェン/片頭痛予防/抗CGRP受容体抗体 |リスジプラム/中外製薬/脊髄性筋委縮症/SMN2スプライシング修飾薬 |イメグリミン/大日本住友製薬/2型糖尿病/ミトコンドリア機能改善薬 |ギボシラン/アルナイラム/急性肝性ポルフィリン症/RNAi核酸医薬 |※各社の発表などをもとに作成

 

中枢神経系領域では、CGRPを標的とした片頭痛治療薬として、▽日本イラーリリーのガルカネズマブ▽大塚製薬のフレマネズマブ▽アムジェンのエレヌマブ――の3つの抗体医薬が承認の見込み。スプライシングを修飾する低分子リスジプラム(中外製薬)は、脊髄性筋萎縮症に対する初の経口薬として注目されています。エーザイとバイオジェンはアルツハイマー病を対象に抗アミロイドβ抗体アデュカヌマブを申請中。米FDA(食品医薬品局)の諮問委員会が承認に否定的は見解を示していますが、日本ではどのような判断がなされるのでしょうか。

 

今年はほかにも、新規作用機序の糖尿病治療薬イメグリミン(大日本住友製薬)や、急性肝性ポルフィリン症治療薬のRNAi核酸医薬ギボシラン(アルナイラム・ジャパン)、新規のPTH製剤アバロパラチド(帝人ファーマ)などが承認される見込みです。

 

(前田雄樹)

 

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