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ニュース解説

持田製薬 消化器領域を強化…相次ぐ新薬投入で成長加速、全社売上高の3割超へ

更新日

穴迫励二

持田製薬が消化器領域の強化に乗り出しています。潰瘍性大腸炎治療薬の「オンボー」と「コレチメント」を相次いで導入し、軽症から重症までをカバーする製品ラインアップを構築。慢性便秘症でも既存品が増収を続けており、中堅製薬企業としての経営基盤を固めていきます。

 

 

「リアルダ」牽引で2桁成長

持田の消化器領域の23年3月期売上高は267億円で、前年比14%増の2桁成長でした。同領域を牽引してきたのは指定難病の潰瘍性大腸炎を適応とする「リアルダ」です。同薬は「ペンタサ」(杏林製薬)や「アサコール」(ゼリア新薬工業)と同じ5-ASA(アミノサリチル酸)製剤。後発ながら16年11月の発売から着実にシェアを上げ、現在はトップに躍り出ています。1日1回の用法が他剤との差別化につながっており、治療薬のベースとして軽症から中等症以降までカバーしています。

 

同社の消化器領域は潰瘍性大腸炎治療薬が中心ですが、慢性便秘症でも存在感を発揮しています。「グーフィス」「モビコール」の2剤がともに堅調で、前者は高齢者中心、後者は小児や女性にも対象を広げるプロモーションですみ分けています。両剤はEAファーマとの共同販売品で、今年12月に後発医薬品の参入が見込まれる「アミティーザ」(ヴィアトリス製薬)を追いかけています。

 

【持田製薬/消化器領域の製品ラインアップ】<対象疾患/製品名/売上高(億円)/ /22年3月期/23年3月期/24年3月期><潰瘍性大腸炎>リアルダ/125/135/140|アダリムマブBS/1/9/ー|オンボー/ー|コレチメント/ー|<慢性>便秘症/グーフィス/60/69/90|モビコール/49/54/62|※アダリムマブBSは販売提携先のあゆみ製薬の薬価ベース売上高。24年3月期は予想、「―」は非開示|※持田製薬の決算発表資料などをもとに作成

 

導入の「オンボー」でプレゼンス拡大

今後の消化器領域のプレゼンス拡大に向けては、日本イーライリリーから導入し、6月に発売したオンボーに期待をかけます。オンボーは潰瘍性大腸炎治療薬として世界で初めての抗IL-23p19モノクローナル抗体で、炎症に関わるサイトカインを選択的に抑えます。特徴的なのは、QOLに影響を及ぼす症状の1つである「便意切迫感」を緩和させること。臨床試験では投与後2週間で改善が見られました。リリーが実施したインターネット調査によると、患者の95%が「突然の激しい便意」に襲われた経験があると回答しており、最大の訴求ポイントになると見ています。

 

ただ、同じ適応の抗体薬にはトップ製品の「ステラーラ」(ヤンセンファーマ/田辺三菱製薬)をはじめ「エンタイビオ」(武田薬品工業)、「レミケード」(田辺三菱)など、バイオシミラー(BS)を含めて競合品が多数存在。「ジセレカ」(ギリアド・サイエンシズ)や「リンヴォック」(アッヴィ)といった経口のJAK阻害薬も市場投入されており、競争の激しい領域となっています。

 

そうした中、持田はオンボーをリリーと共同販促せず、単独でレッドオーシャンに挑戦。すでに販売しているアダリムマブ(先行品・ヒュミラ)BSとあわせて2つの選択肢を提案します。オンボーの立ち上がりは「当初計画通りのイメージ」(宮嶋謙二・医薬営業本部長)といい、抗体薬やJAK阻害薬を処方する約500施設をメインターゲットに採用活動を続けています。

 

潰瘍性大腸炎、軽症から重症までカバー

コレチメントはフェリング・ファーマが承認を取得、8月30日の薬価収載を経て発売されます。有効成分は局所作用型ステロイドのブデソニド。潰瘍性大腸炎の適応を持つブデソニドとしては注腸の「レクタブル」(EAファーマ/キッセイ薬品工業)がすでに販売されていますが、コレチメントは内服薬。「体内に吸収されると速やかに代謝され一気に不活化するため、全身性の副作用が少ない」(宮嶋氏)のが特徴です。1日1回1錠で投与期間は8週間が目安。投与が簡便で医師のニーズも高いといいますが、投与期間が限られているため、販売拡大には継続的な新患獲得が必要です。

 

潰瘍性大腸炎は国の指定難病で完治が難しく、下痢や血便など症状が強く表れる活動期と、症状が治まる寛解期を繰り返します。患者数は増加傾向にありますが、特に重症における薬物治療はどのタイプの薬剤を処方するかについて「エビデンスに基づく明確なポジションは確立されていない」(宮嶋氏)のが現状です。

 

医師の処方経験に依存する市場といえますが、持田製薬は製薬企業で唯一、軽症、中等症、重症の各段階で複数の作用機序の薬剤を揃えていることを強調。軽症~中等症はリアルダやコレチメント、中等症から重症にはアダリムマブBSとオンボーで幅広い処方提案が可能だとしています。抗体薬中心の企業は重症患者を主体とするのに対し、持田製薬は患者の9割以上を占める軽症~中等症を含めて一貫してフォローできるのが強み。病診連携における情報提供などを通じて医師の治療をサポートするなど、約660人のMRがリアルとデジタルを駆使して戦略的な営業活動を展開します。

 

【持田製薬の潰瘍性大腸炎治療薬】<軽症/中等症>5-ASA製剤/リアルダ|局所作用型ステロイド製剤(経口)/コレチメント<中等症/重症>抗TNFα抗体/アダリムマブBS |抗IL-23p19抗体/オンボー

 

今期も2桁成長を予想

これらの製品によって、24年3月期の消化器領域売上高は非開示のアダリムマブBSを除く既存品3製品で前期比13%増を予想。これに新製品のオンボー、コレチメントも加わることになります。会社全体の売上高に占める割合は前期の26%からさらに拡大し、30%を超えることは間違いなさそうです。今後は22年9月で再審査期間が終了したリアルダに後発品参入が見込まれますが、オンボーはピーク時売上高予想291億円で主力製品となり、コレチメントも同15億円で支えます。

 

同社はこれまで、3カ年の中期経営計画を毎年策定するローリング方式を取ってきました。しかし、22年度からは長期ビジョンを具体化した「2031年のありたい姿」を策定した上で、そこからバックキャストして足元の計画を立案するスタイルに変更。22~24年度の中計では、新薬を中心とした重点領域における収益の最大化を目指しています。同社の重点は消化器と循環器、産婦人科、精神科の4領域ですが、消化器領域はその中心的存在になるとみられます。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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