2021年6月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】肥満治療薬「Wegovy」やアルツハイマー病治療薬「Aduhelm」など
「Brexafemme」米サイネクシス
抗真菌薬「Brexafemme」(一般名・ibrexafungerp)は、1日1回投与の経口カンジダ症治療薬。2つの臨床第3相(P3)試験の結果をもとに承認されました。米国では、提携先の米Amplityヘルスと、今年後半に販売を開始する予定です。
「Tembexa」米キメリックス
経口抗ウイルス薬「Tembexa」(brincidofovir)は、天然痘治療薬。錠剤と経口懸濁液があり、新生児を含む成人・小児の患者に使用できます。動物モデルの臨床試験で延命効果が確認され、承認に繋がりました。天然痘以外の疾患では、シンバイオ製薬が2019年にグローバルライセンスを獲得しており、造血幹細胞移植後を含む免疫不全患者のアデノウイルス感染症を対象に国際共同P2試験を進めています。
「Wegovy」デンマーク・ノボ
週1回皮下投与のGLP-1受容体作動薬「Wegovy」(semaglutide)は、肥満患者の体重管理の適応で承認されました。対象は、肥満(BMI30以上)または体重に関連する合併症を持つ過体重(BMI27以上)の成人で、食事・運動療法に対する補助療法として使用されます。semaglutideは日米欧など各国で糖尿病治療薬として承認されていますが、肥満治療薬として承認されるのは米国が初めて。欧州でも申請中で、日本でもP3試験が行われています。
「Ryplazim」英リミナル
「Ryplazim」(plasminogen,human-tvmh)は、1 型プラスミノゲン欠乏症治療薬。1型プラスミノゲン欠乏症はまれな遺伝性疾患で、細胞や臓器の正常な機能を損ない、失明につながる可能性があるとされます。同疾患に対する治療薬は米国初です。
「Aduhelm」米バイオジェン
バイオジェンがエーザイと共同開発した抗アミロイドβ抗体「Aduhelm」(aducanumab)は、アルツハイマー病(AD)に対する世界初の疾患修飾薬として迅速承認されました。臨床試験では、早期AD患者の脳内のアミロイドβプラークを減少させる効果が示されており、FDAは臨床的有用性を確認する検証試験の実施を求めています。日本と欧州でも申請中です。
「Epclusa」米ギリアド/「Mavyret」米アッヴィ
C型肝炎治療薬「Epclusa」(sofosbuvir/velpatasvir)と同「Mavyret」(glecaprevir/pibrentasvir)はそれぞれ、3歳以上の小児に使用できるペレット剤が承認されました。錠剤を飲み込めない患者も服用できます。米国ではEpclusaが2016年、Mavyretが17年に承認。日本では、Mavyretが小児への適応拡大を申請中です。
「Soaanz」米Sarfez
「Soaanz」は、ループ利尿薬torsemideの新規経口剤。心不全や腎臓病に関連する浮腫の治療に使用されます。従来製剤より持続時間を延長させており、過度の排尿を懸念してループ利尿薬を使用していない患者への治療選択肢として期待されています。
「Rezipres」米イートン
「Rezipres」(ephedrine hydrochloride)は、麻酔導入後の低血圧治療薬。発症時にすぐに使用でき、同社は病院が未承認の配合薬を使用するのを回避できるとしています。欧州でも承認済みです。
「Pradaxa」独ベーリンガーインゲルハイム
抗凝固薬「Pradaxa」(dabigatran)は、新たにペレット剤が承認され、生後3カ月~12歳の小児に使用できるようになりました。適応は、静脈血栓塞栓症の治療と血栓の再発予防。それぞれ200人以上の小児患者を対象とした臨床試験で効果が確認されました。小児が服用できる経口抗凝固薬は米国で初めてです。
「Verkazia」参天製薬
春季カタル治療薬「Verkazia」は、cyclosporineの乳化点眼液です。春季カタルは、小児から若年成人に多い再発性の重症アレルギー性眼疾患。角結膜など眼表面に重度の炎症を起こし、重症化すると角膜潰瘍や視力障害を引き起こします。参天は、昨年買収した米アイバンスの事業基盤を活用し、同薬を展開する予定です。
「Rylaze」アイルランド・ジャズ
「Rylaze」(asparaginase erwinia chrysanthemi)は、急性リンパ性白血病またはリンパ芽球性リンパ腫治療薬。大腸菌由来のアスパラギナーゼ治療に対する過敏症を発症している患者に、多剤化学療法レジメンの1つとして使用することで、アスパラギナーゼ活性を維持します。同剤は筋肉内注射で、ジャズは静脈内投与など投与法の追加を目指しています。
【適応拡大】「Ayvakit」の全身性肥満細胞症、「Noxafil」のアスペルギルス症など
「Ultomiris」米アレクシオン
発作性夜間ヘモグロビン尿症治療薬「Ultomiris」(ravulizumab)は、生後1カ月以上の小児と青年に使用できるようになりました。同薬は抗C5(補体)抗体で、米国では成人を対象に18年に承認。欧州でも小児への適応拡大を申請中です。
「Trikafta」米バーテックス
嚢胞性線維症治療薬「Trikafta」(elexacaftor/ivacaftor/tezacaftor)は、6歳から11歳の小児に適応拡大しました。対象は、CFTR遺伝子に少なくとも1つのF508del変異があるか、Trikaftaの適応となる変異のある患者。欧州と英国でも小児への適応拡大を申請中で、スイスやオーストラリア、イスラエルでも今年申請を行う予定です。
「Ayvakit」米ブループリント
キナーゼ阻害薬「Ayvakit」(avapritinib)は、進行全身性肥満細胞症(SM)に適応拡大。侵襲性SMや血液腫瘍を伴うSM、肥満細胞性白血病などを含みます。SMはc-kit D816V変異によって起こるまれな血液疾患。同薬はkit D816Vを選択的に阻害する米国初の治療薬です。PDGFRA Exon 18変異を有する消化管間質腫瘍の治療薬としては、米国と欧州、中国で承認されています。
「Toviaz」米ファイザー
過活動膀胱治療薬「Toviaz」(fesoterodine fumarate)は、6歳以上の小児の神経因性排尿筋過活動に適応拡大しました。体重25kg以上の患者が対象です。日本でも同適応でP3試験が行われています。
「Noxafil」米メルク
抗真菌薬「Noxafil」(posaconazole)は、侵襲性アスペルギルス症に適応拡大。13歳以上の患者に対し、静注剤と徐放錠が使用できます。日本と欧州でもアスペルギルス症の適応で申請中です。
「Solosec」インド・ルピン
抗菌薬「Solosec」(secnidazole)は、トリコモナス膣炎によるトリコモナス症の治療に使用できるようになりました。患者とそのパートナーの両方に使用できます。P3試験での治癒率は92.2%でした。同薬は女性の細菌性腟炎治療薬として17年に承認されており、単回投与で治療が完了します。