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薬都・富山「くすりコンソ」で感じた熱|コラム:現場的にどうでしょう

更新日

黒坂宗久

先月、「くすりのシリコンバレーTOYAMA」創造コンソーシアム(通称・富山くすりコンソ)主催の「低分子創薬に未来はあるか?低分子VS.新モダリティ」と題するシンポジウムに登壇する機会をいただきました。

 

当日の様子は富山くすりコンソのYouTubeチャンネルでアーカイブ配信されているので、興味のある方はぜひ見ていただけたらと思いますが、東和薬品取締役の内川治さん、国際医薬品情報特別編集委員の原光信さん、そして黒坂という講師陣で私に与えられたテーマは「低分子医薬品の底力」。今年5月にCPHI Japan(国際医薬品開発展)で行った講演を下敷きにお話しし、内川さん、原さんとともに講演後のパネルディスカッションにもパネリストとして参加させていただきました。

 

パネリストは生まれて初めての経験でしたが、参加者とインタラクティブにやりとりできるのはやはりいいものですね。私はデータの分析をもとに「低分子はまだまだオワコンではない」という話をしたので(こちらのコラムでも同じようなことを書いています)、質問もデータに関することが多かったのですが、全体を通して見ると、参加者とのやりとりによって多岐にわたる話題について議論ができたのではないかと思います。

 

ケンカになるかもしれないけれど

そうした中で私が特に印象に残ったのが、フロアから発言した富山大の齋藤滋学長とパネルディスカッションのコーディネーターを務めた富山くすりコンソ副事業責任者・森俊介さん、そしてパネリストの内川さんのこんなやり取りです。

 

齋藤さん「富山くすりコンソと出会うまでは、商品やくすりになるかを考えていなかった。色々なサジェスチョンをもらって助かった。大学と企業を繋いでくれることのありがたさを知った」

 

森さん「サイエンスに忖度は必要ないという意気込みで一緒にやっている。ケンカになるかもしれないけれど、正しいことをしっかりと言ってきたから、今うまくいっていると思う」

 

齋藤さん「最初は、なんでそこまで言われなくてはいけないんだと思ったが、長く付き合ってきて(それが大切だと)気づいた。忖度なしで相談できる人は大切だ」

 

内川さん「産学連携の肝は、何を目指すのかというゴールを最初にしっかりと握って魂を入れて進める気概。なあなあで表面だけで終わらせるのはもったいない」

 

エコシステム構築に奮闘

このやり取りをそばで聞いていて、私はものすごく感動しました。「サイエンスってこうだよな」という気持ちを思い出したんです。まっすぐに意見を戦わせて、よりよいものにしていく。その姿勢、その熱量が何より重要だということをあらためて認識しました。

 

6年目を迎えた富山くすりコンソは今年で国からの補助が終了し、自走モードに入ろうとしています。ご存知の通り、富山は日本有数の医薬品製造の集積地であり、今風の言葉で言うと長きにわたってクラスターを形成してきた場所です。そんな土地で熱量あふれる関係者が忖度なくぶつかり、エコシステムを構築しようと奮闘している姿に勇気付けられました。

 

相次ぐ医薬品製造の不正に揺れた富山。薬都復権に向け、ひいては日本の医薬品産業の発展に向け、くすりコンソから成功事例が出てくることを期待しています。

 

※コラムの内容は個人の見解であり、所属企業を代表するものではありません。

 

黒坂宗久(くろさか・むねひさ)Ph.D.。アステラス製薬ヘルスケアポリシー部所属。免疫学の分野で博士号を取得後、約10年間研究に従事(米国立がん研究所、産業技術総合研究所、国内製薬企業)した後、 Clarivate AnalyticsとEvaluateで約10年間、主に製薬企業に対して戦略策定や事業性評価に必要なビジネス分析(マーケット情報、売上予測、NPV、成功確率、開発コストなど)を提供。2023年6月から現職でアドボカシー活動に携わる。SNSなどでも積極的に発信を行っている。
X(Twitter):@munehisa_k
note:https://note.com/kurosakalibrary

 

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