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ニュース解説

海外新薬承認情報(2023年9月分)

更新日

亀田真由

2023年9月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。

 

【新薬】ノボのRNAi、アミカスのポンペ病治療薬など

【2023年9月に米FDAが承認した主な新薬】(*=優先審査、★=ブレークスルーセラピー)<製品名(一般名)/社名/適応> Aphexda(motixafortide)/イスラエル・バイオライン/造血幹細胞の末梢血中への動員(+filgrastim)|Ojjaara(momelotinib dihydrochloride)/英GSK/貧血を伴う骨髄線維症(成人)|Exxua(gepirone)/米Fabre-Kramer/大うつ病(成人)|Ryzumvi(phentolamine)/米オキュファイア/アドレナリン作動薬や副交感神経溶解薬による散瞳|Entyvio(vedolizumab)/武田薬品工業/中等症から重症の成人の活動期潰瘍性大腸炎(皮下投与製剤)|Pombiliti(cipaglucosidase alfa)*★/米アミカス/遅発型ポンペ病(成人、+miglustat)|Rivfloza(nedosiran)/デンマーク・ノボ/ 原発性高シュウ酸尿症 1 型(9歳以上)|※米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成

 

「Aphexda」イスラエル・バイオライン

CXCR4アンタゴニスト「Aphexda」(一般名・motixafortide)は「多発性骨髄腫患者の自家末梢血幹細胞移植のための造血幹細胞の末梢血中への動員」の適応で承認。G-CSF製剤のfilgrastimと併用します。filgrastimへの上乗せを評価した臨床第3相(P3)試験では、プラセボに比べて多くの患者で幹細胞収集目標を達成しました。

 

「Ojjaara」英グラクソ・スミスクライン

「Ojjaara」(momelotinib)は、貧血を伴う骨髄線維症の経口治療薬。JAK1/2に加えてアクチビンA受容体1型(ACVR1)を阻害する作用機序を持っており、JAK1/2を阻害することで全身症状や脾腫(脾臓の肥大)を改善するほか、ACVR1の阻害によって貧血の要因となるヘプシジンを減少させると考えられています。日本や欧州でも申請済みです。

 

「Exxua」米Fabre-Kramer

「Exxua」(gepirone)は、大うつ病に対する初の選択的セロトニン1A(5-HT1A)受容体作動薬。添付文書には既存薬で問題となる性機能障害や体重増加の副作用に関する記載がなく、新たな治療選択肢になると期待されています。全般性不安障害や性的欲求低下障害の適応でも開発中です。

 

「Ryzumvi」米オキュファイア

「Ryzumvi」(phentolamine)は、アドレナリン作動薬(phenylephrineなど)や副交感神経溶解薬(tropicamideなど)によって引き起こされる散瞳に対する治療薬。こうした薬剤を使って眼科検査を受けた人は、光に対して過敏になったり、目がかすんだりすることが知られています。これらの症状は最長で24時間続くことがあり、読書や仕事、運転が困難になります。

 

「Entyvio」武田薬品工業

潰瘍性大腸炎治療薬「Entyvio」(vedolizumab)は、新たに皮下投与製剤(単回投与用プレフィルドペン製剤)が承認されました。中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎に対し、静注製剤による導入療法後の維持療法に使用されます。日本では今年3月に潰瘍性大腸炎、9月にクローン病の適応で承認。米国でもクローン病の適応で申請中です。

 

「Pombiliti」米アミカス

「Pombiliti」(cipaglucosidase alfa)は、成人の遅発型ポンペ病治療薬。酵素安定剤「Opfolda」(miglustat)との併用で、従来の酵素補充療法で改善が見られない成人患者に使用されます。Pombilitiは、マンノース-6-リン酸(M6P)を増加させることで細胞への酵素の取り込みを向上させた酸性α-グルコシダーゼ製剤。特に筋組織でグリコーゲンを減少させる作用を持っています。欧州でも今年3月に承認されており、日本でも臨床試験が進行中です。

 

「Rivfloza」デンマーク・ノボノルディスク

「Rivfloza」(nedosiran)は、原発性高シュウ酸尿症1型に対する月1回皮下投与のRNAi治療薬。2021年の米Dicerna Pharmaceuticals買収で獲得したもので、シュウ酸の過剰産生に関与する肝酵素の乳酸脱水素酵素(LDHA)の発現を阻害します。臨床試験では、尿中シュウ酸排泄量を低下させることが確認されました。日本を含めたグローバルでP3試験を実施中です。

 

【適応拡大】「Jardiance」に慢性腎臓病の適応

【2023年9月に米FDAが承認した主な適応拡大】(*=優先審査、★=ブレークスルーセラピー)<製品名(一般名)/社名/適応> Bavencio(avelumab)/独メルク/【完全承認】転移性メルケル細胞がん(12歳以上)|Temodar(temozolomide)/米メルク/新規診断の悪性脳腫瘍(アジュバント療法、成人)|Jardiance(empagliflozin)/独BI/慢性腎臓病(成人)|Bosulif(bosutinib monohydrate)/米ファイザー/ フィラデルフィア染色体陽性の慢性骨髄性白血病(慢性期、1歳以上の小児)|※米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成

 

「Bavencio」独メルク

抗PD-L1抗体「Bavencio」(avelumab)は、転移性メルケル細胞がんの適応で完全承認を取得しました。対象は12歳以上の小児と成人。同適応では2017年に迅速承認を取得していました。

 

「Jardiance」独BI

SGLT2阻害薬「Jardiance」(empagliflozin)は、成人の慢性腎臓病(CKD)に適応拡大。6609人の患者を対象に行った臨床試験では、主要評価項目であるCKDの進展と心血管死リスクの低減が確認されたほか、入院リスクを有意に減少しました。欧州では8月に承認されており、日本でも申請中です。

 

「Bosulif」米ファイザー

BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬「Bosulif」(bosutinib)は、「フィラデルフィア染色体陽性の慢性骨髄性白血病(慢性期)」に適応を広げました。新規診断を受けたか、前治療に抵抗性または不寛容の1歳以上の患者が対象。従来の錠剤に加え、カプセル製剤の承認も取得しています。

 

【バイオシミラー】バイオジェンのtocilizumab

【2023年9月に米FDAが承認したバイオシミラー】<製品名(一般名)/社名/適応/> Tofidence(tocilizumab)/米バイオジェン/関節リウマチ、関節型若年性特発性関節炎、全身型若年性特発性関節炎|※米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成

 

「Tofidence」米バイオジェン

「Tofidence」は、米ジェネンテックの抗IL-6受容体抗体「Actemra」(tocilizumab)のバイオシミラー。Actemraのバイオシミラーは米国初です。関節リウマチや若年性特発性関節炎に使用できます。同剤は中国のバイオ・セラが開発。バイオジェンは、21年に中国を除く全世界での権利を取得しました。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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