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【展望2024】薬価・薬事 制度見直し目白押し…アルツハイマー病、ドナネマブ登場で市場形成本格化

更新日

前田雄樹

2024年の製薬業界は、「ドラッグ・ラグ/ロス」「供給不安」の2大課題解消に向けた制度見直しが目白押しです。4月の薬価制度改革で製薬企業のビジネス環境は一定の改善が期待できそうですが、10月には長期収載品の患者負担増が行われ、収益を頼る企業にとっては打撃に。市場に目を向けると、アルツハイマー病治療薬「レケンビ」に早くも競合のドナネマブが登場し、市場形成が本格化します。

 

 

潮目変わった薬価制度、中間年改定はどうなる?

2024年度の薬価制度改革は、

▽革新的新薬の日本への早期導入を支援する「迅速導入加算」の新設
▽新薬創出加算の企業指標に基づく加算額調整の廃止
▽有用性系加算の評価項目の拡充
▽小児用医薬品に対する評価の拡充
▽市場拡大再算定の類似品への適用(いわゆる「共連れルール」)を一部領域で除外
▽後発医薬品メーカーの安定供給体制を評価する「企業指標」と、その結果を薬価に反映する仕組みの導入
▽企業が希望する約2000品目への不採算品再算定の特例的適用

――などが柱。近年の制度改革では最もプラス評価が目立つ内容で、政府はこうした薬価上の措置を通じて日本企業の創薬力強化とドラッグ・ラグ/ロスの解消、後発品を中心とする医薬品の安定供給確保につなげたい考えです。

 

「2024年度薬価制度改革の骨子」をもとに作成

 

今回の薬価制度改革では業界の要望が多く反映され、ビジネス環境は一定の改善が期待できそうです。一方、10月には、長期収載品を選定療養に位置付けた上で最も高い後発品との差額の25%を患者の自己負担とする仕組みが導入される予定で、長期収載品に収益を頼る企業では打撃を受けるところが出てくるかもしれません。

 

4月の薬価改定では医療費ベースで0.97%の薬価引き下げが行われます。昨年9月取引分を対象に行われた薬価調査で平均乖離率が6.0%と過去30年間で最小となったことに加え、イノベーション評価や不採算品再算定の特例的適用によって改定率は2年前のマイナス1.35%から大きく縮小しました。

 

薬価制度をめぐる潮目は変わったように思われますが、来年度には中間年改定が控えており、年末にかけて改定範囲などが議論される見通し。財務省は今回も全品目を対象にすべての改定ルールを適用する「完全実施」を求めてくるとみられ、製薬業界としては正念場となります。

 

「薬事規制」「産業構造」検討会議論に注目

厚生労働省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の報告書を受けて昨年発足した2つの検討会では、薬事規制の見直しや後発品の産業構造転換に向けた議論が続きます。

 

薬事規制について議論している検討会ではすでに、海外で開発が先行する新薬の日本人P1(臨床第1相)試験実施に関する考え方や、製造方法変更に関する薬事手続きの見直しについて方針が決定。厚労省は昨年12月25日、国際共同治験開始前の日本人P1試験は原則不要とすることを明確化する通知を出しており、今年はこれを踏まえて企業側の動きにも変化が出てくるかもしれません。製造方法変更に関する薬事手続きでは「中等度変更事項」(中等度の変更に対応した新たな手続きカテゴリ)と「年次報告」(重要度の低い変更では年1回の報告とする仕組み)の導入が決まっており、実装へと動いていくことになります。

 

薬事規制検討会では、超希少疾患を想定した検証的試験での日本人データの必要性に関する議論や条件付き早期承認制度をはじめとする迅速な承認制度に関する議論が行われており、近く何らかの方向性がまとまる見通し。さらに、▽治験の効率化▽製造販売後の使用成績調査のあり方▽リアルワールドデータの活用のあり方――などが今後、議題に上る予定で、こうした点についても見直しの方向性が打ち出されていくことになります。

 

後発品業界の産業構造を議論している検討会では、複数のメーカーがコンソーシアムを形成して安定供給を図っていくことが議論されており、最終的な報告書で業界再編につながる施策をどう打ち出すかが注目。先発医薬品メーカーの特許切れ対策として定着したオーソライズド・ジェネリック(AG)の是非についても検討されており、何らかの規制が設けられることになるのか気になるところです。

 

