CRA(臨床開発モニター)とは
製薬業界で活躍するCRA(臨床開発モニター)は、製薬メーカーの新薬開発に欠かせない治験において重要な役割を担う仕事。ここでは、CRAとは何か、勤務スタイルや存在意義などを解説します。
製薬業界で活躍するCRA(臨床開発モニター)は、製薬メーカーの新薬開発に欠かせない治験において重要な役割を担う仕事。ここでは、CRAとは何か、勤務スタイルや存在意義などを解説します。
CRA(Clinical Research Associate/臨床開発モニター)とは、新しい薬を製品化する上で不可欠なテスト「治験(臨床開発試験)」が適切に行われているかモニタリング(監視)する仕事です。CRAは開発中の薬を実際の患者(被験者)に投薬する治験の場で、症例データの収集や進捗状況の管理を担います。
CRAが集めたデータは、薬の有効性や安全性の証明に使われます。
薬は治験によって安全性や有効性を立証し、国の承認を得てはじめて患者の元に届けられます。CRAは製薬メーカーと医療現場との橋渡しをする、重要な存在なのです。
CRAの仕事内容についてもっと詳しく知りたい人は
治験とは、病院など臨床現場で実際の患者(被験者)へ投薬し、新薬の有効性と安全性を最終確認するテストのこと。3段階にわたって、各々2~3年程度の期間で実施するのが一般的です。
CRAの大きな役割は薬の安全性と有効性を証明する症例データを収集すること。どんなに画期的な技術が用いられ、理論上は効果があるとされる薬でも、実際の効果や人体への影響、安全性がわからない限り、患者に用いることはできません。
1980年代に起こった薬害エイズ問題は、人命を救うはずの薬が患者に重篤な悪影響を及ぼした事例として、世界中に大きな衝撃を与えました。それ以来、治験にはより慎重さが求められています。CRAが収集するデータは、患者が安心して薬を使用するために欠かせない重要な情報なのです
基礎研究 2~3年
病気を治す可能性がある物質を探したり、薬の元となる物質を作製したり、薬物の候補となる物質のスクリーニングを行います。
非臨床試験 3~5年
基礎研究によってできた薬物の有用性や安全性を動物実験で確認します。
治験(臨床開発試験) 3~7年
承認申請 1~2年
厚生労働省(医薬品医薬機器総合機構)に承認を得ると、製造・販売が開始します。
CRAは新しい薬をいち早く世に送り出すのにも重要な役割を果たします。元々日本では諸外国に比べて新薬の開発から承認までに時間がかかる傾向があり(ドラッグラグ)、1日でも早く患者に製品を届けるために治験のスピード化が求められていました。近年は、法改正とCRAのすみやかな治験進行によって、ドラッグラグが解消されつつあります。
とはいえ、治験のさらなるスピード化は引き続き重要な課題です。2010年以降大型新薬の特許切れが相次ぎ、製薬メーカー各社で新たな収益の柱となる新薬の開発が活性化しているためです。CRAのすみやかな治験進行には、さらなる期待が寄せられています。
CRAの年収は手当を含めて400万円~800万円程度。初年度の年収は、手当を含めて400万円~500万円台前半です。年代別の平均年収は20代後半507万円、30代前半608万円、30代後半693万円、40代以上799万円です。
※Answersによる調査結果をもとに作成(調査期間:2016年4月~2017年12月、有効回答数:N=510)
CRAの年収についてもっと詳しく知りたい人は
CRAの仕事には外勤(医療機関を訪問)と内勤(報告書の作成など)の両方があります。
会社や担当する案件によって違いはありますが、平均すると残業時間は月平均20~30時間程度、土日祝日に休む働き方になります。
CRAの働き方について詳しく知りたい人は
医薬品開発に携わるCRAは、製薬メーカーもしくはCRO(Contract Research Organaization/開発業務受託機関)のどちらかで働くのが一般的。CROは製薬メーカーの治験を受託・代行する専門企業です。
日本での医薬品開発は、製薬メーカーで行うのが一般的でしたが、近年は製薬メーカーが人手とノウハウを求めてCROにモニタリング業務を委託するスタイルが主流です。
背景にあるのは、1997年の薬事 法改正に伴う治験の厳格化や新薬の作用の複雑化。治験の難易度は年々上がる一方、治験のスピードアップやコストダウンを求める風潮も強いため、CROの人手とノウハウが製薬メーカーの新薬開発に欠かせないものとなっています。
バイオベンチャー(バイオテクノロジーを用いて医療にかかわる先端技術を研究開発する企業)や医療機器メーカーにも、CRAが存在します。
最近は、再生医療等製品や新しい医療機器など治験が必要な製品の開発が活性化しているため、バイオベンチャーや医療機器メーカーで活躍するCRAが増えています。
転職・求人トレンドについて詳しく知りたい人は
CRAになるには、新卒として製薬メーカーやCROに入社するか、転職してCROに入社するかの選択肢があります。
CRAに転職できるのは、看護師やMR、薬剤師など、医療関連のバックグラウンドを持った人が中心。企業によっては、臨床検査技師や獣医、栄養士、理系大学出身者などをターゲットに募集を行うケースもあります。
未経験からCRAに転職する詳しい方法を知りたい人は
CRAは主に製薬メーカーの代表者として、治験担当医とコミュニケーションを取りながら治験の適切な実施をモニタリングします。対するCRC(Clinical Research Coordinator/治験コーディネーター)は、SMO(Site Management Organization/治験施設支援機関)に勤め、医師・被験者・製薬メーカーの三者を取り持つのが役目です。
特に被験者に対しては、治験薬の説明や診察や検査への立ち会い、治験中の相談など、安心して治験に参画できるよう、メンタルケアやサポートを行います。
CRAの場合は直接被験者とコンタクトを取ることはないため、患者との折衝よりも薬の知識や臨床知識を活かしたいという人に選ばれています。
CRAは治験をモニタリングする仕事を担う、新薬開発に欠かせない存在です。主に製薬メーカーや治験を受託・代行するCROに在籍し、薬の安全性を支えることはもちろん、ドラッグラグの解消という大きな役割を果たしています。
CRAの年収は400万円~800万円が相場。平日の日中に働き、土日祝日に休むのがよくある勤務スタイルです。
CRAになるには、新卒として製薬メーカーやCROに入社するか、転職してCROに入社するかの選択肢があります。