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第3回 CRAと治験と医学統計の身近な関係(2) 正しい実施計画(プロトコール)とは?

[ 2014年02月05日(水) ]

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臨床開発モニターのみなさんが取り扱う「治験実施計画書」において、治験の目的やデザイン、方法の正しさを支えているものこそが、医学統計の考え方だということをお話しました。 つまり、医学統計を学ぶことで、治験計画書への理解が深まり、自分がかかわる「治験実施計画書にも、より自信を持つことができるのです。

ただ、まだそのことにピンと来ていない部分もあると思いますので、今回はちょっと違った視点から、治験と医学統計の関係について考えましょう。

ここでは、治験をテレビ番組での実験に置き換えて、話をしますね。

以前、テレビの健康番組の内容が問題になったことがありました。 仮にこんな番組があったとしましょう(図1)。

さて、さくらさんに質問です。 本当にこの実験でこのドリンクの疲労回復作用が証明されたことになりますか?

『うーん、証明されてない…で……』

正解です。さすがですね。

『疑り深い性格ですからw』

では、何が問題なのでしょう。

『え、それは…。うーん。』

なんとなく根拠が曖昧だなと思っても、どこが問題かといわれると、意外に難しくなると思います。

では、ちょっと考えてみましょう。 乳酸値の検査や医師の問診などが入っているので惑わされてしまいますが、飲んだ、治った、ゆえに効いたの、三段論法です。この「効いた」という結論の前提条件である「治った」が科学的な証明でないことはわかるでしょう? たとえば、麦飯を食べたら動脈硬化が改善したとか、たまねぎの汁を飲んだら血糖値が下がったとかいういわゆる民間療法はこの理論です。

もとより、被験者が3人という少人数では、個人差が大きく出てしまいます。 また、乳酸値が下がったのには健康ドリンク以外の原因があるかもしれません。 テレビ局の番組ということも手伝って、プラセボ効果も十分にあるでしょう。 そもそも、医薬品ならいざ知らず、健康ドリンクで短期間に劇的な効果があらわれることはありませんので、調査期間が短すぎます。 そして、最も大事な点、ドリンクを飲んでいる人でしか実験していないことが問題です。同じドリンクを飲んだ場合と飲まなかった場合とを同時に比較する必要があるでしょう。

図2にこの実験の問題点をまとめてみました。

これでは到底、この結果を信頼し、本当にこの実験でこの健康ドリンクの疲労回復作用が証明されたということはできません。 冷静に考えて、こんな「治験実施計画書」を持って、治験のお願いをしに行けるでしょうか?

『うーん…これは、テレビだし、治験じゃありませんし。』

ドクターが患者さんのために吟味するさまざまな医学論文も、テレビの健康情報番組でも、みなさんが取り扱う治験実施計画書も、考え方は一緒なんです。 被験者は十分でしょうか? 薬剤以外の原因は考えられませんか? プラセボ効果は? 調査期間は十分ですか?…などなど、実は見るべきポイントは、さして変わらないのです。

『なるほど。私たちモニターが担当している治験の結果も、こんな風に分析されることがあるんですね。』

そうなんです。 この見るべきポイントを身につける、ということが、はじめの一歩です。

情報を得る立場からすれば、薬の添付文書も、医学論文も、健康情報番組も、誰かが調査しまとめたものを、見たり読んだりすることに変わりはありません。 テレビ局の人間がスポンサーのために出したデータであれ、CRAが収集した治験のデータであれ、研究者が長い年月をかけて調査した臨床試験のデータであれ、与えられたものを読み解く能力こそが、必要なのです。

みなさんが、正しい実施計画で、臨床試験が実施され、その論文が作成されているかどうかを読み解く知識=医学統計の考え方を身につけておけば、実施計画書をドクターに説明する際の信頼向上につながるはずです。

『なるほど。私たちが信頼を作るためにも、医学統計を知っておいた方がいいというわけですね。』

その通りです。まわりくどい説明で申し訳ありません。 そして、論文などを読むために必要な医学統計の知識とは、数式を覚えることではないこともおわかりいただけたと思います。 統計に対する先入観もそろそろとれてきたでしょうから、次回からは論文を読み解くために必要な医学統計の概念や考え方を理解していくことにします。

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