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称え合い、励まし合い、手を取り合おう|コラム:現場的にどうでしょう

更新日

黒坂宗久

私が「中の人」をやっている弊社Evaruate Japanのツイッターのフォロワーが先日、3000人を超えました。3年3カ月間、つぶやきを担当してきた私にとって非常に嬉しい瞬間でした。Evaluateの存在を少しは知ってもらえるようになったなと思えるようになりましたし、実際、いろんな方からそう言ってもらえるようになりました。

 

アカウント自体は私が入社する前の2015年1月から存在していたんですが、発信は途絶えていて、私が入社した19年12月に運用を再開しました。当時のフォロワーは190人で、3000人は1つの目標だったのです。

 

私が「中の人」としてやってきたことはたった2つ。1つは「意味のあることをする」で、もう1つは「継続する」です。私にとっては、「意味のあること」は製薬業界関連のニュースや情報を皆さんにお届けすることであり、「継続すること」は言うまでもなくそれを休まず続けることでした。正直、大変だと思うこともありましたが、この2つを守って3年あまり発信を続けてきた結果、意味のあることを継続して発信しているアカウントだと認識されるようになってきたのだと思っています。

 

さて、私は以前、このコラムで製薬業界あるいは製薬企業の情報発信について取り上げたことがあります。そこにも書きましたが、製薬産業が社会と対話することはすごく大事なことだと思っていますし、その重要性はどんどん増してきているように感じています。先のコラムでは日本製薬工業協会がツイッターアカウントを開設したことに触れていますが、ぜひ、意味のある発信を続けてほしいと思っています。

 

製薬企業は、膨大な研究開発費をつぎ込み、極めて大きなリスクをとって、患者のために薬を開発しています。最終治験に成功すれば飛び上がるほど嬉しいし、失敗すればたまらなく悔しい。それはその薬を開発している企業だけではありません。ライバルの成功に勇気をもらうこともあるでしょう。そうした姿を知ってもらえたら、製薬産業のことをもっと理解してもらえるのにな、と思うわけです。

 

ライバルの成功に「心強い」と言ったロシュ幹部

昨年、エーザイとバイオジェンのアルツハイマー病治療薬レカネマブがフェーズ3試験の成功を発表したとき、同じくアルツハイマー病治療薬を開発していたロシュの幹部が「心強い」と発言したとロイター通信が伝えました。記事によると、同社の医薬品部門責任者ビル・アンダーソン氏は、レカネマブの試験が成功したことで「われわれも自信が持てる」と語ったといいます。ロシュのアルツハイマー病治療薬ガンテネルマブはその後、残念ながらフェーズ3試験で有効性を示すことができませんでしたが、新薬開発に携わる1人の人間としての気持ちが伝わる記事でした。

 

ツイッターでは、製薬業界の方々が治験成功のニュースを取り上げて「おめでとうございます!」と祝福したり、逆に失敗のニュースに触れて関係者をねぎらったりしているのをよく見かけます。それを見て私は「いいな」と思うのです。

 

もし、レカネマブの治験成功に対してロシュが公式アカウントで「素晴らしい!おめでとう!ウチも勇気をもらいました」とツイートしていたらとても嬉しい気持ちになっていたでしょうし、バイオジェンが「やりました!そちらの成功も祈っています」なんてツイートしていたら一発でファンになっていたと思います。

 

新薬開発の当事者が率直な気持ちを吐露し、ライバル企業同士が称え合い、励まし合う。それを社会に見える形で発信する。難しいことかもしれませんが、先日、ある製薬企業の研究者の方と、そんな未来もあったら良いねという話で盛り上がりました。

 

しのぎを削るライバルであっても、目指すゴールは同じ。称え合い、励まし合い、時には実際に手を取り合いながら(それぞれアルツハイマー病治療薬を開発しているロシュとイーライリリーが血液検査を共同開発するというニュースには驚きました!)進んでいく姿を見せることができれば、製薬産業を応援してくれる人も増えるのではないでしょうか?それは、社会の理解や後押しという点で、新薬開発にとってすごく大切なことだと思っています。

 

※コラムの内容は個人の見解であり、所属企業を代表するものではありません。

 

黒坂宗久(くろさか・むねひさ)Ph.D.。Evaluate Japan/Consulting & Analytics/Senior Manager, APAC。免疫学の分野で博士号を取得後、米国国立がん研究所(NCI)や独立行政法人産業技術総合研究所、国内製薬企業で約10年間、研究に従事。現在はデータコンサルタントとして、主に製薬企業に対して戦略策定や事業性評価に必要なビジネス分析(マーケット情報、売上予測、NPV、成功確率や開発コストなど)を提供。Evaluate JapanのTwitterの「中の人」でもあり、個人でもSNSなどを通じて積極的に発信を行っている。
Twitter:@munehisa_k
note:https://note.com/kurosakalibrary

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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