2024年に国内で発売が見込まれる主な新薬を、領域別に2回に分けて紹介します。1回目は「固形がん」「血液がん」「血液」「神経・筋」領域です。
- 1回目:領域)固形がん、血液がん、血液、神経・筋
- 2回目:領域)精神・中枢神経、循環器・代謝・腎、ワクチン、感染症、その他
INDEX
【固形がん】武田の大腸がん薬、アストラゼネカのAKT阻害薬など承認へ
固形がんの領域では、ファイザーのPARP阻害薬「ターゼナカプセル」(一般名・タラゾパリブトシル酸塩)が、乳がんと前立腺がんの適応で1月中に承認の見込み。前立腺がんの適応では、抗アンドロゲン薬「イクスタンジ」(エンザルタミド)と併用します。承認されれば国内3剤目のPARP阻害薬となり、4月にも発売される見通しです。
アステラス製薬が胃腺がん・食道胃接合部腺がんの適応で昨年6月に申請したゾルベツキシマブは、ファースト・イン・クラスの抗Claudin18.2抗体。グローバルでピーク時に1000億円以上の売り上げを見込む同社の重点品の1つです。Claudin18.2は、細胞間の分子の流れを制御する上皮・内皮のタイトジャンクションの主要な構成因子。胃がんや膵臓腺がんなど幅広いがん種で発現することが知られています。
アストラゼネカのcapivasertibは、局所進行・転移性乳がんの2次治療に対するフルベストラントとの併用療法が申請中。承認されれば国内初のAKT阻害薬となります。新規作用機序の薬剤としてこのほか、ヤンセンファーマの抗EGFR/MET二重特異性抗体アミバンタマブも年内の承認が見込まれます。
中国の海和製薬が初の製品を申請
武田薬品工業のフルキンチニブは、香港のハッチメッドから導入した転移性大腸がん治療薬。VEGFR1/2/3に対する高い選択性を持ち、最良支持療法への上乗せを評価した国際共同臨床第3相(P3)試験の結果をもとに昨年9月に申請されました。
中国のShanghai Haihe Biopharmaの日本法人・海和製薬は昨年9月、非小細胞肺がんを対象にgumarontinibを申請。Shanghai Haiheが創製したMET阻害薬で、中国ではすでに承認されています。
【血液がん】骨髄繊維症にGSKのモメロチニブが承認見込み
血液がんでは4つの新薬が申請中です。日本イーライリリーのpirtobrutinibは、再発・難治性マントル細胞リンパ腫が対象。19年の米ロキソ・オンコロジー買収で獲得した非共有結合型(可逆性)BTK阻害薬で、共有結合型BTK阻害薬による治療歴のある患者への使用が期待されています。
日本新薬は、急性骨髄性白血病の標準治療薬であるダウノルビシン塩酸塩とシタラビンの配合リポソーム製剤を昨年6月に申請。2剤を抗腫瘍効果が最も高くなる比率で配合しており、臨床試験では2剤併用療法に対する優位性が確認されました。
ファイザーが昨年6月に申請した抗BCMA/CD3二重特異性抗体エルラナタマブは、再発・難治性多発性骨髄腫の治療薬。T細胞を介して強力な抗骨髄腫活性を誘導するよう設計されています。
グラクソ・スミスクラインは骨髄線維腫治療薬モメロチニブを昨年9月に申請。JAK1/2とともにアクチビンA受容体1型(ACVR1)を阻害することで、骨髄繊維症で貧血の原因となるヘプシジンを減少させます。血液がんに伴う貧血では、ブリストル・マイヤーズスクイブのTGF-β阻害薬「レブロジル皮下注用」(ルスパテルセプト)も今月中の承認が見込まれます。
【血液】PNHに中外のリサイクリング抗体、ノバルティスは経口補体副経路阻害薬
血液疾患の領域では、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)に3つの新薬が登場します。
アレクシオンファーマの「ボイデヤ錠」(ダニコパン)は、補体B因子の開裂を触媒する補体D因子セリンプロテアーゼ活性を阻害し、補体第二経路の活性化とC3フラグメントの沈着を抑制する薬剤。「ソリリス」(エクリズマブ)や「ユルトミリス」(ラブリズマブ)といった従来の補体(C5)阻害薬による治療では、一部の患者でC3を介した血管外溶血がみられることが課題の1つとなっていますが、ボイデヤを併用することで溶血を抑えることが可能となります。
中外製薬が昨年6月に申請したクロバリマブは、独自のリサイクリング抗体技術を適用した抗補体C5抗体です。抗体が繰り返し抗原に結合するようデザインされており、4週ごとの皮下投与を実現。既存のC5阻害薬とは異なる部位でC5に結合するため、従来製剤で効果がみられない患者に対する治療選択肢として期待されています。
ノバルティスファーマのイプタコパン塩酸塩水和物は、経口補体副経路B因子阻害薬。C5終末経路の上流で作用し、血管内外の溶血を抑制します。抗C5抗体療法で貧血症状が残る患者を対象とした臨床試験で効果が確認されており、承認されれば経口薬として単剤で治療できる初めての薬剤となる見通しです。
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血液領域ではこのほか、武田薬品が▽重症先天性プロテインC欠乏症に対する乾燥濃縮人プロテインC製剤▽後天性血友病Aに対するブタ第VIII因子製剤スソクトコグ アルファ▽先天性血栓性血小板減少性紫斑病に対するADAMTS13酵素補充療法apadamtase alfa/cinaxadamtase alfa―の3つの新薬を申請中。他領域も含め、武田薬品は今年、新薬ラッシュとなりそうです。
【神経・筋】重症筋無力症に2つの皮下注製剤
神経・筋疾患の領域では、重症筋無力症に2つの皮下注製剤が発売される見込み。ユーシービージャパンの「ジルビスク皮下注」(ジルコプランナトリウム)は昨年9月に承認を取得しており、今年、発売が期待されます。
アルジェニクスジャパンの「ヒフデュラ配合皮下注」は、抗FcRn抗体フラグメントのエフガルチギモド アルファ(国内製品名・ウィフガート)とボルヒアルロニダーゼ アルファの配合皮下注製剤。1月中に承認され、4月にも薬価収載される見通しです。
このほか、ダイドーファーマが昨年末、ランバート・イートン筋無力症候群治療薬アミファンプリジンリン酸塩を申請。21年に米カタリスト・ファーマシューティカルズから導入したカリウムイオンチャネル阻害薬で、承認されればダイドーファーマにとって初めての製品となります。