国内製薬各社の2025年3月期第1四半期、24年12月期第2四半期の決算発表から、主な新薬開発パイプラインの動きをピックアップ。随時更新(公開:7月26日、最終更新:8月9日)
INDEX
明治HD(25年3月期1Q、8月9日発表)
申請
▽【日本】コスタイベ|新型コロナウイルス感染症の予防(オミクロン株JN.1)
新型コロナ向けのレプリコンワクチン。今秋開始の定期接種に向け、オミクロン株JN.1に対応した1価ワクチンを5月に申請。
P3開始
【日本】KD-380|慢性炎症性脱髄性多発根神経炎患者および多巣性運動ニューロパチー患者の急性期治療・維持療法
KMバイオロジクスが開発する免疫グロブリン製剤。
エーザイ(25年3月期1Q、8月2日発表)
承認
▽【韓国】レケンビ(一般名・レカネマブ)|早期アルツハイマー病
米バイオジェンと共同開発する抗アミロイドβプロトフィブリル抗体。4月に韓国で承認。
▽【中国】フィコンパ(ペランパネル)|てんかんの強直間代発作(適応拡大)
自社創製のAMPA受容体拮抗薬。4月、中国でてんかんの強直間代発作に対する併用療法への適応拡大が承認。
申請
▽【米国】レケンビ|早期アルツハイマー病(用法用量追加・剤形追加)
米国で静注による維持投与の用法用量追加を申請し、6月に受理。5月には皮下注製剤による維持投与の段階的申請を開始した。
持田製薬(25年3月期1Q、8月2日発表)
申請
▽【日本】リアルダ(一般名・メサラジン)|潰瘍性大腸炎(小児適応)
旧シャイアー(現武田薬品工業)から導入したメサラジン製剤。7月に日本で小児適応を申請。
▽【中国】エパデール(イコサペント酸エチル)|高トリグリセリド血症
EPA製剤。中国では住友ファーマの現地子会社と共同開発。販売ではMeijiSeikaファルマと提携している。
JT(24年12月期2Q、8月2日発表)
承認
▽【日本】ブイタマー(一般名・タピナロフ)|アトピー性皮膚炎・尋常性乾癬
デルマバント・サイエンシズ(スイス)から導入した芳香族炭化水素受容体(AhR)調整薬のクリーム剤。子会社・鳥居薬品と共同開発し、6月に承認を取得。細胞質に存在するリガンド依存性転写因子AhRの活性化を介して炎症性サイトカインの産生を抑制するとともに、皮膚バリア機能関連分子や抗酸化分子の遺伝子発現を誘導する。小児のアトピー性皮膚炎の適応でもP3試験を進めている。
大塚HD(24年12月期2Q、8月1日発表)
承認
▽【中国】レキサルティ(一般名・ブレクスピプラゾール)|統合失調症
大塚製薬創製の抗精神病薬。中国で統合失調症の適応で承認取得。
申請
▽【米国】レキサルティ|心的外傷後ストレス障害(適応拡大)
米国でPTSDへの適応拡大を4月に申請。セルトラリンと併用する。審査終了目標日は来年2月8日に設定された。
開発中止
▽【米欧】AVP-786|アルツハイマー型認知症に伴うアジテーション(P3)
P3試験で主要評価項目を達成できず開発を中止。
アステラス製薬(25年3月期1Q、8月1日発表)
承認
▽【中国】イクスタンジ(一般名・エンザルタミド)|転移性去勢感受性前立腺がん(適応拡大)
6月に承認。中国では3つ目の適応症となる。
申請
▽【米国】ビロイ(ゾルベツキシマブ)|胃腺がん・食道胃接合部腺がん
抗Claudin18.2抗体。米国では今年1月、製造委託先の施設に未解決の指摘事項があるとして承認が見送られていたが、5月に再申請。審査終了目標日は11月9日に設定された。日本では今年3月に発売。欧州でも近く承認される見込み。
P3開始
▽【グローバル】ビロイ|胃腺がん・食道胃接合部腺がん
免疫チェックポイント阻害薬、化学療法との併用療法を評価するP3試験がスタート。
P1開始
▽ASP5502|原発性シェーグレン症候群
自社創製のSTING阻害薬。原発性シェーグレン症候群を対象にP1試験を開始。
武田薬品工業(25年3月期1Q、7月31日発表)
承認
