早いもので今年も1年を振り返る時期となりました。今年は12月に入っても暖かい日が続いていましたが、ようやく冬らしい気候になり、急に年末がやってきたような感覚を覚えています。皆さんにとって2023年はどんな年だったでしょうか。
今年書いたコラムのタイトルを並べてみると、(個人的にも業界的にも)いろんなことがあったなあと遠い目になってしまいます。その時々の話題について感じたことを思うままに書いてきた私のコラムに1年間お付き合いいただき、ありがとうございました。
1月:今年発売が予想される新薬から2023年の製薬業界を展望する
2月:武田薬品が中国企業の新薬に4億ドル払ったことにドキッとした話
3月:2021年は「終わりの始まり」だったのかもしれない
4月:称え合い、励まし合い、手を取り合おう
5月:「低分子の底力」について講演したあと、参加者と話して感じたこと
6月:黒坂の新しい仕事の話
7月:「アドボカシー」とは何か
8月:第一三共・中山譲治さんの「私の履歴書」があらためて思い出させてくれたこと
9月:研究費の「選択と集中」はやっぱり間違いだった
10月:カタリン・カリコ博士のノーベル賞受賞を美談で終わらせてはいけない
11月:薬都・富山「くすりコンソ」で感じた熱
振り返ってみると、今年の個人的なハイライトはやはり転職だったなと思います。今年6月にアステラス製薬に転職し、ヘルスケアポリシー部という部署でアドボカシー活動に携わるようになりました。転職から半年経って思うのは「製薬企業ってやっぱりすごいな」ということです。
私はアステラスに入るまで、2004年にPh.D.取得→ポスドク(米国立がん研究所と産業技術総合研究所)→国内製薬企業で研究(日本製薬)→製薬企業向け外資系データベース企業でデータコンサルタント(Clarivate AnalyticsとEvaluate)というキャリアをたどってきました。その過程に一貫した戦略はなく、「何やら面白そう」という至って軽い動機で進む道を選んできたように思います。
転職の経緯や新しい仕事については6月と7月のコラムに書いていますが、今回の選択も今の所属部署が「何やら面白そう」かつ「良いことをしている」という点が決め手になりました。ジェネラリストともスペシャリストとも言えない私としては、すごく幸運な機会に巡り会えたと感じています。
先ほど「製薬企業ってやっぱりすごいな」と書いた真意は、製薬企業には優秀な人がたくさんいて、いろんな分野の人材が豊富にそろっているという点にあります。そういう環境に身を置くと「自分なんて」という卑屈な気持ちになることもありますが、そうした人たちと一緒に仕事ができるのはすごく贅沢なことで、それだけでも転職したかいがあったと思っています。
これは我が社に限った話ではありません。仕事の性質上、同業他社を含めて社外のいろいろな方ともお会いする機会がありますが、この業界は本当に優秀な人材が豊富です。だからこそ、私たちには社会的意義のある仕事をする役割が与えられると思いますし、社会からの要請に応えていかないといけないと感じています。
昨今クローズアップされているドラッグ・ラグ/ロスをはじめ、医薬品業界にはさまざまな課題があります。私たちアドボカシーに携わる人間の仕事は、製薬企業が自らの役割を全うし。そうした課題を解決していくための環境を整えていくことです。そのためには社内/社外、業界内/業界外を問わず仲間を増やしていくことが必要で、そうした活動を来年もやっていけたらと思っています。
直接お話できた方、コラムを読んで支えてくれた方、今年1年お世話になりました。来年もたくさんの方とお話したいので、私と話をしてみても良いかなと感じたらX(旧Twitter)からでもお気軽にご連絡をいただけると嬉しいです。
来年もたくさんの良いニュースが聞けることを願って年を越したいと思います。少し早いですが、皆さん、良いお年を。
※コラムの内容は個人の見解であり、所属企業を代表するものではありません。
黒坂宗久(くろさか・むねひさ)Ph.D.。アステラス製薬ヘルスケアポリシー部所属。免疫学の分野で博士号を取得後、約10年間研究に従事(米国立がん研究所、産業技術総合研究所、国内製薬企業)した後、Clarivate AnalyticsとEvaluateで約10年間、主に製薬企業に対して戦略策定や事業性評価に必要なビジネス分析(マーケット情報、売上予測、NPV、成功確率、開発コストなど)を提供。2023年6月から現職でアドボカシー活動に携わる。SNSなどでも積極的に発信を行っている。 X(Twitter):@munehisa_k note:https://note.com/kurosakalibrary |