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ニュース解説

【骨粗鬆症】骨形成促進薬「切り札」から「最初の治療」に―抗体医薬イベニティ登場で治療はどう変わる?

高齢化に伴って患者が増える骨粗鬆症。3月、骨吸収の抑制と骨形成の促進という2つの作用を併せ持つ、これまでにない新しい治療薬が発売されました。一方、これまで骨形成促進作用を持つ唯一の薬剤だった副甲状腺ホルモン(PTH)製剤には、後発医薬品やバイオシミラーの参入が近づいています。

 

骨形成を促進し 骨吸収を抑制

骨粗鬆症は、破骨細胞が古くなった骨を壊して(骨吸収)、骨芽細胞が新しい骨を作る(骨形成)という骨の新陳代謝(骨代謝)のバランスが崩れ、骨吸収が骨形成を上回ることで起こる疾患です。日本骨粗鬆症学会などが作成した「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版」によると、国内の患者数は推定1280万人(男性300万人、女性980万人)。高齢化により、患者は今後も増えると予想されています。

 

アステラス・アムジェン・バイオファーマとアステラス製薬は3月4日、骨粗鬆症に対する新しい治療薬として抗スクレロスチン抗体「イベニティ」(一般名・ロモソズマブ)を発売しました。骨折の危険性が高い患者が対象で、1回210mg(シリンジ2本)を月1回、12カ月間皮下注射により投与します。

 

「イベニティ」の概要。製品名:イベニティ皮下注105mrシリンジ。一般名:ロモソズマブ(遺伝子組み換え)。作用機序:抗スクレロスチン抗体。効能・効果:骨折の危険性の高い骨粗鬆症。用法・容量:ロモソズマブとして210mgを1カ月に1回、12ヶ月皮下投与する。薬価:シリンジ1本2万4720円(1日あたり1625円)。承認日/発売日:2019年1月8日/2019年3月4日。ピーク時売上高予測:329億円(発売10年度)。製造販売:アステラス・アムジェン・バイオファーマ。販売:アステラス製薬。(アステラス・アムジェンのプレスリリースと中医協資料をもとに作成)

 

イベニティが標的とする「スクレロスチン」は骨細胞から分泌され、骨芽細胞による骨形成を抑制し、破骨細胞による骨吸収を促進する糖タンパク質。イベニティは、スクレロスチンに結合してその働きを阻害することで、骨形成を促進し、骨吸収を抑制します。骨形成促進と骨吸収抑制という2つの作用を持つ骨粗鬆症治療薬は初めてで、この「デュアル・エフェクト」が同薬の最大の特徴です。

 

中央社会保険医療協議会の資料によると、イベニティのピーク時の予測売上高は329億円(薬価ベース)。デュアル・エフェクトを武器に大型薬に成長すると予想されています。

 

専門医「イベニティ→BPまたは抗RANKL抗体」

骨粗鬆症治療で主に使われる薬剤には、大きく分けて
骨吸収を抑制する薬剤…ビスホスホネート製剤(BP)、抗RANKL抗体、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)
骨形成を促進する薬剤…副甲状腺ホルモン製剤(PTH)
骨に不足している栄養素を補う薬剤…カルシウム製剤、活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤
があります。

 

イベニティが対象とする「骨折の危険性の高い骨粗鬆症」では、これまで唯一の骨形成促進薬だったPTHが広く使われてきました。PTHは現在、日本イーライリリーの「フォルテオ」(テリパラチド)と旭化成ファーマの「テリボン」(テリパラチド酢酸塩)が販売されており、年間売上高はフォルテオが493億円(17年12月期、薬価ベース)、テリボンが268億円(18年3月期)に達します。

 

国内で販売中の主な骨粗鬆症治療薬。以下、項目:製品名(先発医薬品):社名:売上高/億円(16年度:17年度:18年度)。PTH:フォルテオ:イーライリリー:(488:493:-)。PTH:テリボン:旭化成ファーマ:(239:268:-)。抗スクレロスチン抗体:イベニティ:アステラス・アムジェン:(ー:-:-)。BP:ポノテオ*:アステラス製薬:(138:133:88)。BP:リカルボン*:小野薬品工業:(133:109:75)。BP:ボナロン*:帝人ファーマ:(116:109:-)。BP:アクトネル*:エーザイ:(56:-:-)。BP:ベネット*:武田製薬工業:(83:-:-)。BP:ボンビバ:中外製薬:(73:87:94)。BP:ボンビバ:大正製薬:(59:65:73)。リクラスト:旭化成ファーマ:(4:11:-)。抗RANKL抗体:プラリア:第一三共:(180:232:270)。SERM:エビスタ*:イーライリリー:(131:97:-)。SERA:ビビアント:ファイザー:(ー:-:-)。活性型ビタミンD3:エディロール:中外製薬:(267:296:329)。活性型ビタミンD3:エディロール:大正製薬:(226:254:260)。*は後発品が発売。ボノテオ/リカルボンとアクトネル/ベネットはそれぞれ同一成分。売上高の18年度は予想(中外のみ18年12月後期実績)。フォルテオは薬価ベース。(各社の決算発表資料をもとに作成)

 

最後の切り札だったPTH

強力な骨強度増加作用と高い骨折予防効果で、骨粗鬆症の治療に大きな変化をもたらしたPTHですが、生涯で最長2年間しか使えないことが課題でした。投与開始後、骨形成の亢進に遅れて骨吸収も亢進するためで、「これまでは、まず骨吸収抑制薬で治療し、最後の切り札として骨形成促進剤を使用するという治療だった」(アステラス・アムジェン研究開発本部の浜谷越郎シニアメディカルアドバイザー)といいます。

 

一方、イベニティは骨形成を促進すると同時に骨吸収を抑制するので、徳島大藤井節郎記念医科学センター顧問の松本俊夫医師は「骨の構造的劣化を来さずに骨量を増加させ、骨強度の改善が期待できる」と指摘。臨床試験では、イベニティ投与後に抗RANKL抗体デノスマブ(製品名・プラリア)やBPを投与することで高い骨折抑制効果が示されており、宮内クリニック理事長の宮内章光医師は「高リスク患者では、最初にイベニティを投与して骨折の危機を回避し、その後、デノスマブやBPなどで維持するという治療が推奨される」と話します。

 

後発品参入が近づくPTHの位置付けは?

イベニティの登場で骨粗鬆症の治療は大きく変わるとみられますが、PTHの治療上の位置付けはどうなるのでしょうか。

 

宮内医師は「これ(イベニティ)でPTHがすべて置き換わるということではない」としながらも、使い方については今後の検討課題だといいます。月1回投与のイベニティに対して、フォルテオは連日自己注射、テリボンは週1回投与ということもあり、骨形成促進薬としてのポジションはイベニティに奪われていくことになりそうです。

 

テリボンのAGが承認 フォルテオにはバイオシミラー

PTHは後発医薬品やバイオシミラーの参入も控えており、旭化成ファーマは今年2月、子会社を通じてテリボンのオーソライズド・ジェネリック(AG)の承認を取得。フォルテオには、持田製薬がバイオシミラーを開発しており、申請が近付いているとみられます。

 

調査会社の富士経済によると、骨粗鬆症治は今後、高齢化に伴って患者数は増加する一方、BPを中心に後発品の使用が広がることで、市場は全体として停滞する見通し。新薬の登場と大型薬への後発品・バイオシミラーの参入で、マーケットも大きく変化していくことになりそうです。

 

(前田雄樹)

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