▽【米国】エンタイビオ皮下注(一般名・ベドリズマブ)|クローン病(適応拡大)
抗α4β7インテグリン抗体の皮下注製剤。4月にクローン病の維持療法への適応拡大が承認。潰瘍性大腸炎の適応では23年9月に承認を取得している。
▽【欧州】FRUZAQLA(フルキンチニブ)|大腸がん
中国のハッチメッドから導入したVEGFR阻害薬。治療歴のある転移性大腸がんを対象に6月に欧州で承認を取得。米国では承認済みで、日本では昨年9月に申請した。
▽【日本】リブテンシティ(マリバビル)|サイトメガロウイルス感染症
pUL97キナーゼとその天然基質を標的として阻害する薬剤。「臓器移植(造血幹細胞移植も含む)における既存の抗サイトメガロウイルス療法に難治性のサイトメガロウイルス感染症」の適応で6月に日本で承認。
申請
▽【欧州】アドセトリス(ブレンツキシマブ ベドチン)|ホジキンリンパ腫におけるBrECADD レジメン(適応拡大)
抗CD30抗体薬物複合体(ADC)。4月、ホジキンリンパ腫のBrECADD レジメンをフロントラインを対象に申請。
▽【日本】TAK-625(マラリキシバット)|アラジール症候群・進行性家族性肝内胆汁うっ滞症
米ミラム・ファーマシューティカルズから日本での開発・販売権を取得した回腸胆汁酸トランスポーター阻害薬。6月に日本で申請。
P3開始
▽【グローバル】TAK-861|ナルコレプシータイプ1
自社創製のオレキシン2受容体アゴニスト。P2b試験の良好な結果に基づき、グローバルP3試験を開始。
P1開始
▽TAK-360|ナルコレプシータイプ2・特発性過眠症
自社創製のオレキシン2受容体アゴニスト。
▽【日本】TAK-853|卵巣がん
葉酸受容体αを標的とするADC。武田は、米アッヴィが今年買収した同イミュノジェンから日本の権利を取得した。プラチナ製剤抵抗性の卵巣がんを対象にP1試験を開始。米国では「Elahere」の製品名で22年に迅速承認され、今年3月に完全承認を取得した。
開発中止・パイプライン削除
▽【欧州】TAK-141|ハンター症候群(P3)
JCRファーマとのライセンス契約終了に伴いパイプラインから削除。JCRがP3試験を続ける。
▽【グローバル】TAK-935|レノックス・ガストー症候群(P3)
臨床試験で主要評価項目を満たさなかった。
▽アイクルシグ(ポナチニブ)|小児のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(P1)
用量制限毒性により臨床試験を終了。
第一三共(25年3月期1Q、7月31日発表)
承認
▽【日本】エザルミア(一般名・バレメトスタット)|再発・難治性末梢性T細胞リンパ腫(適応拡大)
EZH1/2阻害薬。6月に適応拡大が日本で承認。同適応では先駆け審査指定制度の対象に指定されている。
▽【中国】タリージェ(ミロガバリン)|糖尿病性末梢神経障害性疼痛
α2δリガンド。中国で6月に承認
P3開始
▽【日米欧亜】DS-1062(ダトポタマブ デルクステカン)|非扁平上皮非小細胞肺がん1次治療・EGFR変異非小細胞肺がん1次治療
抗TROP2抗体薬物複合体(ADC)。▽PD-L1≥50%の非扁平上皮非小細胞肺がんの1次治療を対象としたrilvegostomig(英アストラゼネカの抗PD-1/TIGIT二重特異性抗体)との併用▽EGFR変異非小細胞肺がんの1次治療を対象としたタグリッソとの併用――でP3試験を開始。
小野薬品工業(25年3月期1Q、7月31日発表)
承認
▽【日本】「ビラフトビ」(一般名・エンコラフェニブ)/「メクトビ」(ビニメチニブ)|甲状腺がん・甲状腺未分化がん(適応拡大)
ビラフトビはBRAF阻害薬、メクトビはMEK阻害薬。5月、2剤併用療法が「がん化学療法後に増悪したBRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な甲状腺がん」「BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な甲状腺未分化がん」への適応拡大の承認を取得。