レケンビに競合登場、武田の大腸がん薬など承認へ

市場に目を転じてみると、昨年末に発売されたエーザイの「レケンビ」に競合品が登場し、アルツハイマー病治療薬の市場形成が本格化。日本イーライリリーは昨年、抗アミロイドβ抗体ドナネマブを申請しており、順調にいけば年内に承認され薬価収載となる見込みです。レケンビはピーク時に年間3.2万人への投与を予測していますが、2剤目の登場によって新たな治療法がどのように普及していくことになるのか、注目されます。

 

がん領域では今年も多くの新薬の承認が予想されます。武田薬品工業は香港のハッチメッドから導入したVEGF阻害薬フルキンチニブ(対象は大腸がん)の承認が見込まれ、アストラゼネカは国内初のAKT阻害薬カピバセルチブ(乳がん)が承認の見通し。アステラス製薬は抗Claudin18.2抗体ゾルベツキシマブ(胃がん)が承認予定です。

 

ヤンセンファーマとエーザイは国内3剤目、4剤目となるFGFR阻害薬が承認の見込み。中国Haihe Biopharmaの日本法人・海和製薬はMET阻害薬gumarontinibを申請中で、今年承認を取得して日本市場に参入することになりそうです。

 

【2024年に承認が見込まれる主な新薬】〈一般名/社名/対象疾患/作用機序〉 ドナネマブ/イーライリリー/アルツハイマー病/抗アミロイドβ抗体/ダリドレキサント/イドルシア/不眠症/"オレキシン受容体拮抗薬"/クロバリマブ/中外製薬/"発作性夜間/ヘモグロビン尿症"/"抗体補体C5リサイクリング抗体"/イプタコパン/ノバルティス/"発作性夜間/ヘモグロビン尿症"/B因子阻害薬/ニルセビマブ/アストラゼネカ/RSウイルス感染症/抗RSウイルス抗体/フルキンチニブ/武田薬品工業/大腸がん/VEGFR阻害薬/ゾルベツキシマブ/アステラス製薬/胃がん/抗Claudin18.2抗体 カピバセルチブ/アストラゼネカ/乳がん/AKT阻害薬/gumarontinib/海和製薬/非小細胞肺がん/MET阻害薬/タスルグラチニブ/エーザイ/胆道がん/FGFR阻害薬 エルダフィチニブ/ヤンセン/尿路上皮がん/FGFR阻害薬

 

世界的に注目度が高い肥満症治療薬では、昨年承認されたノボノルディスクの「ウゴービ」が2月に発売予定。発売2年目を迎える2型糖尿病治療薬「マンジャロ」を含め、GLP-1受容体作動薬市場は今年も活況を呈しそうです。

 

製品の市場展開という点で見ると、4月に施行される「医師の働き方改革」が情報提供活動に与える影響も気になります。面会や説明会に割く時間が減ったり、接触できる時間帯が変わったりすることが予想され、デジタルの活用も含めて各社が対応を迫られることになりそうです。

 

エーザイとアステラス 大型化期待の新製品、2年目の動向は

各社が大型化を期待する新製品の販売動向にも注目です。

 

エーザイはレケンビについて23年度中に米国で投与患者数1万人、売上高100億円を目指しており、昨年秋の第2四半期決算発表では順調な進捗を強調していました。欧州や中国でも今年度中の承認が見込まれ、「30年度に売上高1兆円」とする販売予測に向けて2年度目となる24年度にどれくらいの売り上げ計画を出してくるのか、5月の決算発表が注目されます。

 

アステラスが昨年5月に米国で承認を取得した更年期障害治療薬「べオーザ」は、第2四半期の時点で13億円の販売にとどまり、23年度の通期予想533億円には届かなそう。需要が想定を下回っており、同社は第3四半期の状況を見た上で2月の決算発表で予想を修正する予定です。ピーク時売上高3000~5000億円への自信は崩しておらず、こちらも2年目に入る24年度の動向が気になるところです。

 

第一三共は「エンハーツ」に続く抗体薬物複合体(ADC)パトリツマブ デルクステカンを昨年米国で申請。適応はEGFR変異のある局所進行・転移性非小細胞肺がんの3次治療で、米FDA(食品医薬品局)は審査終了目標日を6月26日に設定しました。承認されれば、ADCをドライバーとする業績拡大に一段と拍車がかかりそうです。

 

一方、長期収載品の自己負担増は主に中堅企業の経営に影響を与える可能性があります。昨年はヤクルト本社が取り扱い製品の半分以上を手放す方針を発表し、大正製薬ホールディングスはMBO(経営陣による買収)による非公開化へと動きました。新薬を出せない企業にとっては厳しい状況になっており、大きな決断をする企業が出てくるかもしれません。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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