厚生労働省は3月5日、4月に行う2020年度薬価改定を告示した。改定率は薬剤費ベースでマイナス4.38%。新設された効能変化再算定の特例が適用された抗IgE抗体「ゾレア」(ノバルティスファーマ)は37.3%の引き下げとなる。新薬創出・適応外薬解消等促進加算を受けたのは335成分555品目で前回改定並みだった。
特例拡大再算定のキイトルーダ 20.9%引き下げ
昨年12月の適応拡大の承認に伴って主たる効能が「気管支喘息」から「季節性アレルギー性鼻炎」と判断され、効能変化再算定の特例の適用を受けたゾレアは、75mgシリンジが2万3625円から1万4812円に、150mgシリンジが4万6490円から2万9147円に引き下げられる。
効能変化再算定は、主たる効能に変更があった医薬品の薬価を、薬理作用が類似した薬に近づくよう引き下げるルール。従来は変更後の効能に類似薬がない場合は対象とならなかったが、20年度薬価制度改革で特例が新設され、類似薬がなくても「適応の変更に伴って患者数が最大10倍以上に拡大する」などの要件に該当すれば適用が可能となった。
MSDの免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」は、市場拡大再算定の特例によって20.9%の引き下げ。同じく市場拡大再算定の特例の適用を受けた第一三共の抗凝固薬「リクシアナ」は25.0%の引き下げとなった。
通常の市場拡大再算定の対象となったのは14成分40品目。ファイザーの「ビンダケル」とアストラゼネカの「フェソロデックス」が25.0%の引き下げとなるほか、サノフィの「デュピクセント」が20.2%、中外製薬の「アクテムラ」が18.5%引き下げられる。
新薬創出加算は前回改定並み
新薬創出加算の対象品目は335成分555品目で、昨年10月の前回改定(339成分591品目)からほぼ横ばい。加算を受けた企業は84社で、加算を満額受けられる「区分I」は21社、1割減となる「区分II」は55社、2割減となる「区分III」は8社だった。加算を受けた製品が最も多かったのは24成分46品目のノバルティス。次いで多かったのは21成分28品目のサノフィで、ファイザー(19成分35品目)、ヤンセンファーマ(19成分29品目)、MSD(12成分20品目)と続いた。
一方、後発医薬品の発売などで新薬創出加算を返還するのは52成分120品目。中外製薬の「アバスチン」や協和キリンの「ネスプ」などが含まれる。加算の総額は770億円で2年前の18年度改定から40億円減少した一方、加算の返還額は750億円で100億円増えた。
後発品の発売から10年たった長期収載品の薬価を引き下げるルールでは、「G1」を70成分169品目、「G2」を124成分262品目に適用。基礎的医薬品の薬価を維持するルールは306成分763品目が対象となった。
「真の臨床的有用性の検証に係る加算」が適用されたのは、SGLT2阻害薬「フォシーガ」(アストラゼネカ)と同「カナグル」(田辺三菱製薬)、抗PCSK9抗体「プラルエント」(サノフィ)の3成分5品目。小児適応の取得による加算は6成分13品目、希少疾病の適応取得による加算は6成分14品目に適用された。