住友ファーマ(25年3月期1Q、7月31日発表)
P1/2開始
▽【日本】SMP-3124|固形がん
自社起源の抗がん剤。CHK1阻害薬をリポソームに封入した注射剤。米国に続いて日本でもP1/2試験を開始。
塩野義製薬(25年3月期1Q、7月29日発表)
承認
▽【日本】コブゴーズ|SARS-CoV-2による感染症の予防
新型コロナウイルス感染症向け組み換えタンパクワクチン。起源株に対する1価ワクチンが6月に承認。
P3開始
▽【中国】フェトロージャ(一般名・セフィデロコルトシル酸塩硫酸塩水和物)|グラム陰性菌感染症
自社創製のシデロフォアセファロスポリン系抗菌薬。中国でP3試験を開始。
▽【中国】スインプロイク(ナルデメジントシル酸塩)|オピオイド誘発性便秘症
自社創製の末梢性オピオイド受容体アンタゴニスト。中国でP3試験を開始。
P1開始
▽【米国】S-649228|グラム陰性菌感染症
フェトロージャとβ-ラクタマーゼ阻害薬xeruborbactamの配合剤。xeruborbactamは2023年の米キューペックス買収で獲得した。6月に米国でP1試験を開始。
中外製薬(24年12月期2Q、7月25日発表)
承認
▽【欧州、中国】アレセンサ(一般名・アレクチニブ塩酸塩)|非小細胞肺がんアジュバント(適応拡大)
自社創製のALK阻害薬。6月、ALK陽性の早期非小細胞肺がんに対する術後補助療法への適応拡大が欧州と中国で承認。
▽【米国】ピアスカイ(クロバリマブ)|発作性夜間ヘモグロビン尿症
自社創製のpH依存的結合性抗補体C5抗体。6月に米国で承認。欧州でも7月に承認勧告が出た。日本では今年5月に発売。
▽【日本】セルセプト(ミコフェノール酸 モフェチル)|全身性強皮症に伴う間質性肺疾患(適応拡大)
免疫抑制剤。公知申請に基づいて6月に承認を取得。
P3開始
▽【日本】RG6299|IgA腎症
スイス・ロシュから導入した補体B因子mRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチド。IgA腎症を対象とするP3試験を5月に開始。
P1・P1/2開始
▽【グローバル】GYM329|肥満症
自社創製の抗潜在型ミオスタチンスイーピング抗体。5月、肥満症を対象にグローバルでP1試験を開始。
▽【日本】RG6615|高血圧
米アルナイラム創製のRNAi治療薬。心血管リスクの高い高血圧を対象に同社とロシュが共同開発しており、中外はロシュから日本での商業化権を取得。6月からP1/2試験を実施。
開発中止
▽【グローバル】ピアスカイ(クロバリマブ)|ループス腎炎(P1)
ロシュがポートフォリオ見直しの一環で開発を中止したことを受け、パイプラインから削除。
▽【日本】RG6058(チラゴルマブ)|非小細胞肺がん(P3)
ロシュから導入した免疫チェックポイント阻害薬の抗TIGIT抗体。手術不能で局所進行・転移性の比扁平上皮非小細胞肺がんに対する1次治療を対象に、チラゴルマブ、テセントリク、化学療法の併用を評価したグローバルP3試験で主要評価項目を達成できなかった。非小細胞肺がんに対するアジュバント療法(テセントリク併用)での開発も中止。
▽【日本】テセントリク(アテゾリズマブ)|肝細胞がんアジュバント(P3)
ロシュから導入した抗PD-L1抗体。アバスチンとの併用で肝細胞がんに対するアジュバント療法のP3試験を行っていたが、同試験の結果を踏まえて開発を中止。
▽【日本】RG6396(プラルセチニブ水和物)|非小細胞肺がん(P3、P2)、固形がん(P2)
RET阻害薬。創製元の米ブループリント・セラピューティクスとロシュの提携終了に伴い開発を中止。
▽【日本】RG6433|固形がん(P1)
SHP2阻害薬。創製元の米リレー・セラピューティクスとロシュの提携終了に伴い開発を中止。